辻・本郷 税理士法人

検索する

現行制度下(2024年時点)での退職金の税金計算、気をつけるべきポイント

  • 税務・会計
現行制度下(2024年時点)での退職金の税金計算、気をつけるべきポイント

退職金は退職者から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けた会社で税計算を実施し、税金の徴収・納税をすることが基本的に求められます。

ただし、必ずしも毎年定例的に支給が生じるものではありません。そこで、近年の改正点も交えて、退職金に係る税務の留意点をご紹介します。

退職金に係る源泉徴収の計算方法

退職金を支給する際は、「退職所得の受給に関する申告書」をもとに税額を計算して、当該金額を支給額から源泉徴収します。

この税額を計算するときは、退職金の支給額から「退職所得」を算定し、それに基づき計算されます。
算定式は以下の通りです。

(退職手当等の額-退職所得控除額)×1/2

ここでいう退職手当等の額とは「退職所得の受給に関する申告書」に記載されている退職金総額です。
退職所得控除額は勤続年数(1年未満は切り上げ)に応じ、以下のように算定されます。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数(最低80万円)
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

退職所得の算定に関わる近年の税制改正

上記の退職所得の算定に係る近年の主な改正点は、以下の通りです。それぞれについて次の段落で解説致します。

  • 短期退職手当等の創設
  • 退職者が過去に受領した確定拠出年金の重複期間の調整対象が「前14年」から「前19年」に変更

短期退職手当等の創設について

「短期退職手当等」制度は、先に創設されていた「特定役員退職手当等」の拡充制度にあたります。

特定役員退職手当等は、退職所得が算定の際に2分の1にできることから、短期間の在職が想定される役員が在職中の給与を低く設定し、退職金の方へ多めに繰り延べるといった租税回避行為を防止する趣旨で創設されました。

勤続年数が5年以下の役員の退職所得の計算において、「2分の1課税」を適用しないこととする制度です

令和4年1月から施行されている「短期退職手当等」も、役員以外の者にも同様の租税回避行為を防止するために勤続年数が5年以下の従業員に一部規制が設けられたものです。

ただし、従業員に対して役員と同様にすべてを2分の1課税の対象外とすることは適切ではありません。
退職所得控除額を除いた後の退職所得が300万円を超える部分のみ規制の対象とされています。

よって、現行制度での退職所得の計算区分は以下の通りとなります。

退職手当の区分 勤続年数 退職者 退職所得の金額
特定役員退職手当等 5年以下 役員等 (特定役員退職手当等の収入金額-退職所得控除額)
短期退職手当等 5年以下 役員等以外 ・「収入金額-退職所得控除額」≦300万円の場合
(短期退職手当等の収入金額-退職所得控除額)×1/2

・「収入金額-退職所得控除額」>300万円の場合
150万円+{短期退職手当等の収入金額-(300万円+退職所得控除額)}

一般退職手当等 上記以外 (一般退職手当等の収入金額-退職所得控除額)×1/2

確定拠出年金に係る改正点

確定拠出年金に係る改正点

さらに近年で改正があったのが、退職者が確定拠出年金(老齢一時金)を受給する年の前年以前に退職一時金を受給していた場合の勤続年数の計算です。

確定拠出年金の老齢給付金は、60歳以降の任意の時期に受け取ることができます。受給する老齢給付金は退職所得と同じ課税方法が適用され、ここでの勤続年数は加入年数とされます。

そこで、受給する時期を調整することで退職所得控除を多額に受けることを避けるため、確定拠出年金の老齢給付金の退職所得算定に際して、重複を控除する期間が長めに設定されています。

この老齢給付金の受取可能年齢が改正以前は60歳から70歳まででしたが、令和4年4月から75歳まで引き上げられました。これにより、当該期間が「前14年内」から「前19年内」に延長されました。

以下に簡単な事例をあげます。

【前提】
A社に1990年4月1日に入社
2005年4月1日に確定拠出年金(個人型)に加入
2009年3月31日にA社を退社。退職一時金を受給。
2024年3月31日に19年間加入していた確定拠出年金(個人型)の一時金を受給。

この場合、確定拠出年金の一時金の受給から15年前にA社を退社し、退職一時金を受給しているため、改正前であれば「前14年内」に該当せず重複期間の調整は不要となります。

一方、改正後となると「前19年内」に受給しているため、重複期間として4年(2005年4月1日~2009年3月31日)を確定拠出年金の勤続年数の算定上、控除する必要があります。

おわりに

今回は退職金の税計算に係る退職所得算定の気をつけるべきポイントを、近年の改正内容をふまえてご紹介しました。

冒頭に記した通り、退職手当等に係る源泉所得は基本的に会社側で退職者から提出された「退職所得の受給に関する申告書」に基づき税額を計算する必要があります。

もし当該申告書を受領していない場合は、勤続年数の計算ができないために退職所得控除の適用はなく、「2分の1課税」も適用されません。

また、所得税等は「退職金の額×20.42%」、住民税は「退職金の額×6%(市町村民税)、退職金の額×4%(都道府県民税)」で計算されるため、その点もご留意ください。

今後、源泉徴収税額を計算される際は、計算方法が現行制度と相違がないかを是非ご確認いただければと思います。

私たち辻・本郷 税理士法人では退職金の税金計算についても相談を承っていますので、ぜひお問い合わせください。

執筆担当:新宿ミライナタワー事務所
 法人ソリューショングループ 川畑 健人
参考サイト
関連トピックス

サービスに関するお問い合わせ

  • お電話でのお問い合わせの場合、原則折り返し対応となります。直接の回答を希望される場合、お問い合わせフォームをご利用ください。
  • 海外からのお問い合わせにつきましても、お問い合わせフォームをご利用ください。
  • フリーダイヤルへおかけの際は、自動音声ガイダンスにしたがって下記の2つのうちからお問い合わせ内容に沿った番号を選択してください。
    1/相続・国際税務・医療事業に関するお問い合わせ
    2/その他のお問い合わせ
お問い合わせフォーム 0120-730-706

9:00~17:30(土日祝日・年末年始除く)