海外勤務者(従業員)の出国時における源泉所得税の取り扱いについて
- 法人税
前回のトピックスでは、海外勤務者が一時帰国する場合における給与の取り扱いについてご紹介しました。
新型コロナウイルスワクチンの普及等にともない、各国で入国制限の緩和や入国後の待機期間の短縮が進められており、今後は徐々に日本から海外への出張や出向等も再開されていくかと思います。
そこで、今回は従業員の出国時における給与と源泉所得税の取り扱いについてご紹介します。
源泉所得税の取り扱い
所得税では居住者と非居住者という区分を設け、その区分ごとに源泉所得税の取り扱いが定められています。
海外への出張や出向等で出国した従業員は、その出張・出向等の期間が1年未満である場合には居住者のままとなり、1年以上である場合には出国の翌日から非居住者という扱いになります。
居住者・非居住者の区分に応じた源泉所得税の取り扱いは以下の表の通りです。
居住者のままである場合は、これまで通りすべての給与について源泉徴収が必要となり、非居住者となる場合は、国内勤務分の給与について源泉徴収が必要になるというのが原則です。
区分 | 給与の種類 | 源泉徴収の要否 | 源泉徴収税率 | |
---|---|---|---|---|
① | 居住者 | 国内勤務による給与 | 必要 | 源泉徴収税額表により計算 |
② | 国外勤務による給与 | 必要 | 源泉徴収税額表により計算 | |
③ | 非居住者 | 国内勤務による給与 | 必要 | 20.42% |
④ | 国外勤務による給与 | 不要 | ― |
出国により非居住者となる場合について、具体的なケースをいくつかご紹介します。
ケース1
・11月20日に海外勤務2年の予定で出国
【給与計算期間】10月1日~10月31日
【給与支給日】11月25日
給与計算期間中は国内で勤務していましたが、海外勤務が1年以上のため11月21日から非居住者となり給与支給日時点では非居住者に該当するため、給与について20.42%の税率で源泉徴収が必要となります。(表内③)
ケース2
・11月20日に海外勤務2年の予定で出国
【給与計算期間】11月1日~11月30日
【給与支給日】12月25日
海外勤務が1年以上のため11月21日から非居住者となり、給与計算期間のうち11月1日~20日分は国内勤務によるもの、21日~30日分は国外勤務によるものとなります。
原則では国内勤務分の給与について20.42%の税率で源泉徴収が必要となります(表内③)。
しかし、給与計算期間の中途において非居住者となった者に支払う給与で、計算期間が1カ月以下であるものについてはその全額が国内勤務分である場合を除いて源泉徴収を不要とする例外が設けられているため、11月1日~20日分も含めて源泉徴収は不要となります。
ケース3
・11月20日に海外勤務2年の予定で出国
【賞与計算期間】7月1日~12月31日
【賞与支給日】1月25日
海外勤務が1年以上のため11月21日から非居住者となり、賞与計算期間のうち7月1日~11月20日分は国内勤務によるもの、11月21日~12月31日分は国外勤務によるものとなります。
計算期間が1カ月以下ではありませんのでケース2の例外の適用はなく、国内勤務分の給与については20.42%の税率で源泉徴収が必要となります(表内③)。
なお、国内勤務分の給与は期間に応じた按分計算により求めます。
おわりに
今回は代表的なケースを3つご紹介しましたが、出張・出向等の状況や給与・賞与の計算期間・支給時期等は各社の状況に応じて多岐にわたると思います。
お困りの際は、私たち辻・本郷 税理士法人へお気軽にお問い合わせください。
法人ソリューショングループ 赤尾 健
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