地方事務所の相談事例 ~中小企業のホールディングス化
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中小企業の資本政策に携わっていると、必ず通るホールディングス化。
先日、新規のご提案先で「でも10年以上前の方法でしょ?」という言葉もいただきましたが、今だからこそ導入いただきたい会社も多くあります。
今回は、中小企業のホールディングス化について失敗事例も交えながらご紹介します。
地方事務所に多い、法人からのご相談とは
筆者が福島県の郡山事務所へ着任してまもなく丸5年になります。金融機関様のご紹介や、当法人のWebサイトからの問い合わせにより、当事務所だけでも年間100件近くのご相談を受けています。
会社の成長ステージや事業承継などの問題から、自社株の持ち方や譲り方をどのようにすればいいかといったご相談です。
自社株は換金性が乏しい一方で、税務上の評価額が高い傾向にあり、なにも対策をしないまま相続を迎えると相続税が高額になってしまいます。それは引き継いだ後継者のご負担になり、会社経営においても重く負担を強いることになるので、非常に大きな問題となります。
このようなご相談は創業から長い歴史のある会社オーナーより受けることが多く、オーナーが保有している株式の問題だけでなく、少数株主の問題なども抱えています。
いつか片づけなければと検討しているまま時間が過ぎてしまったというオーナーも多いのですが、自社株の移転に想定以上の時間や手間がかかったり、資金調達が必要なケースも少なくありませんので、思い立ったときに具体的な対策を始めることをお勧めしています。
中小企業へのホールディングス化ご提案
このような自社株問題の解決策として、ホールディングス(持株会社)化が挙げられます。その手法はさまざまありますが、メリット・デメリットについて代表例をご紹介します。
ホールディングス化のメリット
1.間接保有による株価抑制効果
ホールディングス化は、従来事業会社のオーナーが保有していた株式を親会社となるホールディングスが保有し、オーナーは事業会社の株式についてホールディングスを通して間接保有することとなります。
成長企業においては事業会社の株価上昇がそのまま相続財産になり、直接相続税の負担へと繋がります。しかし、間接保有することで、自社株を安く税務上評価できる場合があります。
2.株式の集約タイミングを計る
1990年の商法改正以前は、7人以上の発起人が必要だったこともあり、創業当時の状態で株主が残っていたり、さらにそこから相続で親族に株が分散していることもよく見受けられます。
そういった場合、長年自社株を保有されているので、単に買い取りすると伝えても納得いただけないケースや、価格次第ではオーナー個人での買い取りが難しいケースもあります。
このような場合にもホールディングス化を検討できます。事業の多角化や成長戦略からホールディングス体制へ移行する趣旨の説明がされることで、株式の集約化について少数株主の理解を得ることができ、金融機関からも資金調達を受けやすくなります。
3.事業の見える化
複数の事業部門を抱える会社は事業ごとに分社化し持株会社にぶら下げることで、各事業部門を一つの会社として把握することができます。カンパニー制の導入や事業部門ごとにしっかりとした経理をすることでも同様の効果は得られますが、会社が別になることでよりわかりやすく経営状態を把握することができます。
4.リーダー育成
従業員育成にホールディングス化を採用する会社も増えています。次世代幹部に子会社社長のポジションを与えることでモチベーションアップを図り、また、事業計画の策定から実行を通して将来の経営幹部の育成も行うことができます。
ホールディングス化のデメリット
1.コストの増加
ホールディングス化によるデメリットの代表はコストの増加です。単純に従来よりも会社が一社増えますから、その分、管理コストや税金が増えます。
2.グループ会社間でのコミュニケーションの問題
会社が別になることで、社員間の連携が取りづらくなる場合もあります。グループ会社間で相乗効果を狙ったつもりが、相互のライバル意識が悪い方向に進んだり、親会社が偉いなどといった雰囲気が起こり、社員間のコミュニケーションを阻害することにつながってしまった、などといった例もあります。
そうならないような人員配置や役割分担、情報共有ツールの導入等の工夫が必要です。
3.資金繰りの問題
状況次第では資金調達が必要になることもあり、長期の返済をする場合もあることでしょう。
返済を見越して会社が余裕を持って負担できるか、事前に資金繰りをシミュレーションして、もし無理があるようなら返済計画や実行内容を見直していくことも検討しましょう。
ホールディングス化は失敗しやすい?
ご相談の中には、すでにホールディングス化したけど運用がうまくいっていない、失敗だったのではといった声もあります。
このような場合はホールディングスという器を作ったけど、その後は何もしていなかったケースがほとんどです。
事業承継のタイミングや会社の成長ステージのためにせっかく実行されても、有機的に運用できなければ片手落ちでしょう。
ホールディングス化は一時の問題ではなく、組織構造を変えることを意味しますので、経験豊富な税理士など、その後も定期的・継続的にサポートが期待できるパートナーと進めることをお勧めいたします。
おわりに
2022年4月からグループ通算制度が始まり、多角化戦略やM&Aなどで複数の会社を経営されているオーナーはこの制度をきっかけにホールディングス化の検討をされている方もいらっしゃると思います。
辻・本郷 税理士法人ではホールディングス化における事前のシミュレーションや、その後の支援まで対応いたします。全国各地に拠点がありますので、近隣の事務所へぜひご相談ください。
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