辻・本郷 税理士法人

検索する

社会福祉法人が合併を検討する際に考慮しておきたいこと

  • その他
社会福祉法人の後継者問題、その難しさと解決策

日本には2万を超える社会福祉法人があります。
もともと社会福祉法人は、一部の篤志家が私財を投じて設立されたものがほとんどでしたので、必然的に規模の小さい法人ばかりでした。しかし最近では、規模の大きな法人が増えてきました。

今回は社会福祉法人の合併をテーマに、拡大することの意義や、検討時に考慮しておきたいことをご案内します。

社会福祉法人にも大規模法人が増えている

収益規模別に見てみますと、年間の事業収益が1億円~2億円の法人が一番多く、全体の26.0%を占めています※1。次いで多いのは1億円以下の法人で全体の13.8%、その次は2億円~3億円の法人の13.6%と続きます。つまり事業収益が年間3億円以下の法人が全体の53.4%を占めているのです※2

ところがその一方で、社会福祉法人全体の平均事業収益は約6億円といわれています。このことは収益規模が10億円を超える大規模法人が一定数以上あることを示しています。なかには50億円以上の年間収益を生み出す法人も増えています。

参考:※1~2 WAMNET「社会福祉法人電子開示システム

規模を拡大するメリットとデメリット

社会福祉法人がその規模を拡大するメリットとデメリットはどこにあるのでしょうか。

メリットは、ヒト・モノ・カネの自由度が増すことです。福祉業界でもICT化の推進は喫緊の課題ですが、大規模法人は資金も人材も豊富に抱え、留保した資金を使ってICT化を強力に推進し業務の効率化を図りつつ、再投資を繰り返してますますその規模を大きくできるのです。

デメリットはさほどありませんが、トップの意思決定とその周知に時間がかかる、あるレベルを超えるとヒトを集めることが難しくなる、また事業所の数が増えると本部機能を設置せざるを得なくなり、管理コストが上昇する、などが考えられます。

社会福祉法人はどのように規模を拡大するか

社会福祉法人はどのように規模を拡大するか

では、大規模法人はどうやってその規模を拡大していくのでしょうか。
大規模法人のなかには、設立時点で医療法人や建設会社などが巨額の資金を提供し、当初から規模が大きいケースもあります。
また、事業を展開する中で毎年計画的に余剰資金を蓄え、少しずつ拡大するケースも多くあります。

もう一つの方法は、合併です。
規模の大きくない社会福祉法人がその規模を拡大しようとしたとき、同じように拡大志向をもつ社会福祉法人と合意のもとで合併し、規模を拡大する事例が増えています。

社会福祉法が想定している合併とは

現行の社会福祉法には、合併時の取扱いが細かく規定されています。

また、令和4年度から施行された社会福祉連携推進法人制度も規定されています。これらの規定は、社会福祉法人には持分という考え方がなく、株式会社のM&Aのような手法になじまないために、あらかじめ準備されたルールと捉えることもできます。

社会福祉法に規定されている合併は、社会福祉法人同士の合併のみを想定しています。

社会福祉法人同士が合併するメリットとデメリットは?

それでは、社会福祉法人同士が合併することによるメリットとデメリットも考えてみましょう。

合併することによる一番のメリットは、経営資源の安定です。ヒトとカネとモノをひとつにして管理し、ノウハウを共有してお互いに高め合うことが期待できます。

合併によって混乱が生じる可能性もある

一方、デメリットは、先ほどの単純な事業拡大と異なり、別の法人格を形成すると言っていいほど大きな変革をもたらすことになるなど、旧法人のルールが根底から変わる可能性があることでしょう。

就業規則や人事制度、給与規程、退職金規程などが異なる法人をひとつにするのですから、統一する過程で混乱は避けられません。
役員人事もスムーズに進むとは限らず、旧法人の主導権争いのような事態が生じないとも限りません。

また、法人格が変われば利用者の生活にも影響が生じ、サービスを提供する現場職員にも大きな負担がかかります。
いずれにしても事前に十分な協議とシミュレーションが必要となるでしょう。

社会福祉法人同士の合併は、お互いに相手法人のことをよく知る必要があります。法人間のルールの違いなども理解したうえで、しっかりすり合わせをしながら計画的に進めるものです。

社会福祉法人の合併は、社会福祉法人専門のコンサルティングチームがある辻󠄀・本郷 税理士法人へご相談ください

辻・本郷税理士法人ではこのようなニーズに応えるべく、社会福祉法人を専門的に扱うチームを設け、医療や介護の専門チームと常に連携しながらコンサルティングを展開しています。

よくご相談を受けるのは、例えば以下のような内容です。

社会福祉法人からのご相談例
  • 近隣の他の社会福祉法人との合併を検討しているが、方法がわからない
  • 理事長の跡継ぎとしての適任者が当法人内にいないので、引き継いでくれる人を探している
  • 事業の拡大を検討しているが、採算がとれるかわからない。どの程度の自己資金があれば可能なのか検討してほしい
医療法人・株式会社・NPO法人からのご相談例
  • 医療法人では特養の経営ができないので、社会福祉法人を設立したい
  • 株式会社で認可保育所を経営しているが、認定こども園を経営したいので社会福祉法人を設立したい
  • NPO法人で障害福祉サービス事業を経営しているが、事業を拡大するので社会福祉法人への組織変更を検討している

おわりに

合併は2法人とは限らず、3法人以上の合併もあり得ます。
合併によりどんなメリットがあるのかを検討する際には、法人の規模の拡大や継続性に加え、利用者と職員のメリットも十分に検討してください。それが経営者の責務です。

私たち辻・本郷 税理士法人では、利用者と職員の幸せを願う経営者様をご支援致します。お困りの際には、ぜひお問い合わせください。

執筆担当:新宿ミライナタワー事務所
 社会福祉法人部 伊東 理伊東
関連トピックス

サービスに関するお問い合わせ

  • お電話でのお問い合わせの場合、原則折り返し対応となります。直接の回答を希望される場合、お問い合わせフォームをご利用ください。
  • 海外からのお問い合わせにつきましても、お問い合わせフォームをご利用ください。
  • フリーダイヤルへおかけの際は、自動音声ガイダンスにしたがって下記の2つのうちからお問い合わせ内容に沿った番号を選択してください。
    1/相続・国際税務・医療事業に関するお問い合わせ
    2/その他のお問い合わせ
お問い合わせフォーム 0120-730-706

9:00~17:30(土日祝日・年末年始除く)