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特別償却を適用した場合、どう会計処理する?

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特別償却を適用した場合、どう会計処理する?

固定資産を取得した場合には、耐用年数に応じて減価償却により費用化します。

原則として法定耐用年数に応じた減価償却費しか損金になりませんが、例外として一定の要件を満たす固定資産の取得については、法定耐用年数に応じた減価償却費に一定額の上乗せが認められる特別償却を適用することができます。

つまり特別償却を行うことで、対象資産を取得した事業年度で多くの減価償却費を計上することで利益を減らして一時的な節税が見込めます

こうした特別償却を行うには、会計処理の方法が複数あります。今回は特別償却を適用した場合の会計処理についてご説明します。

特別償却が適用されるおもな制度

特別償却が適用できる制度は複数あり、代表的なものは以下のとおりです。

制度おもな要件、対象資産特別償却
限度額
中小企業経営強化税制・青色申告法人である資本金1億円以下の中小企業者等
・工業会や経産省の証明書等が必要
・対象資産は一定額以上の機械装置、工具器具備品、建物附属設備やソフトウェア
100%
(即時償却)
中小企業投資促進税制・青色申告法人である資本金1億円以下の中小企業者等
・対象資産は一定額以上の機械装置、測定検査工具、ソフトウェア等
30%
DX投資促進税制・青色申告法人で産業競争力強化法の認定事業適応事業者
・対象資産は一定額以上のソフトウェア、繰延資産、器具備品、機械装置
最大30%

なお、上記の制度では特別償却に変えて税額控除を採用することもできますが、今回は税額控除については割愛します。

特別償却のおもな会計処理は2通り。それぞれの仕訳方法を解説

特別償却の会計処理は、特別償却額を通常の減価償却費に含める会計処理(以下、①の会計処理)と、特別償却部分を「特別償却準備金」として計上する会計処理(以下、②の会計処理)に分類されます。

実務上、前者の会計処理を採用するケースがよく見られますが、後者は特別償却額による変動額を毎期の減価償却費に影響させないため、剰余金処分方式の方が会計理論の観点から望ましいと考えられます。

以下に事例を挙げますので、それぞれの会計処理の仕訳を見ていきましょう。

特別償却時の仕訳例

前提:
取得価額100万円、耐用年数5年(定額法、償却率0.2)のソフトウェアを期首に取得使用開始、取得価額の30%の特別償却を行う

①通常の減価償却費とする会計処理例

ⅰ. 取得した事業年度(1年目)
借方貸方備考
減価償却費200,000ソフトウェア200,000普通償却費部分※1
減価償却費300,000ソフトウェア300,000特別償却部分※2

※1 100万円×0.2=20万円
※2 100万円×30%=30万円
損益計算書に計上される減価償却費 50万円
損金算入額 50万円

ⅱ. 翌事業年度以降(2年目以降)
借方貸方備考
減価償却費200,000ソフトウェア200,000普通償却費部分※3

※3 100万円×0.2=20万円
損益計算書に計上される減価償却費 20万円
損金算入額 20万円

特別償却額を通常の減価償却費に含める方法は、会計処理が簡便であるというメリットがありますが、特別償却1年目では利益が少なくなります。

②剰余金処分方式の会計処理

特別償却部分を「特別償却準備金」として純資産の部に積み立てます。

純資産の部に積み立てた「特別償却準備金」は、翌期以降、法定耐用年数に応じて、法定耐用年数が10年以上のものは7年間、法定耐用年数が5年以上10年未満のものは5年間、それ以外のものは法定耐用年数で取崩します。

特別償却額は損益計算書に計上されませんので、法人税の申告書上で特別償却額を計算することとなります。

ⅰ. 取得した事業年度(1年目)
借方貸方備考
減価償却費200,000ソフトウェア200,000普通償却費部分※4
繰越利益剰余金300,000特別償却準備金300,000特別償却部分※5

※4 100万円×0.2=20万円
※5 100万円×30%=30万円
損益計算書に計上される減価償却費 20万円
損金算入額 50万円(減価償却費20万円プラス申告書での減算申告調整30万)

ⅱ. 翌事業年度以降(2年目から5年目)
借方金額貸方金額備考
減価償却費200,000ソフトウェア200,000普通償却費部分※6
特別償却準備金60,000繰越利益剰余金60,000特別償却準備金の取崩し※7

※6 100万円×0.2=20万円
※7 30万円×1/5=6万円
損益計算書に計上される減価償却費 20万円
損金算入額 14万円(減価償却費20万円マイナス申告書での加算申告調整6万円)

ⅲ. 翌業年度以降(6年目)
会計仕訳なし
益金算入額 6万円(申告書での加算申告調整6万円)

剰余金処分方式では会計処理および法人税の申告書は複雑になるというデメリットがありますが、減価償却費は毎年均等になります。

おわりに

今回は特別償却にかかる2つの会計処理をご紹介しました。

どちらの会計処理を採用するかにより各事業年度における費用額、損金算入額が異なりますが、償却期間全体の会計上の費用総額及び特別償却準備金の取崩し期間全体の税務上の損金算入額の総額は変わりません。

特別償却を適用するために証明書の取得や申告時に明細書添付等の手続が必要となる場合もあるため、会計処理方法も含めお悩みの場合には、私たち辻・本郷 税理士法人までご相談ください。

執筆担当:新宿ミライナタワー事務所
 法人ソリューショングループ 大島 直樹
参考サイト

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