辻・本郷 税理士法人

検索する

令和7年の公益法人制度改正で何が変わる? 従来からの変更点を専門家が解説

  • その他
令和7年の公益法人制度改正で何が変わる? 従来からの変更点を専門家が解説

令和6(2024)年12月20日、内閣府公益認定等委員会にて新しい「公益認定等ガイドライン」及び「公益法人会計基準」、並びに「公益法人会計基準の運用指針」が決定されました。

そこで今回は、公益認定等のガイドライン改正でどのような点が変更されたのか、また公益法人会計基準及び同運用指針の適用対象や経過措置期間についてご紹介します。

公益認定等ガイドラインの改正

改正の趣旨

平成20(2008)年4月に公表された公益認定等ガイドライン(以下「旧ガイドライン」)は、公益認定等の審査をするにあたり、認定基準等に関する政令・内閣府令に関して運用を取りまとめたものとして策定されました。

しかしながら、旧ガイドラインには詳細な記述がありませんでした。そのため、審査に際してさまざまな課題や指摘が浮き彫りになったことから、以下3つの観点から抜本的な見直しが行われました。

  • 1.予見可能性の向上
  • 2.認定等に関する行政の判断のぶれやばらつきの抑制
  • 3.事前の一律チェックから事後の重点的なチェックへの転換

従来からの変更点(主なもの)

旧ガイドラインから変更となった内容は下記の通りとなります。

公益目的事業に該当するか否かの判断基準を明記(第2章)

審査における「予見可能性」を高めるため、旧ガイドラインでは参考として位置づけられていた「公益目的事業のチェックポイント」を、「公益性及び不特定多数性の確認のためのチェックポイント」としてチェックポイント毎に判断基準として明記されました。

また、これまで具体的に示されていなかった、公益認定申請審査時に必要とされる書類・証憑類が表形式で整理・明記されました。

公益性及び不特定多数性の確認のためのチェックポイントの判断基準(一部抜粋)

参考:【公益法人information】「公益認定等に関する運用について(公益認定等ガイドライン) 第2章 公益目的事業該当性の判断」p.77

公益法人が遵守すべき公益認定基準を記載(第3章)

「認定等に関する行政の判断のぶれやばらつきの抑制」の観点から、認定法第5条各号に定められている公益認定基準の解釈の内容が拡充されました。

また、改正により追加となった理事監事間の特別利害関係の排除に関する基準(認定法第5条第12号)や外部理事・監事に関する基準(認定法第5条第15号及び第16号)について記載が追加されました。

公益法人が遵守すべき財務規律を記載(第5章)

今般の認定法改正で名称及びその内容が改められた「中期的収支均衡」「公益目的事業比率」「使途不特定財産規制」について、より詳細な説明が記載されました。

また、「透明性の向上」の観点から、行政庁により公表される書類等が整理されました。

行政庁の監督・処分に対する方針を記載(第6章)

「事前の一律チェックから事後の重点的なチェックへの転換」の観点から、これまで内閣府から公表されていた「監督の基本的考え方」(平成20年11月21日)が更新され、ガイドラインに明記されました。

また、従来の立入検査を、実態把握のために定期的に実施する「点検調査」、具体的な監督処分等の必要性の判断を念頭に置いた「重点検査」に区別し、それぞれの実施方針の詳細な説明が記載されました。

認定法:公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(令和7年4月1日施行)

公益法人会計基準及び同運用指針の改正

公益法人会計基準及び同運用指針

改正の趣旨

今般の改正では、内閣府公益認定等委員会内に設置されている「公益法人の会計に関する研究会」での検討にもとづき「本表(貸借対照表・活動計算書等)は簡素でわかりやすく、詳細情報は注記等で開示」の考え方をもとに進められました。

資金提供者を中心とした多様なステークホルダーに対して「わかりやすい財務情報の開示」を通じて、意思決定に有用な情報や法人としての説明責任を果たすための情報提供を主要な目的として定めています。

適用対象法人

以下の法人を公益法人会計等では「公益法人」とし、新公益法人会計基準の適用対象として定めています。

  • (1)認定法第2条第3項に定めのある公益法人(公益社団・財団法人)
  • (2)整備法第123条第1項に定めのある移行法人
  • (3)認定法第7条の申請(公益認定申請)をする一般社団法人または一般財団法人

なお、運用指針において、会計監査人設置法人以外の法人は下記の表に記載の項目については適用または作成しない、あるいは簡便的な方法を適用することができるとされています。

また、移行法人についても、適用対象外とするものと、移行法人における取扱いをするものとが定められています。

対象法人 適用または作成しないことができる項目
・公益社団・財団法人
・公益認定申請をする
 一般社団・財団法人
・資産除去債務に係る会計処理
・税効果会計
・キャッシュ・フロー計算書(認定法第5条第13号及び認定法施行令第6条の定めにより会計監査人を設置する義務がある法人を除く)
・資産及び負債の注記(財産目録を作成している場合に限る)
・賃貸不動産の時価等に関する注記
・財務規律適合性に関する明細(附属明細書)
簡便的な方法を適用することができる項目
・固定資産の減損会計
・退職給付引当金
・収益の認識
対象法人 適用対象外とするもの
移行法人 ・財産目録の作成
・貸借対照表の注記(使途拘束資産(控除対象財産)の内訳と増減額及び残高、指定純資産のうち指定寄附資金の受入年度別残高及び使用見込み)
・財務規律適合性に関する明細(附属明細書)
移行法人における取扱いを適用するもの
・活動計算書における事業収益、事業費の区分
・貸借対照表の注記(会計区分別内訳又は実施事業資産の内訳と増減額及び残高、指定純資産の内訳、純資産間の振替額)
・活動計算書の注記(財源区分別内訳、会計区分及び事業区分別内訳、事業費及び管理費の形態別区分)

整備法:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
認定法施行令:公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行令(令和7年4月1日施行)

従来からの変更点(様式)

上記改正の趣旨から、財務諸表の様式は従来の様式から変更となりました。主要な変更点は下記の表のとおりです。

新公益法人会計基準
(令和6年基準)
主要な変更点
貸借対照表 ・1年基準の導入
・正味財産から純資産への名称変更
・固定資産の表示区分の変更
・純資産の部に「その他有価証券評価差額金」の表示区分が追加
活動計算書 ・名称が「正味財産増減計算書」から「活動計算書」へ変更
・表示形式が財源区分別から活動区分別へ変更
・費用の表示が形態別(科目別)分類から活動(機能)別分類へ変更
財務諸表に対する注記 ・貸借対照表の注記、活動計算書の注記が追加
・平成20年基準で作成していた貸借対照表内訳表、正味財産増減計算書内訳表は注記の1つに変更
・貸借対照表の注記「資産及び負債の状況」を作成することで、財産目録とみなされる附属明細書
附属明細書 ・固定資産の表示区分の変更の影響により「基本財産及び特定資産の明細」から「有形固定資産及び無形固定資産の明細」に名称が変更
・財務規律適合性に関する明細の追加

経過措置期間

新公益法人会計基準は令和7(2025)年4月1日以降に開始する事業年度から原則適用となりますが、令和10年3月31日までの間に開始する事業年度においては、これまでの公益法人会計基準を適用できる経過措置期間が設けられています。

令和10(2028)年4月1日以降開始する事業年度より、すべての適用対象法人が新公益法人会計基準(令和6年基準)に移行することとされているため、この経過措置期間内に適用対象法人は対応の準備をすることになります。

おわりに

公益認定等ガイドラインが3つの観点から大幅に改訂され、各公益法人がより柔軟かつ迅速に事業活動を展開できるような仕組みへ見直されました。それと同時に、法人運営の透明性向上を目的に行政庁による情報公開も始まることとなります

また、公益法人会計基準の改正も行われ、特にこれまでの財務諸表の様式から大きく変更されました。
会計基準の改正については3年間の経過措置期間が設けられておりますので、この期間を十分に活用し、ご自身の法人で作成が必要な書類や取扱いを確認してみましょう。

辻・本郷には公益法人専門の部署があります

私たち、辻・本郷税理士法人には公益法人を専門的に扱う公益法人部があります。
今般の改正に伴うご相談のほか、一般法人の設立、公益認定申請など幅広くご相談を承っており、公益法人及び一般法人の運営を支援しています。

これらに関してお悩みのことがございましたら、ぜひご相談ください。

執筆担当:新宿ミライナタワー事務所
 公益法人部 杉本 慶太
参考サイト・参考文献
関連ページ

サービスに関するお問い合わせ

  • お電話でのお問い合わせの場合、原則折り返し対応となります。直接の回答を希望される場合、お問い合わせフォームをご利用ください。
  • 海外からのお問い合わせにつきましても、お問い合わせフォームをご利用ください。
  • フリーダイヤルへおかけの際は、自動音声ガイダンスにしたがって下記の3つのうちからお問い合わせ内容に沿った番号を選択してください。
    1/国際税務に関するお問い合わせ
    2/医療事業に関するお問い合わせ
    3/その他のお問い合わせ
お問い合わせフォーム 0120-730-706

9:00~17:30(土日祝日・年末年始除く)