M&A検討中の中小企業は注目!「事業承継・引継ぎ補助金」の概要
- その他
令和4年(2022年)3月31日に、令和3年度補正予算による「事業承継・引継ぎ補助金」の要項が発表されました。
今回は、補助金と補助対象となる専門家活用の概要と注意点について、当法人が所属する辻・本郷グループの辻・本郷 M&Aソリューション株式会社の寄稿によりご説明します。
事業承継・引継ぎ補助金の概要
本補助金は、M&A取引の成立後に、要件を満たせば買い手および売り手がそれぞれ補助対象経費の3分の2以内、補助上限600万円の補助を受けられるというものです。
過去3回同様の補助金が交付されており、今回で4回目になります。
補助の対象となるM&A取引とは、よく使われる株式譲渡や事業譲渡、会社分割等に加え、廃業も含めたケースも含まれています。
補助対象経費には、M&A取引に係る経費全般がカバーされています。
とくに、M&A専門家報酬として活用されるケースが多いのではないでしょうか。これには、M&Aの支援専門会社等の報酬に加え、弁護士、司法書士、不動産鑑定士、行政書士への報酬も含まれます。
廃業の場合は、廃業費や在庫破棄費、解体費なども補助対象経費に含まれます。
事業承継・引継ぎ補助金の注意点
概要を見ると、ほとんどのM&A取引に係る費用が対象になると思いがちですが、いくつか注意点があります。
対象となる法人
対象となる法人は、中小企業基本法第2条に準じた中小企業等になります(表1)。
また、大企業の100%子会社や孫会社、課税所得の年平均額が15億円を超える法人、医療法人や公益法人等は対象外になります(表2)。
業種分類 | 定義 |
---|---|
製造業その他 | 資本金の額または出資の総額が3億円以下の会社 または常時使用する従業員の数が300人以下の会社および個人事業主 |
ゴム製造業(一部を除く) | 資本金の額または出資の総額が3億円以下の会社 または常時使用する従業員の数が900人以下の会社および個人事業主 |
卸売業 | 資本金の額または出資の総額が1億円以下の会社 または常時使用する従業員の数が100人以下の会社および個人事業主 |
小売業 | 資本金の額または出資の総額が5千万円以下の会社 または常時使用する従業員の数が50人以下の会社および個人事業主 |
サービス業 | 資本金の額または出資の総額が5千万円以下の会社 または常時使用する従業員の数が100人以下の会社および個人事業主 |
ソフトウェア業・情報処理サービス業 | 資本金の額または出資の総額が3億円以下の会社 または常時使用する従業員の数が300人以下の会社および個人事業主 |
旅館業 | 資本金の額または出資の総額が5千万円以下の会社 または常時使用する従業員の数が200人以下の会社および個人事業主 |
対象外のケース | |
---|---|
1 | 資本金または出資金が5億円以上の法人に直接または間接に100%の株式を保有される法人。 |
2 | 交付申請時において、確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者等。 |
3 | 社会福祉法人、医療法人、一般社団・財団法人、公益社団・財団法人、学校法人、農事組合法人、組合(農業協同組合、生活協同組合、中小企業等協同組合法に基づく組合等) |
対象期間
本補助金の対象期間は、2022(令和4)年3月31日から、2023(令和5)年1月31日までです。
具体的には、2023(令和5)年1月31日までに補助対象経費の支払いを終えた費用が対象になります。対象期間開始前にM&A取引の相手方と最終契約を締結した場合や、対象期間終了後に補助対象経費を支払った場合は対象外となります。
相見積について
ファイナンシャルアドバイザー(FA)や、M&A仲介者の費用を補助対象経費にする場合は、原則として相見積が必要です。
ただし、専門家費用がレーマン表(表3)により算出された金額と同等かそれ以下の場合、相見積は不要です。
譲渡額または移動総資産 | 乗じる割合 |
---|---|
5億円以下の部分 | 5% |
5億円超10億円以下の部分 | 4% |
10億円超50億円以下の部分 | 3% |
50億円超100億円以下の部分 | 2% |
100億円超の部分 | 1% |
申請について
本補助金は、原則的に電子申請のみです。申請にはデジタル庁が運営する補助金の電子申請システム「jGrants(Jグランツ)」を使用します。
jGrantsの使用にあたっては、同じくデジタル庁によるサービス「gBizIDプライム」アカウントの申請・発行が必要です。発行には最大3週間程度要するので、余裕をもって取り組むことをおすすめします。
その他、対象外になるケース
以下の場合は交付対象外になりますので、ご注意ください。
- 議決権の過半が移動しないM&A取引である場合
- 親族やグループ会社とのM&A取引である場合
- 事業譲渡であるが、実態として不動産売買である場合
- 経費を銀行振込またはクレジットカード1回払い以外で支払った場合
- 過去の同様の補助金を交付決定された場合(例外あり)
おわりに
民間調査会社の調査によると、全国の後継者不在企業率は60%を超えているようです。コロナ禍で改善されたとはいえ、依然として高水準です。国としても、この状況を打開すべく支援を行っています。
経営の選択肢にM&Aがある方は、今回ご紹介した事業承継・引継ぎ補助金の活用を検討されてはいかがでしょうか。
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<参考サイト>
【事業承継・引継ぎ補助金事務局】事業承継・引継ぎ補助金事務局Webサイト
【デジタル庁】jGrants Webサイト
【デジタル庁】gBizID Webサイト
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