この土地いくら? 路線価から土地の価格を知る方法
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令和4年(2022年)分の路線価等が7月1日に国税庁Webサイトで公開されました。今年の傾向は、全国平均で住宅地・商業地のいずれも2年ぶりに地価が上昇に転じ、下落した地域もあるものの下落率は縮小しています。
新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に緩和されるなかで、全体的に昨年から回復傾向が見られているようです。
今回は路線価をテーマに、そもそもどんなものなのか、路線価から土地の価格を知る方法や、土地の時価について解説します。
路線価とは?
路線価とは、相続税や贈与税を算出するために公表されているものです。正式名称は「財産評価基準」といいます。
相続財産は「時価」で評価して相続税を計算することになっていますが、時価はいくらになるのか売ってみないと分からなかったり、不動産会社によって時価が違う、などというようでは困ります。
そこで国が一定の基準として路線価を定めて「この基準をもとに評価したら、時価と認めます」と公表しているのです。
路線価はその名のとおり、土地が接している路線(道路)から地価を算出するために、各道路に設定されている1m2あたりの価格のことです。
ただ、全国すべての道路に路線価があるわけではなく、市街化調整区域※など路線価の定められていない地域もあります。こうした地域には、固定資産税評価額に乗算して用いる「評価倍率」が公表されています。
評価倍率も路線価と同じ財産評価基準にあたり、2つをまとめて一般的に「路線価等」と呼んでいます。
路線価と時価の関係
先述のとおり、路線価は相続税の計算に用いられる基準です。ただ、「時価」というのは売ったらいくらになるか、つまり「その時々に市場で成立している市場価格のこと」です。実際の市場価格は、売る時期によって変わります。
ところが、路線価は公表された年の1月1日~12月31日までの1年間は当年の路線価を使うよう規定されています。
毎日、地価変動に合わせて路線価を公表するのは現実的ではないので、一般的な土地取引の指標とされている公示価格よりも20%低い価格で評価し、1年間に20%地価上昇があっても評価が高すぎることのないように調整されています。
路線価からどうやって「時価」を知ることができるの?
相続税等のためではなく、漠然と、売ったらいくらになるか時価をおおまかに知りたい場合がありますよね。そういう時にどうやって路線価から計算するのかをご紹介します。
路線価等は、公示価格と同じく1月1日を評価時点としています。そのうえで公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定められます。したがって、路線価図と地図を見比べて、時価を知りたい土地が面している道路の路線価(1m2あたりの値段)に面積を乗じ、80%で割り戻せば、その年の1月1日時点の「時価」がおおまかに把握できます。
「黒塗り」の場合、その地区区分は「黒塗り」側の路線の道路沿いのみが該当します。「斜線」の場合、その地区区分は「斜線」側の路線には該当しません。「黒塗り」または「斜線」ではない「白抜き」の場合、その地区区分はその路線全域に該当します。
路線価をもとに時価を計算してみよう
例えば、路線価が「215D(千円単位)」で面積が100m2の土地の場合には、以下のように求められます。
【計算例】
(215,000円 / m2 ✕ 100m2) / 0.8 = 26,875,000円
この土地は、年初の時点でおおよそ26,875,000円くらいだな、と時価を把握することができます。
路線価をもとに借地権と底地を計算してみよう
路線価には、借地権割合を示す記号(A~G)がついています。更地価格だけでなく、建物と土地の所有者が別人である場合にも借地権や底地の値段を把握できるようになっています。
例えば、上記の計算で使用した路線価では「215D」なので、借地権割合の記号は「D」です。路線価図の右上にある借地権割合の表を見ると、Dは「60%」と記載されています。したがって、借地権と底地の計算は下記のようになります。
【借地権と底地の計算例】
- 借地権割合D = 26,875,000円 ✕ 60% = 16,125,000円
- 底地 = 26,875,000円 ✕(100% – 60%) = 10,750,000円
このように、路線価を調べれば土地(更地)、借地権、底地のおおよその時価を即座に把握することができます。
路線価を利用して時価を計算した際の注意点
路線価は不動産鑑定評価をもとに定められています。ただ、実際に売れる金額は、売買取引が成立してみないとわかりません。市場の売買取引では売り急ぎや買い進み、需要と供給やその他さまざまな要因で価格は左右されるものと覚えておきましょう。
路線価のほかにも、土地の価格は全部で5つある?(一物五価)
ここまで路線価と公示価格についてご案内しましたが、土地の価格はその他にも複数の官庁から公表されています。一物五価といわれるように、1つの土地に対して5種類の価格が設定されているのです。
そのなかで路線価が重宝する理由は、公示価格や基準地価格のように「地点」だけの価格ではなく道路に接する土地どこでもすぐに価格が分かる点に加え、固定資産税のように3年に一度ではなく、毎年公表されている点です。
いろいろな土地の価格がありますが、何のために、どこが公表している土地の価格なのか把握しておくとよいでしょう。
時価(実勢価格)
一般の人や自治体などが土地を売ったり、買ったりする際に付けられる価格です。
- 価格:取引によって異なる
路線価(相続税財産評価基準)
本稿でご案内した、国税庁が発表する価格。相続税や贈与税にかかわる土地の評価額を出す際に用いられます。
- 調査時点:毎年1月1日
- 発表:毎年7月
- 価格:公示地価の80%程度
公示地価(地価公示価格)
国土交通省が公示する標準地の価格。一般的な土地取り引きの指標、公共事業用地の取得価格算定の基準となります。
ただし、建物の敷地の場合はその建物がないものとし、また、土地を使用するうえで制限などのある場合には、それらがない更地での価格です。
- 調査時点:毎年1月1日
- 発表:毎年3月
- 価格:他の地価を決める際の基準になる公的な指標となる価格
都道府県地価調査価格(基準地価格)
都道府県知事が公示する標準地の価格。公示地価の補完、地方公共団体などの公共事業用地の取得価格算定の基準となります。
- 調査時点:毎年7月1日
- 発表:毎年9月
- 価格:公示地価とほぼ同じ
固定資産税路線価
市町村(東京23区の場合は都)が算出する価格。この固定資産税路線価から求められる固定資産税評価額が、固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税の算定に用いられます。
- 調査時点:基準年(3年ごと)の1月1日
- 発表:基準年の4月ごろ
- 価格:公示地価の70%程度
おわりに
国税庁のWebサイトでは、平成28年(2016年)分から令和4年分までの路線価等を掲載しています。路線価は相続時だけでなく、土地の価格をおおまかに把握するのにも便利なツールです。毎年7月に公表されますので、定期的にチェックしておくとよいでしょう。
実際に不動産評価が必要な場合は、さらに細かくさまざまな補正を行うことができますので、専門家に相談することをおすすめします。
<参考サイト>
【国税庁】財産評価基準書 路線価図・評価倍率表
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