子育て支援と法人税
- 法人税
少子化と労働人口の減少はわが国でも長年の課題となっていますが、2023年4月にこども家庭庁が発足するなど、政府は近年とくに子育て支援に力を入れています。
税制についても一定の要件のもと、子育て支援につながる優遇措置などが取られています。
例えば個人の所得に対して課税される所得税については扶養控除やひとり親控除、個人から個人へ贈与する際に課税される贈与税については結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度があります。
では、法人所得に課税される法人税については子育て支援につながるどのような措置や税制優遇があるのでしょうか。
現行の制度と、今後設置される可能性のある制度をご紹介します。
寄附金の損金算入
特定公益増進法人への寄附金は、一般の寄附金よりも多く損金算入することができます。この対象に認定を受けた社会福祉法人が含まれており、幼稚園や保育園、幼保連携型認定こども園の設置を主たる目的とする法人もこれに当たる可能性があります。
事前に寄附する相手が要件に該当しているか確認する必要がありますが、企業として子育て支援を行いたい場合、支出した金額に対して通常よりも税制優遇を受けることができる可能性があります。
子ども・子育て拠出金
「子ども・子育て拠出金」とは、子育て支援のために充てられる税金のことです。
この拠出金は、会社や事業主から「社会全体で子育て支援にかかる費用を負担する」という考えで、従業員の厚生年金と一緒に徴収されます。社会保険料と一緒に年金事務所(日本年金機構)が徴収していますが、この拠出金は社会保険料ではなく、税金です。
従業員は子ども・子育て拠出金を負担する必要はなく、その従業員を雇っている会社や事業主が、これを納付することになっています。
また、社会保険料は雇用者側と従業員が折半ですが、この拠出金は雇用者側が全額を負担することになっています。負担した金額は全額損金に算入できます。
令和6年度税制改正要望にも盛り込まれた、仕事と子育ての両立や女性活躍支援に積極的な企業への控除率上乗せ措置
現行制度で給与等支給総額が前年度よりも一定割の合で増加※1した場合に増加額の15%※2を法人税から控除できる「賃上げ促進税制」があります。
経済産業省は令和6年度税制改正要望で、仕事と子育ての両立や女性活躍支援に積極的な企業に対する控除率の上乗せ措置を創設するよう要請しました。
具体的な数字ははっきりとはわかりませんが、一般報道によると「子育てサポート企業」※3として厚生労働相の認定を受けた大企業・中小企業に対して、5%の上乗せ措置になると言われています。
※1 大企業は継続雇用者の給与等支給額が前年度比3%以上増加、中小企業は雇用者全体の給与等支給総額が前年度比1.5%以上増加。
※2 他の上乗せ措置もあります
※3 「子育てサポート企業」とは、次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業が申請を行うことにより厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けたものです。
おわりに
昨今、SDGs目標の達成が企業として求められることもありますが、上記のように企業として子育て支援に貢献しつつ、税金面でも優遇を受けらえる可能性があります。
顧問税理士に相談のうえ、受けられる優遇を確認しておきましょう。
法人ソリューショングループ 天野 良
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