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貸倒債権、どうやって処理しますか?

  • 国税・地方税

貸倒債権、どうやって処理しますか?

2020年から続く新型コロナウイルス感染症拡大による経済への影響により、残念なことに倒産する企業が後を絶ちません。
倒産に限らず、資金繰りが悪化している企業も多いかと思います。

もし取引先から債権を回収できそうにない状況におちいった場合、どのような処理が求められるのでしょうか?
今回は貸倒債権の処理方法を状況別に確認したいと思います。

会計と税務の違い

貸倒れが懸念される債権が生じた場合の処理方法は、会計と税務で異なります。
これは、会計と税務の目的の違いによるものです。

会計は利害関係者への情報提供を目的とすることから、要件が抽象的なイメージですが、
税務は公平な課税を目的とすることから、要件が具体的になるイメージです。

具体的には、下表のとおりです。

会計(金融商品に関する会計基準 第27項、28項)

区分定義
(第27項)
貸倒見積高の算出
(第28項)
一般債権経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権過去の貸倒実績率等合理的な基準
貸倒懸念債権経営破綻の状態には至っていないが、
債務の弁済に重大な問題が生じているかまたは生じる可能性の高い債務者に対する債権
財務内容評価法
または
キャッシュフロー見積法
破産更生債権等経営破綻または実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権財務内容評価法

税務(法人税法基本通達9-6-1、9-6-2、9-6-3)

区分債権種類貸倒の事実損金算入額と時期損金経理
法律上の貸倒れ金銭債権・更生計画認可の決定または再生計画認可の決定
・特別清算に係る協定の認可の決定
・法令によらない関係者間の協議
切り捨てられることとなった金額を
事実の発生した事業年度に
不要
債務超過期間が継続し、金銭債権の弁済を受けることができない場合書面により明らかにされた免除額を書面の交付の事実が明らかになった事業年度に
事実上の貸倒れ金銭債権債務者の資産状況等から全額が回収できないことが明らかになった場合債権金額全額を全額が回収できないことが明らかになった事業年度に必要
形式上の貸倒れ売上債権のみ取引停止後1年以上経過
または
売上債権が取り立てに要する費用を下回り、債務者に督促したが弁済がない場合
備忘価額を控除した残額を

取引停止後1年以上経過した日以後の事業年度に
または
弁済がない日以後の事業年度に

必要

よくある誤解例

【誤解例1】破産手続廃止決定があったため、税務調整の過程で減算処理を実施する

損金経理する必要があります。税務調整での減額は認められません。

破産手続き廃止決定の場合は、法律上の貸倒れではなく、事実上の貸倒れとして処理する

法律上の貸倒れは、会社更生法、民事再生法、会社法の定めによる債権の切り捨てを規定しています。
これに対して、破産手続は「破産法」に基づき開始されるため、法律上の貸倒れには該当しません。
破産手続の場合は、事実上の貸倒れに該当すると解釈できるため、損金経理をしない限り、所得を減額することはできません。

【誤解例2】通常の得意先に資金を貸し付けていたが取引停止となったため、売上債権と貸付金を全額損金経理した。

貸付金は損金経理できません。また、債権全額ではなく備忘価額控除後の債権残高を処理します。

形式上の貸倒れが認められる債権とその金額

形式上の貸倒れは、売上債権のみに認められており、貸付金や未収金を貸倒処理することはできません。また、備忘価額を控除した金額を損金経理しなければならない点も注意が必要です。

おわりに

直近で取引が停止した得意先があれば、形式上の貸倒要件に該当する可能性もありますので、
債権管理台帳等を一度ご確認いただくことで、税務上の便益を享受できるかもしれません。
また、与信管理の仕組みを構築することで、貸倒れリスクのある財務状況の危うい会社との取引を回避することもできます。

コロナ禍で不安定な今だからこそ、会社の管理体制の強化を検討してみてはいかがでしょうか。

執筆担当:新宿ミライナタワー事務所 法人ソリューショングループ

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