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そのビジネス、会社にした方がお得かも!【シリーズ・会社設立】

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そのビジネス、会社に(法人成り)したほうがお得かも!

国や大企業の推進もあり副業がブームとなった昨今、新しく個人でビジネスを始めようと検討中の方や、すでに始められた方が増えているのではないでしょうか。

事業が順調になったころ、個人として事業を続けるか、それとも会社にする(法人成り)かで悩まれる方が多いと思います。

本稿では、税務を中心とした観点から個人にかかる税金と法人にかかる税金を比べ、個人と法人とではビジネスをする上でどちらがよりお得なのかを紐解いていきます。

いま、起業に向けての追い風が吹いている

日本は欧米諸国に比べて会社を立ち上げる起業のハードルが高いと言われています。そのなかで一番の理由が「リスクが高い」ことにあります。(2017年度、中小企業庁調べ)

令和4年(2022年)中に施行される起業に関連する法令改正を次の段落にピックアップしました。起業リスクを回避できるよう法令が整備されているのがわかり、起業に向けて追い風が吹いているような状況だと考えられるのではないでしょうか。

定款認証手数料が値下げになった(令和4年1月1日施行)

従前、一律5万円だった定款認証手数料が資本金100万円以上300万円未満の場合、5万円→4万円に、資本金100万円未満の場合、5万円→3万円と実質値下げになりました。

インターネット上で閲覧できる登記情報から代表者住所が非表示になる(令和4年9月施行)

インターネット上で法人の登記情報を閲覧できる「登記情報提供サービス」において代表者住所を原則非表示とすることとなりました。
DVの被害者を守る観点から、申し出があれば法務局で閲覧できる書面の登記情報からも代表者住所を非表示にすることができるとされています。

起業に失敗した場合の失業手当の受給期間が最大4年に延長される(令和4年7月施行)

失業保険の受給資格のある会社勤めだった人が起業する場合、現行法上は1年である失業手当の受給期間を最大4年まで延長できることになります。

個人にかかる税金はどのくらいか

個人にかかる税金のうち所得税は、表1-1のとおり超過累進税率となっており、所得が高くなると税率も比例して段階的に高くなります。
最大税率時には、課税総所得に対して約6割の税率が課せられることとなります。

表1-1 個人にかかる所得税の税率
所得税
課税総所得金額税率控除額基礎
控除額
以下
1,950,000円5.105%0円480,000円
1,950,000円3,300,000円10.210%97,500円480,000円
3,300,000円6,950,000円20.420%427,500円480,000円
6,950,000円9,000,000円23.483%636,000円480,000円
9,000,000円18,000,000円33.693%1,536,000円480,000円
18,000,000円40,000,000円40.840%2,796,000円480,000円
40,000,000円45.945%4,796,000円480,000円
表1-2 個人にかかる住民税の税率
住民税
課税総所得金額税率基礎
控除額
以下
1,950,000円10%430,000円
1,950,000円3,300,000円10%430,000円
3,300,000円6,950,000円10%430,000円
6,950,000円9,000,000円10%430,000円
9,000,000円18,000,000円10%430,000円
18,000,000円40,000,000円10%430,000円
40,000,000円10%430,000円
表1-3 個人にかかる事業税の税率
事業税
※第一種事業
課税総所得金額税率基礎
控除額
以下
1,950,000円5%2,900,000円
1,950,000円3,300,000円5%2,900,000円
3,300,000円6,950,000円5%2,900,000円
6,950,000円9,000,000円5%2,900,000円
9,000,000円18,000,000円5%2,900,000円
18,000,000円40,000,000円5%2,900,000円
40,000,000円5%2,900,000円

※青色申告特別控除、人的控除、保険料控除等は考慮外としています。

法人にかかる税金はどのくらいか

一方で、法人にかかる法人税率は表2のとおりです。
法人税、地方法人税、住民税、事業税、特別法人事業税からなる実行税率は最大税率時でも課税所得に対して3割程度であるため個人の最大税率時と比べて少額の金額の納税で済むことになります。

表2 会社にかかる法人税等の税率
法人 ※中小法人で標準税率の場合
法人税、地方法人税、住民税、事業税および特別法人事業税
課税所得金額実行税率
※東京都の場合
以下
4,000,000円21.36%
4,000,000円8,000,000円23.17%
8,000,000円33.58%

その他の比較事項

その他、個人と法人で比較検討すべき事項を表3にまとめました。項目によって個人と法人のどちらが有利かそれぞれ確認していきましょう。

表3 個人と法人の比較検討表
比較事項個人法人
設立費用0円242,000円
※資本金300万円以上の株式会社の場合
赤字時税額0円70,000円
※東京都の場合
事業年度暦年任意
代表者への給与経費NG経費OK
配偶者への給与専従者給与として経費OK
※青色のみ。配偶者控除と併用不可
経費OK
代表者への退職金経費NG
※小規模企業共済の利用により積立可
経費OK
代表者の社会保険加入不可強制加入
代表者の生命保険生命保険料控除で最大12万円全額もしくは一部経費OK
減価償却強制任意
赤字の繰り越し3年(青色)10年(青色)
事業開始時消費税原則2期間免税原則2期間免税
※法人成り時も新たに原則2期間免税

シミュレーションによる損益分岐点の比較

個人にかかる所得税額等・法人にかかる法人税額等の比較

まずは、課税所得金額が個人と法人とで同額であった場合の個人にかかる所得税額等と、法人にかかる法人税額等を表4で比較しましょう。

表4 個人と法人の概算税額比較表
課税所得金額個人法人
所得税額等法人税額等
1,000,000円86,000円283,600円
2,000,000円237,000円497,200円
3,000,000円424,200円710,800円
4,000,000円705,700円924,400円
5,000,000円1,059,900円1,156,100円
6,000,000円1,414,100円1,387,800円
7,000,000円1,768,300円1,619,500円
8,000,000円2,144,400円1,851,200円
9,000,000円2,529,200円2,187,000円
10,000,000円2,986,000円2,522,800円

※住民税均等割として個人5,000円、法人70,000円を合算しています。
※人的控除の差額調整額として個人の税額から2,500円控除しています。

課税所得金額500万円から600万円の間で、それまでの所得税額等より法人税額等が高額となっている状態が逆転しているのがわかるかと思います。
課税所得が高額になるにつれ所得税額が加速度的に高額となっていき、法人税額等との税額の差が広がっていきます。

代表者に年額300万円を支給した場合の税金を比較

つぎに、法人の代表者に毎月25万円・年額300万円の役員報酬を支給した場合の税金を見てみましょう。
法人の所得に対して法人税が課税されるのに加え、代表者の給与所得に対して所得税が課せられます。

表5の法人にかかる税額等と個人にかかる所得税額等を比較した場合、課税所得200万円から300万円の間で法人にかかる税額等が個人にかかる所得税額等より高額だった状態が逆転しているのがわかるかと思います。

役員報酬にかかる所得税につき、給与所得控除の恩恵を受けられるため表4の個人と法人の比較時より課税所得が低い地点に損益分岐点がきます。

つまり、個人のビジネスで300万円の課税所得があるのであれば起業して役員報酬を300万円取得した方が税金上はお得ということになります。

表5 役員報酬300万円の場合の個人法人の概算税額比較表
課税所得金額会社で代表者に役員報酬300万円支給した場合個人の場合
所得税額等法人税額等税額等所得税額等
1,000,000円240,100円70,000円310,100円86,000円
2,000,000円240,100円70,000円310,100円237,000円
3,000,000円240,100円70,000円310,100円424,200円
4,000,000円240,100円283,600円523,700円705,700円
5,000,000円240,100円497,200円737,300円1,059,900円
6,000,000円240,100円710,800円950,900円1,414,100円
7,000,000円240,100円924,400円1,164,500円1,768,300円
8,000,000円240,100円1,156,100円1,396,200円2,144,400円
9,000,000円240,100円1,387,800円1,627,900円2,529,200円
10,000,000円240,100円1,619,500円1,859,600円2,631,000円

※住民税均等割として個人5,000円、法人70,000円を合算しています
※人的控除の差額調整額として個人の税額から2,500円控除しています
※社会保険料は考慮外としています

おわりに

辻・本郷 税理士法人内には、起業のプロフェッショナルチームである会社設立センターがあります。
年間300~400社の起業をお手伝いさせていただくなかで蓄積されたノウハウで、会社の創業期における最高のパートナーを目指しています。

会社の設立でお悩みの方、今回の記事が少しでも気になった方は、お気軽に電話や「メールでお問い合わせ」からご相談やご質問をいただければ幸いです。

執筆担当:京都事務所 会社設立センター 若林 義明

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