辻・本郷 税理士法人

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前払費用と繰延資産について

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前払費用と繰延資産について

早いもので今年も8月になりました。
この春に経理部門に配属された新人の方は、そろそろ出納や記帳業務に慣れてこられて、視野がさらに広がってくる頃と思います。
今日はそんな若手経理担当を念頭に、前払費用と繰延資産について、それぞれの違いや税務の考え方をご説明したいと思います。

前払費用と繰延資産って、なに?

前払費用と繰延資産は、どちらも費用がすでに支出されている点では同じものです。違いは役務の提供、いわゆるサービスの提供が済んでいるかどうかにあります。

前払費用とは

前払費用は、一定の契約に基づいて継続してサービス提供を受けるが、まだその役務の提供がされていない部分に係る支出を計上しています。
法人の支出する費用では、例えば以下が該当します。

 ・保険料、保守料、支払家賃の未経過分

繰延資産とは

一方で、繰延資産は、すでに役務の提供が一部始まっている支出のうち、支出の効果が1年以上に及ぶものを計上しています。
法人の支出の中では、例えば、

 ・創立費、開業費、権利金、社宅の礼金

などがあります。

会計上の繰延資産は

 ・創立費、開業費、株式交付費、社債発行費(新株予約権発行費を含む)

となっています。

他方、法人税法では、法人が支出する費用であって、その効果が支出の日以後1年以上に及ぶもので資産の取得のために要する費用や前払費用を除くものと定義されています。

そのため、会計上の繰延資産よりもより広い概念となっていると言えるでしょう。上述の例でいえば、

 ・権利金、社宅の礼金

などがこれにあたります。

短期前払費用の特例

会計上は法人が支出する費用で、まだ役務の提供を受けていないものについては
役務の提供期間でその効果である収益と費用が対応するように、その費用を各会計期間に分けて計上することとされます。

法人税上も、原則として同じ考え方をしますが、支払日から1年以内に受ける役務提供にかかる費用については、継続適用を要件に「短期前払費用の特例」という制度があります。
支出時に全額費用に計上できますが、その適用可否については、財務への影響等により総合的に判断する必要があります。

消費税の仕入れ税額控除の時期は?

最後に、消費税の仕入れ税額控除の時期を確認しましょう。ここでも役務の提供の時期が鍵となります。

前払費用は、役務の提供がされたタイミングで、すなわち期間の経過に合わせて消費税を認識しますが、
短期前払費用の特例の適用を受けている場合には、その支出のタイミングで仕入れ税額控除をとります。
繰延資産については、資産の譲受や役務提供など内容によってさまざまなタイミングに消費税を認識することとなります。

おわりに

今回は、前払費用と繰延資産について会計や法人税/消費税の取扱いを見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
両者は似て非なるもので、いろいろと考えなければならないことがありました。

この記事をお読みいただいたきっかけに、税務についてもっと勉強してみようと思ってくださった方が一人でもいらっしゃれば、たいへん嬉しく思います。

執筆担当:
法人ソリューショングループ 駒澤 孝美

<参考サイト>
【国税庁】No.5380 短期前払費用として損金算入ができる場合
【国税庁】国税庁 第3節 課税仕入れ等の時期

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