円滑な事業承継のための種類株式活用方法【シリーズ・事業承継】
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後継者へ経営権を承継させるため、今すぐにでも全権限を承継させることができるならば、現経営者が保有しているすべての株式を後継者へ引き継がせれば良いのですが、理想どおりに進まないこともあるかと思います。
たとえば、後継者が若く、まだ現経営者の指導を必要としている場合や、後継者が複数人おり、誰に権限を持たせれば良いかを決めかねているケースなどが考えられます。
後継者の決定にまだ時間を必要とする場合には、その間の業績が順調に推移すると株式の評価が高くなってしまうので、結果として承継コストが高くなってしまいます。
そのため、できれば株価が低いうちに承継させたいものです。
今回はこのような場合に役立つ、種類株式の活用方法についてご紹介します。
種類株式の一種:黄金株とその活用事例
評価額が低いうちに株式を後継者に承継させながら、現社長の権限を維持させることを目的とするならば、検討すべき方法のひとつが、種類株式の活用です。
種類株式のなかでも、よく耳にする機会があるものが「黄金株」です。
黄金株は拒否権付株式ともいわれており「ある株主総会の議案について、黄金株を保有している株主の承認を得なければ、その議案を可決できない」ということができる機能を持っています。
大半の株式を後継者に引き継がせるが、まだ全権を後継者に任せられる状況にない場合に、現経営者にこの黄金株を所有してもらい、会社が間違った方向に進まないようにするために活用するものです。
種類株式の一種:属人的株式
黄金株と似たようなもので、「属人的株式」というものがあります。
一般的に種類株式というものは、ある特別な権利を株式に付けているもので、たとえば配当を優先的に受け取ることができる代わりに議決権が制限されている「配当優先無議決権株式」などがあります。
属人的株式はその特別な権利を特定の株主に与えるものです。
株主に特別な権利を付けるため、属人的株式と言われています。この属人的株式を新たに活用する場合は、株主総会で定款変更の特殊決議が必要です。また、株主全員の同意を得ておくことが望ましいです。
この属人的株式の使い方として、たとえば「株式の大半は後継者に渡しておくが、現社長に少し株式を残しておき、『現社長が保有する株式には1株につき10の議決権を与える』などとして、現社長が議決権割合の過半数を維持できるようにする」といったように用いられます。
属人的株式の活用事例
最近では、投資育成会社で属人的株式がよく活用されています。
投資育成会社が所有する株式に「配当は投資利回りが6%になるように一定以上の配当金を受け取る権利を明記する。その代わり、議決権については1株につき1/2とする」などの権利と制限を付けます。
「投資利回りをしっかりと確保しますが、できるかぎり経営には口を出しません」という投資育成会社のスタンスに沿った使い方をしているわけです。
属人的株式を含めた種類株式の導入も、それぞれの会社の事情に合わせてご検討頂ければと思います。
ただし、新たに導入をする場合には、株主全員の同意が求められます。株式が分散されていて株主が多い会社では導入は難しいものとなりますので、やはり株主の多い会社にとってはできる限り株主の整理を進める必要があるでしょう。
また、これから事業承継対策をご検討の会社は、なるべく株式が分散しない対策を心がけましょう。
おわりに
事業承継においては、経営支配権の確保に加え、後継者問題がポイントになります。
辻・本郷 税理士法人では、経営支配権の確保と有益な株式承継対策、さらには相続税対策、そして争族対策までご支援致します。
法人ソリューショングループ 岩崎 睦
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