サラリーマン大家の確定申告
- 所得税
- 国税・地方税
令和3年(2021年)分の確定申告が、2月16日(水)から始まります。
すでに不動産投資をされている方にとってはおなじみの確定申告ですが、最近はマンション経営を行うサラリーマンの方も増えてきました。
そこで、いわゆるサラリーマン大家の方向けに、確定申告の基礎知識からお伝えします。
サラリーマン大家が確定申告するものは?
確定申告では、個人が1年の間に稼いだ収入を内容に応じて10種類に区分します。
利子所得・配当所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得、そして、不動産所得です。
サラリーマンとして得た給与所得は過去のトピックス「サラリーマン必見!年末調整の重要性」にあるとおり、年末調整を通じて会社が申告します。一方、大家として得た所得は不動産所得にあたり、これを確定申告することになります。
不動産所得とは
個人が1年間に受け取った家賃、地代などが不動産所得にあたります。
マンション経営をしているのであれば家賃や礼金収入が、土地を貸しているなら地代収入や更新料、名義書換料などがこれにあたります。
駐車場として貸している土地の収入、電力会社に貸している電柱敷地料、携帯電話のアンテナ基地設置料や自販機設置による収入なども、不動産所得にあたります。
一般的に、不動産所得は以下の算式で計算します。
総収入金額 - 必要経費 = 不動産所得
サラリーマン大家は、給与所得があって年末調整をしているので、以下になります。
家賃等の収入 - 必要経費 = 不動産所得
つまり、サラリーマン大家にとっての不動産所得とは、土地や建物などを貸し付けたことによる賃貸料収入から、不動産経営に関わる必要経費を引いたものです。
「家賃等の収入」にあたるものは?
「家賃等の収入」にあたるものは、1年間に受け取った家賃と、家賃に関連するもの(家賃、地代、権利金、更新料、名義書換料、承諾料など)になります。
計上を区分するときの注意点
不動産に関わる収入といっても、不動産所得に計上すべきものとそうでないものがあります。
コロナ禍前に隆盛した「民泊」の場合ですと、不動産所得にはあたらず、原則として「雑所得」に区分されます。
また、権利金などを一時に受けた場合、その権利金等が土地の長期貸付によるものは、「譲渡所得」とされる場合があります。
このように、不動産所得の収入になるかどうか、確定申告の際には注意して作業を進めましょう。
必要経費にできるものは?
収入から引くことができる「必要経費」にできるものには何があるのでしょうか。
おもな経費としては、以下のようなものがあります。
①固定資産税・不動産取得税、損害保険料等
投資物件に係る固定資産税や損害保険料、投資初年度であれば不動産取得税も引くことができます。
相続で不動産を引き継ぎ、今年から確定申告をするようになった方であれば、不動産投資物件に係る相続登記費用も経費に計上することができます。
②管理委託費・広告宣伝費
不動産会社に管理を委託している場合には、管理委託費や空き物件の広告などの費用が発生します。
③減価償却費
建物には、工法や用材によって耐用年数が設定されています。木造は22年、鉄筋造は34年、鉄筋コンクリート(RC)造は47年です。
建物の購入にかかった費用をそれぞれの年代で割った額が減価償却となるので、毎年の費用として計上できます。
④修繕費
通常の維持管理や修理のために支出されるものは、修繕費として経費になります。
ただし、建物や附属設備などの価値を増加させるような支出は資本的支出といわれ、経費ではなく、資産として計上することになります。
⑤借入の金利
ローンを組んで借入した場合には、金利が必要経費になります。
通常、不動産所得の赤字金額は、他の所得の黒字金額から差し引いて計算することができます。これを「損益通算」と言います。
しかし、不動産所得の赤字のなかに、不動産所得を得る業務を行うために、土地等の取得に要した借入金利子が含まれている場合には、その利子は損益通算することはできませんので、注意が必要です。
⑥立退料
建物が老朽化のために建替えするさい、貸し付けていた建物の賃借人を立ち退かせるときに支払う立退料は必要経費になります。
ただし、建物を売る場合や、建物を取り壊してその敷地を売る場合には、譲渡所得の計算上控除するものになります。そのため、不動産所得では必要経費になりません。
もし家賃が支払われなかったら? ~計上する時期の注意点
ときとして、賃借人が家賃を支払わないこともありえます。
たとえば、賃借人A・B2名のうち、Bが家賃を払いませんでした。この場合、どのように計上すればよいでしょうか。
1年間に受け取った金額を計上すればいいのだから、滞納しているBの家賃分は計上せずとしてもよいのでしょうか。
不動産所得の収入金額は、本年中に収入することが確定した金額です。
つまり、実際に受け取っていないBの滞納家賃についても、受取期日が本年中に到来したものは、本年分の収入として計上しなくてはなりません。
この場合、本年分の「家賃等の収入」はAの家賃+Bの家賃を計上します。
そのかわり、翌年になってBが家賃を支払った場合には、翌年の収入に賃貸料として計上しなくてもかまいません。
もしBが家賃を長期的に払えなくなった場合には、一定の要件はありますが、その年において損失として計上することができます。
敷金・保証金の返済を要しない場合の注意点
本来、敷金や保証金は賃借人に返還すべきものですが、Bの家賃支払いができなくなったことにより返還を要しないことが確定した年分に、その金額を収入に計上することにも注意が必要です。
確定申告の手順は?
①経費領収書の準備
事業を運営するために要した経費の領収書を準備します。
②確定申告書の準備
申告書は国税庁のWebサイトからダウンロードできます。
確定申告書は2種類あり、AとBが存在しますが、不動産所得の確定申告では申告書Bを使用します。
③収支内訳書の準備
不動産所得用様式の収支内訳書を準備します。この書式も、国税庁のWebサイトからダウンロードが可能です。
④確定申告書を作成・確認
②で入手した申告書に手書きで記載するか、あるいは国税庁のWebサイトにある「確定申告書作成コーナー」で作成できます。
作成した確定申告書はプリントアウトして郵送するか、またはe-Taxで送信できます。
なお、e-Taxを利用する場合は事前登録が必要です。申告前に調べておきましょう。
申告書作成を終えたら、添付する書類に記入漏れがないかを確認しましょう。
⑤確定申告書を提出する
申告書の提出方法には以下の3種類があります。
- 所轄税務署に郵送で提出
- 所轄税務署の受付に提出
- e-Taxで提出(電子申請)
⑥納税
納税方法には3種類の方法があります。
- 預貯金からの振替納税。振替は4月中旬に実行されます
- 金融機関で現金納付する
- e-Taxで納付する
「事業として」の不動産運営の基準は?
賃貸経営の規模によっては、事業として扱われることがあります。
事業として営んでいるかどうかの判断基準は、貸家なら5棟以上、アパートなら10室以上がおおよその基準になります。
駐車場は明確な基準はありませんが、おおむね50台以上とされています。
ただし、賃料収入の規模が大きい場合などは「事業として」営んでいると認定される場合もあります。
ご自身で判断するのが難しい場合は、税務署や、私たち税理士法人にご相談ください。
おわりに
以上、サラリーマン大家の確定申告で大事な点をまとめました。
あと1か月で確定申告が始まります。この記事を参考にしていただき、ゆとりをもって確定申告に備えましょう。
私たち辻・本郷 税理士法人でも確定申告書作成を承っていますので、ご相談ください。
<参考サイト>
【国税庁】不動産収入を受け取ったとき(不動産所得/タックスアンサー1370)
【国税庁】不動産所得の収入計上時期(タックスアンサー1376)
【国税庁】修繕費とならないものの判定(タックスアンサー1379)
【国税庁】立退料を支払ったとき(タックスアンサー1382)
【国税庁】事業としての不動産貸付とそれ以外の不動産貸付との区分
サービスに関するお問い合わせ
- お電話でのお問い合わせの場合、原則折り返し対応となります。直接の回答を希望される場合、お問い合わせフォームをご利用ください。
- 海外からのお問い合わせにつきましても、お問い合わせフォームをご利用ください。
- フリーダイヤルへおかけの際は、自動音声ガイダンスにしたがって下記の2つのうちからお問い合わせ内容に沿った番号を選択してください。
1/相続・国際税務・医療事業に関するお問い合わせ
2/その他のお問い合わせ
9:00~17:30(土日祝日・年末年始除く)