馬券がなんと大当たり!税金の申告はどうする?
- 所得税
競馬は100円から賭けることができる手軽なギャンブルの一つです。
以前は競馬場や場外馬券場「ウィンズ」でしか馬券の購入ができませんでしたが、コロナ以降はインターネットや電話でも購入できるようになりました。
最近は「馬がかわいい」と女性人気が上昇したり、競馬ゲーム『ウマ娘プリティダービー』の隆盛により若い世代からも注目を集めています。
利益を得るためにデータ分析をしたり、好みの騎手で一点賭けしたりと楽しみ方もさまざまです。
さて、こんな風に競馬を楽しんでいたところ、万馬券が当たってしまいました! うれしくて周りに自慢したり、友達にごちそうしたり…まず先にお金の使いみちを考えてしまいますが、でも、ちょっと待って下さい。
ドドーンと入ってきた競馬の利益に対する税金って、どうなるのでしょうか。
もし大勝ちしても、黙っていれば税務署にバレないのでしょうか? この記事で確認しましょう。
競馬で得た利益は確定申告が必要?
競馬で得た利益は「一時所得」または「雑所得」に区分され、確定申告の対象になります。
ただし、必ず確定申告をしなければならないわけではありません。その条件は後半でお伝えします。
すぐに知りたい方は「いくらまでなら確定申告は必要ない?」へジャンプしてください。
まずは、確定申告における「一時所得」「雑所得」とはなにかを順にご説明しましょう。
一時所得とは
一時所得とは、クイズの賞金や懸賞金などの臨時収入のことです。競馬をはじめとするギャンブルで得た利益も原則として一時所得になります。
計算式は以下の通りです。
一時所得の課税所得額=(収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額※)×1/2
※特別控除額は最高で50万円
収入金額は競馬で得た利益、収入を得るために支出した金額はその当たり馬券の購入費用です。
具体的に計算してみましょう。
具体例
競馬の1年間の払戻金 | 1,000万円 | |
馬券購入費(1年分) | 当たり馬券 | 30万円 |
はずれ馬券 | 1,500万円 |
(1,000万円-30万円-50万円)×1/2=460万円
一時所得の場合、この460万円が課税対象額となります。
はずれ馬券は経費にならない
「1年間通して馬券を購入し、1,000万円儲かったかもしれないけど1,500万円も外しているのだから、トータルで考えると損しているので申告しなくてもいいのでは?」
…と思いがちですが、はずれ馬券は経費とすることはできません。
はずれ馬券の購入費用も経費とすることができるようにするためには、「一時所得」ではなく「雑所得」として認められないといけないのです。
その雑所得とは、何でしょうか。
雑所得とは
雑所得とは、所得税における9種類の所得(利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡・一時)のいずれにも当たらない所得をいいます。
たとえば公的年金等や副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。
計算式は以下の通りです。
雑所得の課税所得額=総収入金額-必要経費
競馬の利益が雑所得に該当する場合具体的な計算を先程の例で行うと
1,000万円-(30万円+1,500万円)=△530万円
雑所得に該当すれば、当たり馬券だけでなく、はずれ馬券も必要経費とすることができます。
雑所得の金額の計算上生じた損失の額530万円は他の所得の金額と損益を相殺することはできません。
雑所得だけであれば所得は0円となります。
競馬の利益を一時所得ではなく雑所得とするには、以下が重要になります。
営利を得るための努力を反復かつ継続して行っているかどうか
2017年の最高裁判例※などをみますと、競馬の払戻金を業務として営利を得るために行っていると認められるのはかなり難しいといえます。
たとえば、年間数億円の馬券代を支払う、競馬の予想ソフトを作成してほぼすべてのレースの馬券を購入するなど、普通の人にはとても真似できないような馬券の買い方をしていた事例ばかりです。
はずれ馬券を経費にするのは稀なこととお考えください。
つまり、競馬で得た利益はほとんどが一時所得と考えるのが無難です。
※【参考】国税庁「競馬の馬券の払戻金に係る課税について」
いくらまでなら確定申告は必要ない?
では、すべて確定申告が必要かというと、そうでもありません。
「そんなに儲けているわけではないのに確定申告が必須なの…?」と思ったあなたに朗報です。
たとえば、会社にお勤めで年末調整を受けた給与所得のある方であれば、たまたま競馬で得た利益が1年間で90万円以下のときは確定申告はいりません。
ただし、医療費控除やふるさと納税(寄付金控除)などの適用を受けるために確定申告をする場合は、競馬で得た利益も全部申告しないといけませんので注意してください。
大勝ちしたことを黙っていても、国税庁には伝わっている
2017年の最高裁判決後に、会計検査院から競馬の払戻金にかかる利益の未申告について指摘をされた国税庁は、その後ホームページなど※で納税についての注意喚起を行っています。
※【参考】国税庁「国税庁からのお知らせ 公営競技の払戻金の支払を受けた方へ」
また、JRAのホームページでも払戻金は税法上は課税対象となるケースがあり、確定申告を要する場合があることをうたっています。
現在、WIN5をPAT(インターネット上の馬券購入サービス)で購入し、1口1,000万円以上の払戻金を受けた方についてはJRAから国税庁に連絡することになっています。
つまり、黙っていたとしても国税庁に筒抜けなのです。
こうしたことから、高額配当を受けられた方は必ず確定申告しましょう。
SNSに予測やその結果を投稿していれば、なおさら情報は筒抜け
また、よく言われていることではありますが、SNSなどに競馬予測や予測結果を公表している方などはすぐに競馬でどれだけ儲けたかわかります。
お笑い芸人・インスタントジョンソンのじゃいさんが2020年に6,000万円以上の払戻金を受けた分について、追徴課税されたニュースが大きく取り上げられたことは記憶に新しいと思います。
じゃいさんは確定申告はきちんと行っていたものの、競馬の利益について「一時所得」ではなく「雑所得」で申告し、はずれ馬券を経費にしていたのが問題になったようです。
じゃいさんには競馬に関する著書もあり、YouTubeなどで競馬情報を発信するなど、かなり競馬に注力していたと見受けられますが、国税庁は「営利を得るための継続的反復的な行為」とは判断しなかったようです。
追徴課税は無申告加算税・重加算税など、思った以上にペナルティがかかります。正しく申告して、大当たりの喜びをみんなで分かち合いたいですね。
確定申告時にはどうすればいいの?
払戻金の支払を受けた場合には、開催日・開催場・レース・受取額・当たり馬券の投票額をノートなどにまとめておきましょう。
また、国税庁ホームページ※では、集計用のエクセルも用意されています。
※【参考】国税庁「公営競技の払戻金の支払を受けた方へ」
集計が終わりましたら、以下の順に計算します。
① 払戻金に係る年間受取額を集計
② 払戻金に係る年間投票額を集計
③ ①-②-50万円した金額を計算
④ ③×1/2した金額を計算
[計算の結果、④が≦0の場合]確定申告の必要はありません。
[計算の結果、④が>0の場合]一時所得の欄に④で算出した金額を入力して確定申告を行いましょう。
おわりに
競馬の利益は基本的に「一時所得」として申告する必要がありますが、趣味でGⅠレースに賭けている程度では確定申告する機会はそう多くはないかもしれません。
ですが、いつ万馬券が当たるかもしれないのが競馬の醍醐味。
馬券長者になった時を夢見て、その時には確定申告もお忘れなきよう今日も競馬を楽しみましょう!
- 【国税庁】「タックスアンサー No.1490 一時所得」
- 【国税庁】「タックスアンサー No.1500 雑所得」
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