社会福祉法人の後継者問題、その難しさと解決策
- その他
社会福祉法人には、一部の篤志家が私財を提供して設立されたものが多くあります。
現在の社会福祉法は、平成12年(2000年)に旧社会福祉事業法(昭和26(1951)年成立)を改正する形で成立しました。
それから20年以上が経過し、福祉の第一線で公私のすべてを捧げて日本の福祉を牽引し続けた方たちも世代交代の時期に差しかかっています。
社会福祉法人の後継者問題とは
~創業者の想いごと受け継ぐのは難しい?
社会福祉法人には、その公益性の高さから持分という考え方がなく、法人の有する非営利性から剰余金を構成員に分配することも禁じられています。福祉に対する熱い想いのみが原動力となっているのです。
その熱意は、社会福祉法人の創設者こそ皆抱いていらっしゃいますが、残念ながら次の世代の方たちが同じような想いで事業を継承してくれるとは限りません。
社会福祉法人の理事長職は世襲される場合もありますが、それはとても幸運なケースといえます。実の子であっても福祉に対する想いが同じとは限らず、ご自身の引退に伴って第三者に事業を引き継ぐことになるケースも珍しくありません。
急速に高まる社会福祉法人の合併・事業譲渡のニーズ
令和2(2020年)年7月に、社会福祉法人の合併や事業譲渡について、厚生労働省より180ページに及ぶ詳細な『合併・事業譲渡マニュアル』が発出されました。この背景には、福祉ニーズの複雑化、多様化や地域社会の変化に対応するために、より横断的、包括的な福祉サービスが提供できるような事業展開が求められていることにあります(合併・事業譲渡マニュアル「はじめに」より)。
実際に日本各地で社会福祉法人同士の連携・合併や事業譲渡への関心が急速に高まっており、すでに合併や事業譲渡を実行した法人も多く存在しています。
ルールは準備されているが、問題点も
現行の社会福祉法には、社会福祉法人の解散や清算、さらに合併時の取扱いが細かく規定されています。このことは、社会福祉法人の経営者(理事長)が事業の引継ぎを検討する際に、株式会社のM&Aのような手法になじまないためにあらかじめ準備されたルールと捉えることもできます。
しかしながら、福祉サービスを必要としている利用者の生活を守りながら事業を引き継ぐことにはたいへんな困難さが伴います。異なる法人格を形成するような合併による場合には、旧法人のルールが根底から変わることもあり、利用者の生活に影響が生じるだけでなく、サービスを提供する現場職員にも大きな負担がかかります。
最もスムーズに事業を継承するために
福祉サービスを必要としている利用者の生活と、それを支える職員への影響を第一に考えたとき、もっともスムーズに事業を引き継ぐ方法は理事長をはじめとした役員の交代でしょう。
この方法であれば利用者の日々の生活を守りつつ、職員にも劇的な環境変化をもたらすことなく、経営権の譲渡という形で事業を継続していくことができます。
しかし、誰に事業を引き継いでもらうかを決定するのは容易なことではありません。
「この事業を引き継いでほしい」というニーズと、「この事業を引き継ぎたい」というニーズがひとつの市場を形成しているとはいえない状況であり、相手を見つけることさえ困難だからです。
仮に両方のニーズが出会ったとしても、経営権の譲渡をどのように行えばよいのか、さらに譲渡後の安定的な事業運営のための支援等については、多くの専門的な知識と経験が必要です。
事業承継のご相談は、社会福祉法人専門のコンサルティングチームがある辻󠄀・本郷 税理士法人へ
辻・本郷 税理士法人ではこのような潜在的ニーズに応えるべく、社会福祉法人を専門的に扱うチームを設け、医療や介護の専門チームと常に連携しながらコンサルティングを展開しています。
よくご相談を受けるのは、例えば以下のような内容です。
当法人で対応したご相談事例
社会福祉法人様からのご相談例
ご相談内容 | 解決策(一例) |
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近隣の他の社会福祉法人との合併を検討しているが、方法がわからない | 3法人の合併をご支援しました |
理事長の跡継ぎとしての適任者が当法人内にいないので、引き継いでくれる人を探している | 医療法人トップを理事長として招聘しました |
事業の拡大を検討しているが、採算がとれるかわからない。どの程度の自己資金があれば可能なのか検討してほしい | シミュレーションを実施し、そこから考えられる対策をご提案しました |
医療法人・株式会社・NPO法人様からのご相談例
ご相談内容 | 解決策(一例) |
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医療法人では特養の経営ができないので、社会福祉法人を設立したい | 設立認可までご支援を行いました |
株式会社で認可保育所を経営しているが、認定こども園を経営したいので社会福祉法人を設立したい | 設立認可までご支援を行いました |
NPO法人で障害福祉サービス事業を経営しているが、事業を拡大するので社会福祉法人への組織変更を検討している | NPO解散のご支援と、残余財産を引き継ぐ形で社会福祉法人設立をご支援しました |
おわりに
後継者の問題は事業所の存続にかかわります。このことは事業所内で次期リーダーの育成がなかなか進まない問題と似ています。人を育てるのは人であり、人が育つ環境を整えるのは経営者の責務です。
私たち辻・本郷 税理士法人は今までも、これからも、社会福祉法人を経営する皆さまのお手伝いをさせていただきます。
社会福祉法人部 伊東 理
<関連トピックス>
社会福祉連携推進法人とは?概要から設立方法までご紹介
<参考サイト>
【厚生労働省】合併・事業譲渡等マニュアル
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