【令和6年版】法人が配当金等を受け取った際の処理上の注意点
- 税務・会計
法人と個人では、配当金等を受け取った際の処理が異なります。
個人の場合にはおもに以下の処理を行うことになります。
- 総合課税分離課税の判定
- 大口株主の判定
等
一方、法人の場合にはおもに以下の処理を行います。
- 受取配当金等の一部源泉徴収不要
- 受取配当金等の益金不算入
- 受取配当金等の所得税額控除
等
直近の令和6年度税制改正では、法人・個人ともに令和5年10月1日以降の配当金等に関する変更が行われました。本稿では、この改正内容をふまえて法人が配当金等を受け取った際の注意点をご案内します。
受取配当金等の益金不算入制度
受取配当金等の益金不算入制度については、以下4種類の区分があります。
- 完全子法人株式等
- 関連法人株式等
- その他株式等
- 非支配目的株式等
それぞれ、持株割合によって受取配当金等の益金不算入制度の金額が異なります。
区分 | 持株割合 | 益金不算入割合 | 負債利子控除 |
---|---|---|---|
完全子法人株式等 | 100% | 100% | なし |
関連法人株式等 | 1/3超 | 100% | あり |
その他の株式等 | 5%超 | 50% | なし |
非支配目的株式等 | 5%以下 | 20% | なし |
受取配当金等の益金不算入制度において注意しておきたいこと
原則として、完全子法人株式等および関連法人株式等に関しては、配当等の額の計算期間の初日からその計算期間の末日まで継続して100%または1/3超を保有している必要があります※1。
一方、その他株式等および非支配目的株式等に関しては、基準日の持株割合により判定を行いますので注意しましょう※2。
仮に、期中にM&Aにより100%保有し、最初に迎える決算で配当を受けた場合、配当等の額の計算期間の初日からその計算期間の末日まで継続して保有していないことになるため、完全子法人株式等および関連法人株式等に該当しません。
ただし、基準日においては100%保有(5%超)していますので、その他株式等に該当し、50%の益金不算入となります。
なお、持株割合については、令和4年4月1日以後に開始する事業年度より100%グループ会社全体の持株割合で判定を行います。
※1 関連法人株式等について計算期間が6月を超える場合には、計算期間末日以前6月の期間継続して1/3超保有で可
※2 短期保有株式等を除く
受取配当金等の源泉徴収不要制度
受取配当金等の源泉徴収不要制度において注意しておきたいこと
この際の注意点は、関連法人株式等の保有期間です。
完全子法人株式等は、益金不算入制度と同様に配当等の額の計算期間の初日からその計算期間の末日まで継続して100%保有しているか、という判定になります。
一方、関連法人株式等の自社の直接支配のみで1/3超保有しているかの判定は、配当等の額の計算期間の初日からその計算期間の末日まで通じて1/3超保有ではなく、基準日における判定になりますので注意が必要です。
区分 | 持株割合 | 持株保有者 | 源泉徴収 |
---|---|---|---|
完全子法人株式等 | 100% | 100%グループ全体で持株割合判定 | 無 |
関連法人株式等 | 1/3超 | 自社の直接支配のみで持株割合判定 | |
その他の株式等 | 5%超 | 100%グループ全体で持株割合判定 | 有 |
非支配目的株式等 | 5%以下 |
前項で「期中にM&Aにより100%保有した際の配当の例を益金不算入制度に記載した際、その他株式等として50%の益金不算入」と説明をしましたが、源泉徴収不要制度の関連法人株式等の判定は基準日となります。
源泉徴収不要制度においては、関連法人株式等として源泉徴収が不要の可能性もありますのでさまざまなケースで検討が必要です※3。
※3 益金不算入制度と源泉徴収不要制度の要件が異なる理由は、源泉徴収段階で源泉徴収義務者がその判断を行う必要があるため
おわりに
配当金を受け取った際の処理は、法人個人の制度の違いや、どのような制度による判定なのかによってさまざまな要件が異なってきます。とくに配当金等に関しては令和4年および令和5年に相次いで改正が行われた論点となっています。
今回のように、受取配当金等の益金不算入における判定と源泉徴収不要制度における判定とで、それぞれの区分が異なるケースもあります。
つねに税制改正の論点を確認し、知識をアップデートすることが重要です。
法人ソリューショングループ 清水 厚志
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