良い決算書・悪い決算書
- その他
「良い決算書」「悪い決算書」とはどのような決算書なのでしょうか。
漠然と利益率や総資産、純資産割合など見るべきポイントがありますが、その数字が何を表していて、企業に何をもたらすのか解説していきます。
以前のトピックスにも経営分析についての記事『経営状況を分析する ~経営分析指標~』がありますので、ぜひ合わせてご覧ください。
数字の明確性
決算書は、会社の財政状況や経営活動の指標として大変重要です。そのため、決算書類の数字は真実でなければなりません。
もちろん、架空の売上や経費を計上して意図的に数字を変えたりすることは、粉飾や脱税など違法行為に当たります。
良い決算書の数字の明確性
良い決算書は、決算書の項目が明確に区分されています。
決算書に構成要素が記載されていなければ、企業の経営活動の要因を確認することができません。
例えば、売上原価項目で商品仕入のほか外注費が発生する企業が、決算書上分けて表示することにより、どのぐらい依存しているかがわかります。販売費および一般管理費も同様に、人件費のうちどのくらい従業員の給料に係るものか、それとも派遣社員に係るものかが明確にわかります。
企業がどこにお金を使い、どれだけ効率よく稼げているのかをみるための資料なので、決算書の構成要素は明確に区分し、数字を比較していくことが重要です。
貸借対照表から見る会社の安全性
貸借対照表とは、「資産」「負債」「純資産」の3つの要素から構成されます。
会社の資産の元手が負債なのかそれとも純資産なのかを表す書類で、人体で例えるなら肉体や骨格部分になり、会社の体力を示します。
良い決算書の貸借対照表とは、自社を経営分析の上、日本政策金融公庫などで公表される業種ごとの平均指標(一例として、業種別経営指標 参照)と比較し、平均値以上の数値であることがあげられます。
というのも、製造業では機械などの固定資産が多くなる一方、不動産業では建物土地が棚卸資産と表記されるため、流動資産が多くなります。
そのため、統計に沿った指標の平均値を意識して経営活動を行うことで安全性が保たれます。
また、企業は投資を重ねて大きくしていくものですので、借りたお金(負債)は正当な投資先に投資できているのか、負債の返済原資が保たれているのか、注意していく必要があります。
そして、資金力がある会社は倒産しにくい安定した会社となります。
指標としては自己資本比率「自己資本÷総資本」であらわされます。この指標は特に重要視されます。
貸借対照表の安全性
貸借対照表の安全性を知るには、下記項目をチェックしましょう。
自己資本比率
[計算式]自己資本÷総資本×100
…企業の安全性を示す指標です。40%以上で優良水準といわれています。
流動比率
[計算式]流動資産÷流動負債×100
…短期的な支払い能力(資金力)を表します。150%以上で優良水準といわれています。
固定長期適合率
[計算式]固定資産÷(固定負債+自己資本)×100
…長期的な支払い能力を示します。100%以下で設備投資の範囲が健全であるといわれています。
損益計算書から見る会社の収益性
損益計算書とは、「収益」から「費用」を差し引いて単年度の利益の金額を確認する書類です。
経営活動を行う上での企業の活動量を測ることができ、どのような活動のうえで効率よく稼げているのかを確認できます。
単純に前年より売上高は上がったが、粗利率が減少したといったことは、よくあります。
上記の場合、売上単価に問題が出てきているのか、それとも無駄遣いをしているのかを分析する必要があります。
ただ、売上が減少すれば減少するほど粗利率が上がる会社は、率を求めて売上高を減少させるのが良いのかというと、一概にはいえません。給料が支払えなくなってしまうかもしれませんし、借金など返済が滞る結果となるかもしれません。
損益計算書から見る良い決算書とは
以下の部分が、他社と比較して安定していることが必要かと思います。
粗利率
[計算式]売上総利益÷売上高×100
営業利益率
[計算式]営業利益÷売上高×100
経常利益率
[計算式]経常利益÷売上高×100
1人当たりの粗利益
[計算式]売上総利益÷従業員数
1人当たりの人件費
[計算式]人件費÷従業員数
特に1人当たりの粗利益と人件費を比較し、一人一人の生産性を確認することで、経営活動に問題がないかを分析することができます。
そして、過去期間を比較し企業の成長性とその期にあった事由を確認し、効率よく稼げているのかも分析する必要があります。
おわりに
自社の決算書は経営状態を正しくあらわし、経営が安定している「良い決算書」でしたか?それとも改善が必要な「悪い決算書」でしょうか。
単純に利益が出ているから問題ないと思っていても、思わぬ傾きで貸借のバランスが悪くなった場合、倒産の危機に直面してしまいます。
あくまで指標ではありますが、他社と比較して自社の状況を再確認し、将来の事業計画を策定してみてはいかがでしょうか。
<参考サイト>
【日本政策金融公庫】業種別経営指標
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