令和5年度税制改正要望が公表されました
- 国税・地方税
毎年12月には、政府与党から税制改正大綱が公表されます。その前段階として、各省庁から提出された税制改正への要望が公表されました。
令和5年(2023年)にはどのような税制が注目されているのでしょうか。各省庁からの要望のうち、身近な税制にポイントを絞って確認していきましょう。
なお、本稿執筆時点(2022年10月)の要望であり、これらは必ずしも税制改正大綱に織り込まれるものではありません。
各省庁から提出された要望数は?
まず、各省庁から提出された令和5年度の要望数を見てみましょう。
提出数が多いのは、金融庁23件、厚生労働省23件、農林水産省29件、経済産業省43件、国都交通省38件となっています。
要望項目数 | 廃止・縮減項目数 | |
---|---|---|
内閣官房 | 0 | 0 |
内閣府 | 9 | 0 |
金融庁 | 23 | 0 |
復興庁 | 6 | 0 |
総務省 | 8 | 0 |
法務省 | 1 | 0 |
外務省 | 1 | 0 |
財務省 | 8 | 0 |
文部科学省 | 10 | 0 |
厚生労働省 | 23 | 0 |
農林水産省 | 29 | 0 |
経済産業省 | 43 | 0 |
国土交通省 | 38 | 1 |
環境省 | 5 | 0 |
防衛省 | 3 | 0 |
合計 | 207 | 1 |
※財務省「令和5年度税制改正要望の状況について」より
※令和4年(2022年)8月31日付の集計結果です。
※各府省庁の項目数には重複しているものが含まれています。
各省庁からの要望
各省庁から提出された主な要望は、以下のとおりです。
内閣府
- 新型コロナウイルス感染症に関する特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書に係る印紙税の非課税措置の延長
新型コロナウイルス感染症およびそのまん延防止措置によって、経営に影響を受けた事業者の租税負担の軽減を図るため、これらの事業者に対して行う特別貸付けに関して、消費貸借契約書の印紙税の非課税措置の適用期限について特別貸付が延長された場合には、当該期限まで延長するものです。
- 「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」における子育て世帯等への支援に係る非課税措置の拡充
令和4年2月の支給対象見直しにともない、主に離婚家庭等を対象として「支援給付金」(10万円程度)が新たに設けられた場合には、その拡充分について非課税措置が講じられます。
金融庁
- NISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充等
要望では「簡素で分かりやすく、使い勝手のよい制度」にするとしています。岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」を念頭に、個人の金融資産を貯蓄から投資に移行させるねらいがあると見られます。
具体的には、①制度の恒久化、②非課税保有期間の無期限化、③年間投資枠の拡大による弾力的な積立の加納化、④非課税限度額の拡大、⑤制度のつみたてNISAへの一本化(安定的な資産形成を促進する観点から、長期・積立・分散投資によるつみたてNISAを基本としながら、その非課税枠の一部として「成長投資枠(仮称)」を設け、現在の一般NISAの仕組みを取り込んでいく)、⑥つみたてNISAの対象年齢を未成年まで拡大することが検討されています。
そもそもNISAの仕組みが複雑で分かりにくいことが投資の妨げになっているとの考えに基づく提案であり、一般NISAとつみたてNISAを一本化するという案は、現行制度をより簡素化するものと思えます。
- 生命保険料控除制度の拡充
所得税法上の生命・介護・個人年金の各保険料控除の最高限度額を5万円とすること、また、所得税法上の保険料控除の合計定期用限度額を15万円とすることについて、今年も要望が提出されています。
こちらは生命保険業界やそのユーザーからも実現を望む声が多いものの、却下が続いています。
経済産業省
- エコカー減税の見直しおよび延長
当分の間、税率の廃止も視野に入れつつ、ユーザー負担の軽減等を通じて環境性能に優れた自動車のさらなる普及拡大を図ることを目的とし、見直しおよび適用期限の延長を望むものです。
- 中小企業者等の法人税率の特例の延長
中小企業者等に係る法人税率の軽減税率(年800万円以下の所得金額に適用。本則19%・租税特別措置15%)について、適用期限を2年間の延長を望むものです。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)投資促進税制の拡充および延長
- 中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却または法人税額等の特別控除(中小企業経営強化税制)の延長
- 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却または法人税額等の特別控除(中小企業投資促進税制)の延長
それぞれ、適用期限の2年間延長を望むものです。
中小企業者等は地域の経済や雇用を支え、我が国経済全体を発展させる重要な役割を担っていることから、成長の底上げに向けて、中小企業者等の生産性向上やDXに資する設備投資の活発化・加速化をメリハリの効いた形で支援することにより、中小企業の経済活動の活性化を目的としています。
税制改正要望の傾向
円安・資源高等によるコストプッシュ・インフレ下やコロナ禍の中で、中小企業者等を支援し、中小企業の生産性向上やDXに関する投資をメリハリを効かせて後押しするということが令和5年度税制要望の理由としてたびたび挙げられています。
厳しい経済状況の中でも企業の成長を後押しし、サステナブルな経済社会の構築に向けた税制改正への要望の高まりが以前にも増して表れています。
おわりに
今回は、令和5年度の税制改正要望のうち、一般的に身近な税制にポイントを絞って紹介しました。項目名を見るだけでも、税制改正の傾向をより身近に感じていただけるものと思います。
とくに注目度の高いNISAの抜本的拡充については、辻・本郷 税理士法人のYoutubeチャンネル内の動画『【NISA】はどうなる?2024年からの変更点と2023年度の税制改正要望』で解説していますので、ぜひご視聴ください。
法人ソリューショングループ 三木 利展
<関連情報>
辻・本郷【ニュース】【速報】令和5年度(2023年度)税制改正大綱
<参考サイト>
【財務省】令和5年度税制改正要望
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