未払賞与を計上する際の留意点
- 税務・会計
費用は会計上、原則発生主義に基づいて認識されます。
したがって、会社は来期以降に支給する賞与に関しては決算日までに発生する役務提供の対価に相当する賞与金額を、合理的に見積ったうえで賞与引当金または未払賞与を計上する必要があります。
今回は賞与を計上する際における注意点をまとめました。
税務上の考え方
会計上の費用は発生主義に基づいて認識されることを、先ほどお伝えしました。
一方で、税務上の必要経費(会計上でいう費用に相当)については債務確定主義により認識されるため会計上の費用の範囲とずれが生じることがあります。
したがって、税務上において未払賞与計上が認められるためには債務が確定していることが求められますが、一般的に債務確定主義における債務確定の判定は以下のとおりです。
なお、賞与引当金については、税法上所定の要件を満たした引当金以外の計上が認められず、全額が損金不算入(税務上の費用とならない)となりますのでここでの紹介は省略します。
- ①その事業年度終了の日までにその費用に係る債務が成立していること
- ②その事業年度終了の日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
- ③その事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること
未払賞与の損金算入要件のポイント
ここで未払賞与を計上するうえで特に留意すべきポイントとなるのは、前項の②「その事業年度終了の日までにその費用に係る債務が成立している」かどうかとなります。
すなわち、計上された未払賞与が期末日時点において会社の確定した債務であることを示せるかどうかが損金算入するうえでの重要なポイントとなります。
例えば、すべての従業員(一部ではないことに留意)に対してその支給額の通知が適切に行われていない場合には、「確定した債務」として認められず損金に算入できないものとされています。
上記に加え、損金経理要件上、翌期開始1か月以内に支給することも必要となりますのでご留意ください。
損金不算入となる意外な落とし穴
また、就業規定等により、法人が支給日に在職する使用人のみに決算賞与を支給することとしている場合においても、期末日時点において実際に支給する金額が定まっていないと考えられ、こちらも「確定した債務」として認められないとされ、損金に算入できない可能性があるのでご留意ください。
そのため、就業規則をはじめとする諸規則の整備の検討も視野に入れた対応が必要となる場合もあります。
なお、この場合には前項における通知を適切に行ったとしても、損金算入はできないと解されますのでご留意ください。
おわりに
今回は未払賞与計上時における間違いやすいポイントを中心に紹介しました。
以上により、未払賞与を損金算入するためには、あらかじめ諸規定や社内ルールを整備し適切に運用していく必要があります。
また、未払賞与に限らず損金算入の可否について不安がある場合には顧問税理士に相談するようにしましょう。
私たち辻・本郷 税理士法人でもご相談を承っていますので、ぜひお問い合わせください。
法人ソリューショングループ 仁平 和宏
- 【国税庁】タックスアンサー No.5387 販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定
- (同上)タックスアンサー No.5350 使用人賞与の損金算入時期
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