消費税のリバースチャージ方式が適用される取引とは?
- 税務・会計
消費税の課税事業者は、売上で預かった消費税のなかから、この売上をあげるために支払った消費税を控除して納税をします。
これ以外にも、一定の役務の提供を受けた場合には、役務の提供のために支払った消費税額についてリバースチャージ方式による納税義務が生じます。
今回は、このリバースチャージ方式について解説します。
リバースチャージ方式とは?
国外事業者が行う「事業者向け電気通信利用役務の提供」および「特定役務の提供」(以下、特定課税仕入)については、その “役務の提供を受けた事業者” が申告・納付を行います。これを、リバースチャージ方式と言います。
リバースチャージ方式が適用される取引については納税義務が転嫁されるため、当該取引に係る支払対価の額を、その役務の提供を受けた(対価を支払った)事業者の課税標準額に含めて計算をします。
また、仕入税額控除の対象となりますので、通常の課税仕入と併せて仕入税額控除の金額を計算します。
ただし、課税売上割合が95%以上の事業者や、簡易課税制度の適用を受ける事業者については、経過措置により特定課税仕入を行った場合においても、当面の間はその特定課税仕入がなかったものとして消費税の計算を行います。
「事業者向け電気通信利用役務の提供」と
「特定役務の提供」とは?
以下に、事業者向け電気通信利用役務の提供と特定役務の提供の意義について解説します。
事業者向け電気通信利用役務の提供
電気通信利用役務の提供のうち、役務の性質または取引条件等から、役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいいます。
電気通信利用役務の提供とは、インターネット等を介して行われる役務の提供をいいます。
なお、電話・メール・インターネット回線の接続などの通信そのものや、他の資産の販売や役務の提供に付随して行われるものは除かれます。
電気通信利用役務の提供についての具体的な例示は以下の通りです。
- インターネット等を通じて行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウェア(ゲームなどのアプリケーションを含みます)の配信
- 顧客に、クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
- インターネット等を通じた広告の配信・掲載
- インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス (商品の掲載料金等)
- インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス
- インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの)
- インターネットを介して行う英会話教室
※国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等について」(国内事業者の皆様へ)より
電気通信利用役務の提供のうち、リバースチャージ方式が適用される「事業者向け電気通信利用役務の提供」とは、例えば、インターネット上での広告の配信や、インターネット上のWebサイトでゲームやソフトウェアの販売場所を提供するサービスなどが該当します。
また、取引当事者間固有の契約を結ぶもので、契約において役務の提供を受ける事業者が事業として利用することが明らかなものも、リバースチャージ方式が適用されます。
特定役務の提供
国外事業者が国内において行う演劇その他一定の役務の提供(電気通信利用役務の提供は除きます)をいいます。
例えば、国外事業者である俳優が日本で映画や演劇に出演する場合や、国外事業者であるプロスポーツ選手が日本で大会などに出場する場合などが該当します。
リバースチャージ方式が適用されるか否かの判断のポイント
リバースチャージ方式が適用される取引か否かを判断するためには、まずはその相手方が国外事業者であるか否かを確認し、そのうえで当該役務の提供が事業者向け電気通信利用役務の提供または特定役務の提供に該当するものであるかを確認する必要があります。
専門家であっても、個々の要件と照らし合わせながら適用の有無を判断するのは簡単ではありません。
そのため、リバースチャージ方式の対象となる役務の提供を行う事業者は、あらかじめその役務の提供がリバースチャージ方式の対象である旨を表示することが義務付けられています。
リバースチャージ方式が適用される取引であるかを判断する必要がある場合は、まずはその表示の有無を確認するようにしましょう。
消費者向け電気通信利用役務の提供について
国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、事業者向け電気通信利用役務の提供に該当するもの以外を、「消費者向け電気通信利用役務の提供」といいます。
リバースチャージ方式の適用はありませんが、その取引は課税取引となるため、請求金額には消費税相当額が含まれます。ただ、仕入税額控除の適用について一定の制限が設けられており、登録国外事業者以外の国外事業者から受けた当該役務の提供は、仕入税額控除の対象となりません。
登録国外事業者とは、一定の要件を満たす国外事業者のうち、登録国外事業者制度の登録を受けたものをいいます。登録国外事業者は国税庁Webサイトに公表されておりますので、消費者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合には確認をするようにしましょう。
なお、インボイス制度が施行される令和5年(2023年)10月1日以後については、この登録国外事業者制度は廃止されます。相手方が適格請求書発行事業者であれば、通常の課税仕入と同様に仕入税額控除の対象となります。
インボイス制度施行後の取り扱いについては、過去の税務トピックス「電気通信役務はインボイス制度でどう変わる?」をご確認ください。
おわりに
リバースチャージ方式について、対象となる取引や判断のポイントについて解説しました。
この方式が適用される取引は、消費税を計算するうえで特殊な計算を行うことになります。それゆえに、取引がリバースチャージ方式の対象となる取引であるか否かを正しく判断することが重要となります。
今回の記事が少しでも皆様のお役にたてれば光栄です。
<参考サイト>
【国税庁】国境を越えた役務の提供の課税関係
【同上】リバースチャージ方式による申告を要する者
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