たまたま土地を譲渡したときに使える消費税の課税売上割合の特例
- 消費税
土地の譲渡は非課税取引とされており、消費税はかかりません。
しかし、本社の移転など、たまたま土地を譲渡した場合に、消費税の負担が増えてしまうことがあります。
そこで、今回はそのような場合に使える、「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請手続」をご紹介します。
特例の概要
消費税の原則課税の適用を受けている事業者が、たまたま土地を譲渡した場合には、課税売上割合が例年に比べて著しく低下することがあります。
例えば、課税売上割合が通常90%を超えている会社が、土地を売却したことにより、非課税売上の割合が増え、課税売上割合が60%になったとします。
その場合の数字のイメージは以下のとおりです。
適用される課税売上割合 | 60% | 90% |
---|---|---|
課税売上に係る消費税額 | 20,000,000 | 20,000,000 |
課税売上対応消費税…① | 10,000,000 | 10,000,000 |
共通対応消費税…② | 10,000,000 | 10,000,000 |
控除対象消費税額…①+②×課税売上割合 | 16,000,000 | 19,000,000 |
納付税額 | 4,000,000 | 1,000,000 |
このように、事業の実態が変わらないのにかかわらず、消費税の負担が増加する結果になります。
このような場合に、課税売上割合に代えてこれに準ずる合理的な割合(課税売上割合に準ずる割合)を適用できるようにするのが、「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請手続」です。
特例が適用される3つの要件
承認が認められ、「課税売上割合に準ずる割合」を適用するためには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。
①土地の譲渡が単発のものであること
②土地の譲渡がなかったとした場合に、事業者の営業の実態に変動がなく、かつ、過去3年間で最も高い課税売上割合と最も低い課税売上割合の差が5%以内であること
③「課税売上割合に準ずる割合」が適用される事業年度において、個別対応方式を採用していること
「課税売上割合に準ずる割合」の計算方法は?
次の①または②のいずれか低い割合です。
①前課税期間の課税売上割合
②前課税期間以前3年間の課税売上割合の平均
どんな手続きが必要?
「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」を、適用を受けようとする課税期間の末日までに納税地の所轄税務署に提出し、税務署長の承認を受ける必要があります。
特例の2つの留意点
承認を受けるまでに時間がかかる
通常の届出のように提出するだけでは手続きが完結せず、承認を受けるまでには1カ月ほど時間がかかるため、余裕をもって申請書を提出する必要があります。
なお、令和3年の税制改正により、適用を受けようとする課税期間の末日までに承認申請書を提出し、同日の翌日以後1月を経過する日までに納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合、承認申請書を提出した日の属する課税期間から適用できるようになりました。
個別対応方式により計算しなければならない
一括比例配分方式で計算する場合には、「課税売上割合に準ずる割合」を適用することができません。
一括比例配分方式を選択した場合には、2年間以上継続して適用した後でなければ、個別対応方式に変更することはできません。
このため、一括比例配分方式に変更した翌事業年度においては、適用できないことになります。
おわりに
「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請手続」についてご紹介しました。
今回ご紹介した手続きのように、申請書や届出一枚で大きく税額が変わることがあります。
通常の取引とは異なる高額な資産の売却や購入する予定がある場合には、あらかじめ顧問税理士に相談するようにしましょう。
私たち辻・本郷 税理士法人でもご相談を承っていますので、ぜひお問い合わせください。
法人ソリューショングループ 朝日 芳樹
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