タイの移転価格税制について
- 法人税
- 税務・会計
はじめに
タイの移転価格税制法が2018年11月22日より施行されました。
当初の法案に比べて、対象法人の売上が2億バーツ(約6.8億円)以上に引き上げられています(当初は3,000万バーツ以上)。
この法律により、税務調査官は納税者の課税所得および経費を独立企業間取引において獲得したであろう金額に更正する権限を有しました。
移転価格文書化の対象法人と適用開始時期が明確になりましたので、いまだ移転価格文書を作成していない場合は今後対応が必要です。
対象法人
その事業年度の売上が2億バーツ以上の法人で、関連者との取引がある法人。
関連者とは、他の法人の株式の50%以上を直接的または間接的に保有する関係にある法人をいいます。実質的に支配関係がある法人も含みます。
国外関連者だけではなく、国内関連者との取引も対象になります。
適用開始
2019年1月1日以降に開始する事業年度から適用されます。
その事業年度の年次法人税申告書とともに関連者の情報およびその取引金額等を記載した付表を提出しなければなりません。
2019年12月31日決算の法人は、2020年5月30日が上記付表の提出期限になります。
移転価格文書の提出
対象法人は、付表を提出した日から5年以内に移転価格文書の提出を求められることがあります。提出を求められた場合には、60日以内に提出しなければなりません。
不可抗力により提出不可能の場合、税務調査官はその裁量により、通知日から120日を超えない範囲でその提出期限を延長することができます。
ただし、初めてその通知を受けた法人のみ、通知日から180日以内で提出することができます。
罰則規定
合理的な理由なく不十分な書類や間違った書類を提出した場合には、20万バーツ以下の罰金が課せられます。
移転価格文書の内容
今回の法律には移転価格文書の内容についての説明はありませんが、2002年5月のガイドラインによれば、以下の書類が社内に保存されていなければならないとされています。
1. 同一グループ内の取引の構成や関係を示した書類
2. 予算、事業計画、資金予想
3. 納税者の事業戦略とそのような事業戦略を用いる理由を示した書類
4. 売上高、納税者の財務諸表、同一グループ内で行われる業務の取引の内容
5. 同一グループ内で国際的な取引を行う理由を示した書類
6. 各々の関連業務の役割、資産、リスクを考慮した結果としての価格方針、各製品の収益可能性、マーケティング情報、各業務の利益貢献度
7. そのような価格決定方法を選択した理由を示した書類
8. 多くの価格決定方法がある中で、上記7以外の方法を選択しなかった理由を示した書類。その書類は上記7の方法を選択することを決定した際に準備されていなければならない。
9. 同一グループ内で行われる取引について基本的な方針とその交渉過程を示した書類
10.価格設定に関連するその他の書類(もしあれば)
所見
法人税申告書と同時に提出する移転価格文書の内容※ が不明ですが、「ローカルファイル」の作成は必須と思われます。
※「マスターファイル」(グループの活動全体像に関する情報)と「ローカルファイル」(関連者取引における独立企業間価格を算定するための詳細な情報)の両方が必要かどうか
初回の場合は通知日から180日間の猶予があるとはいえ、対象法人は移転価格文書の準備に着手する必要があります。
なお、売上が2億バーツ未満であっても、赤字や利益率が低くて関連者取引がある場合には、現行の法律でもその取引価格を査定されて課税されるリスクはありますので、注意が必要です。
辻・本郷 税理士法人 タイ事務所
https://www.ht-tax.or.jp/corporate/branch_oversea/thai/
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