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【令和7年度税制改正大綱】中小企業経営強化税制改正のポイント

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【令和7年度税制改正大綱】中小企業経営強化税制改正のポイント

令和6(2024)年12月20日に「令和7年度税制改正大綱」が公表されました。そのうち法人税に関する主要な項目である、中小企業経営強化税制(特別償却・税額控除)について従前の制度の概要と今回の改正点についてご案内します。

従前の中小企業経営強化税制はどんなものだったか

「中小企業経営強化税制」は、平成29年度税制改正において「中小企業投資促進税制」の上乗せ措置として創設されました。
「中小企業投資促進税制」も、今回の税制改正で一定の見直しがされたうえで、2年間延長されます。

中小企業投資促進税制(~令和7年3月31日)とは

中小企業経営強化税制をご理解いただくために、まず、中小企業投資促進税制について触れておきます。

青色申告法人である中小企業者など(中小企業者・農業協同組合等・商店街申告組合)が特定の新品機械装置などの取得または製作(以下、「取得等」とします)をして、国内にある製造業、建設業などの指定事業の用に供した場合に、特別償却または税額控除を認めるものです。

[条件]

特別償却限度額

基準取得価額×30%
基準取得価額=取得価額(船舶は取得価額×75%)

税額控除限度額

基準取得価額の7%または10%(資本金3,000万円以下の法人は10%)

※税額控除の控除上限は、この制度における税額控除および「中小企業経営強化税制」と合わせて法人税額の20%相当額です。

対象資産(特定機械装置等)

  • 新品の機械装置など
種類 対象資産(特定経営力向上設備等)
機械及び装置 1台または1基の取得価額が160万円以上
測定工具及び検査工具 1台または1基の取得価額が120万円以上
取得価額の合計額が120万円以上(1台または1基の取得価額が30万円未満を除く)
ソフトウエア 一のソフトウェアの取得価額が70万円以上
取得価額の合計額が70万円以上
車両及び運搬具 貨物の運送の用に供される車両総重量が3.5トン以上の普通自動車
船舶 内航海運業の用に供される船舶

対象指定事業

対象指定事業については、中小企業経営強化税制の対象指定事業と同じです。
制度の対象となる事業は次の事業とされています。

製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、採石業、砂利採取業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業にあっては、生活衛生同業組合の組合員が行うものに限ります)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業、沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、情報通信業、損害保険代理業、不動産業、駐車場業、物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育、学習支援業、医療、福祉業、協同組合(他に分類されないもの)及びサービス業(他に分類されないもの)

(注)映画業を除く娯楽業、性風俗関連特殊営業に該当する事業は対象になりません。

以上が従前の中小企業投資促進税制の概要になります。

中小企業経営強化税制(~令和7年3月31日)とは

前述の中小企業投資促進税制の上乗せ措置としての、中小企業経営強化税制についても改正前の内容を振り返りましょう。

この税制は、経産省が定めた「特定経営力向上設備等」に該当する機械装置等を中小企業者等が取得等した場合に特別償却または税額控除を認める制度です。

「特定経営力向上設備等」とはどんなものか

中小企業等経営強化法のもと作成した「経営力向上計画」の認定を受けた青色申告法人である中小企業者など(中小企業者・農業協同組合等・商店街申告組合)が、取得等をして国内にあるその法人の指定事業の用に供しており、経営力向上計画に記載された経営力向上に著しく資する(=役立つ)設備等を指します。

設備等には4つの分類があります。

  • 生産性向上設備(A類型)
  • 収益力強化設備(B類型)
  • デジタル化設備(C類型)
  • 経営資源集約化設備(D類型)

特定経営力向上設備等の対象となる資産

  • 新品の機械装置など
対象資産 対象資産(特定経営力向上設備等)
種類 1台または1基の取得価額
機械及び装置 1台または1基の取得価額が160万円以上
工具、器具及び備品 1台または1基の取得価額が30万円以上
建物付属設備 一のソフトウェアの取得価額が60万円以上
ソフトウエア 一の建物及びその付属設備の取得価額が70万円以上

対象指定事業 ※中小企業投資促進税制と同一

製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、採石業、砂利採取業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業にあっては、生活衛生同業組合の組合員が行うものに限ります、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業、沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、情報通信業、損害保険代理業、不動産業、駐車場業、物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育、学習支援業、医療、福祉業、協同組合(他に分類されないもの)及びサービス業(他に分類されないもの)

(注)映画業を除く娯楽業、性風俗関連特殊営業に該当する事業は対象になりません。

令和7年税制改正大綱で公表された中小企業経営強化税制の拡充・延長について

店舗設備

行政では、中小企業の経営基盤強化や投資促進のための支援策が講じられています。
なかでも、売上高100億円を超える企業の育成に力を入れています。こうした企業の成長を後押しすることで、地域経済を支える中小企業が地域経済に好環境を生み出していくことが期待されているのです。

このように有望な中小企業が大胆な設備投資を行えるよう、中小企業経営強化税制が拡充・延長されます。
具体的な内容は以下の通りです。

  • 成長意欲の高い中小企業の設備投資に更なる税制上の措置が創設されます。
  • 中小企業の大胆な設備投資を支援するために「中小企業成長加速化補助金」も実施されます(公募要領は令和7年3月公開予定)。

  • 特定経営力向上設備等について一定の見直しがされたうえで、2年間延長されます(令和9年3月31日まで)。

拡充・見直しのポイント

さらに細かく確認していきましょう。

①売上高100億円超を目指す企業の投資計画を後押し

売上高100億円超を目指す中小企業が作成する投資計画(投資利益率年平均7%以上かつ経済産業大臣が定める経営規模拡大要件を満たすもの)の目的達成に必用不可欠な設備が「特定経営力向上設備等」に追加されます(B類型拡充)。

②特定経営力向上設備に建物が追加

「特定経営力向上設備」に建物が追加されます(B類型拡充)。

改正後の対象資産
種類 対象資産(特定経営力向上設備等)
種類 1台または1基の取得価額
機械及び装置 1台または1基の取得価額が160万円以上
工具、器具及び備品 1台または1基の取得価額が30万円以上
建物及び付属設備 一の建物及びその付属設備の取得価額が1,000万円以上(B類型拡充型で生産性向上に資する設備の導入に伴って新増設されたものに限る)
ソフトウエア 一のソフトウェアの取得価額が70万円以上

③改正後の特別償却限度額・税額控除限度額

  • 特別償却限度額:取得価額-普通償却額
    (建物及びその付属設備の特別償却限度額は取得価額の15%(給与増加割合≧2.5%)または25%(給与増加割合≧5.0%))
  • 税額控除限度額:取得価額の7%または10%(資本金3,000万円以下の法人は10%)
    ※税額控除の控除上限は、この制度における税額控除および「中小企業投資促進税制」と合わせて法人税額の20%相当額です。
    (従前:同一)
    (建物及びその付属設備の税額控除限度額は取得価額の1%(給与増加割合≧2.5%)または2%(給与増加割合≧5.0%))

(注1)給与増加割合=(給与支給額 ― 比較給与支給額)/比較給与支給額
(注2)建物及びその付属設備については、給与増加割合が2.5%未満の場合特別償却及び税額控除の適用はできません。
(注3)確認を受けた「投資計画」の計画期間中は、中小企業投資促進税制及び少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例は適用できません。

④「特定経営力向上設備」の判定方法が変更

「経営力向上に著しく資する設備等であるか」について判定方法が変更されます。

⑤デジタル化設備、暗号資産マイニング業の設備が除外

デジタル化設備(C類型)、暗号資産マイニング業の設備が除外されます。

中小企業経営強化税制の適用を受けるには

中小企業経営強化税制の適用を受けるためには、設備等の取得前に経営力向上計画の認定を受け、確定申告書に特定経営力向上設備等に該当するものであることを証する書類の添付が必要です。

適用を受けるためのキモとなる計画策定については、中小企業庁により経営革新等支援機関として認定を受けている事業者からの支援を受けることができます。
私たち辻・本郷 税理士法人は経営革新等支援機関として認定されています。

おわりに

今後、「税制改正の大綱」に沿った改正法案が国会で可決されると改正法案は成立し、施行されることになります。中小企業等に関係する税制や補助金についてご承知おきいただき、有効にご活用いただければと思います。

辻・本郷グループ内で補助金獲得のためのご支援も行っておりますので、どうぞお問い合わせください。

執筆担当:東京ミッドタウン八重洲事務所 米村 浩明
参考サイト・参考文献
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