段取りが肝心!医療法人設立のためのスケジュールと手続き
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税負担の軽減や、分院を設立し事業規模の拡大を図るなどのメリットを考え、医療法人化を検討されている開業医の先生もいらっしゃると思います。
医療法人の設立は自治体ごとに申請のスケジュールが異なり、一般の法人設立と比較すると難易度が高く、時間を要します。
法人化を決定したら、入念に準備を行い、段取りよく手続きを進めていくことが大切です。
まずはどんなスケジュールで進め、どんな手続きが必要なのかを知るところからはじめましょう。
本稿では、医療法人を設立するためのスケジュールと手続きについてご案内します。
医療法人の設立手順
設立までの手順は、設立認可前の準備~登記までの段階と、設立認可後の段階に分けられます。
【設立認可前~登記まで】…おもに都道府県で行う手続き
1. 事前相談(目安:2~3か月)
医療法人設立では、本申請の前に仮申請手続きを行います。仮申請期間前の段階では以下の項目を決定し、仮申請に備えます。
- 医療法人の名称の決定
- 社員の決定
- 役員(理事長・理事・監事)の決定
- 仮申請書類(素案)の作成、添付書類の準備※
※参考:提出書類一覧(東京都の場合):東京都保健医療局「医療法人設立認可申請 必要書類一覧表」
2. 仮申請期間(目安:3~4か月)
ほとんどの自治体で年2回、設立認可の申請を行うことができます。
仮申請期間では、以下の手続きが必要になります。
- 事前エントリー ※自治体によっては不要な場合あり
- 仮申請書類(素案)の提出
- 本申請までに仮申請書類の補正
- 追加書類の作成、提出
3. 本申請~設立認可~登記(目安:2~3か月)
本申請期間では、以下の手続きが必要になります。
- 書類押印手続きの手配(各役員、銀行、大家、リース会社等)
- 押印書類を収集後に本申請書類の提出
- 認可書交付後、法務局で法人設立登記
参考までに、東京都の場合では、例年以下のようなスケジュールで実施しています。
第1回 | 申請書の受付期間 | 8月中旬~下旬 |
認可書の交付 | 2月下旬 | |
第2回 | 申請書の受付期間 | 3月中旬~下旬 |
認可書の交付 | 8月下旬 |
設立認可までのスケジュールとしては、まず事前相談を経た上で、提出期限までに必要書類を揃えて申請します。
その後、各都道府県の担当部署で書類審査が行われ、補正や追加資料の提出を求められることもあります。審査を経て問題がなければ、認可予定日に認可の通知がなされる流れです。
補正や追加資料の提出を求められる事態が起きてもあわてることがないよう、余裕を持ったスケジュール管理が大切になります。
【設立認可後】…おもに保健所・厚生局で行う手続き
1. 法人設立登記
認可書の交付日から2週間以内に法務局で登記手続きを行います。登記申請書、定款、認可書などの必要書類を揃えて申請します。
2. 開設許可申請(目安:1か月ほど)…保健所
医療法人の開設にあたり、病院・診療所等の開設許可を都道府県管轄保健所に申請します。
同時に個人開設の病院・診療所等の廃止届の申請も必要になります。申請書や各種添付書類を準備し、認可後は遅滞なく手続きを進めましょう。
3. 保険医療機関の指定(目安:1~2週間ほど)…厚生局
健康保険法による保険医療機関としての指定を受けるため、保険医療機関指定申請書を各都道府県を通じて地方厚生局へ申請します。
保険診療を行っている場合は同時に保険医療機関廃止届(個人)の申請も必要になります。法人の登記事項証明書等が必要です。
4. 入会届等の提出
日本医師会、各都道府県医師会への入会届、医師賠償責任保険への加入等、関連団体への手続きも忘れずに行いましょう。
5. 届出・契約等
銀行口座の開設、電話・ガス・水道等の契約、税務署への届出など、医療法人として必要な実務的な手続きを進めていきます。
以上がおもな流れになりますが、認可後は期限が定められている手続きもあるので、早めに取り組むことをおすすめします。
医療法人化の要件
医療法人化をするためには、いくつかの要件(人的要件、施設・設備要件、資産要件など)を満たす必要があります。
1. 人的要件
【社員要件】
- 社員(社団医療法人の場合は社員、財団医療法人の場合は評議員)は3名以上必要です。
- 社員は医師や歯科医師等の医療関係者である必要はなく、事務職員等の一般の方でも構いません。
- 社員の互選で理事を選出し、理事の互選で理事長を選出します。
【役員要件】
- 役員は理事3名以上(理事長含む)と監事1名以上の構成が必要です。
- 理事のうち1名は理事長として医療法人を代表します。
- 理事長は原則として医師又は歯科医師の資格を有する者である必要があります。ただし、一定の要件を満たす場合は医師・歯科医師以外でも可能です。
- 監事は理事を兼務することはできません。
- 役員の欠格事由(破産手続開始決定を受けている者、禁錮以上の刑に処せられた者等)に該当しない者である必要があります。
役員の任期は2年以内の定めがあります。定款で定めた期間となり、報酬は定款で定めるか社員総会の決議により定めることになります。
また、理事会・社員総会の開催、議事録の作成など、法令や定款に則った適切な運営を行っていくことが求められます。
2. 施設・設備要件
【建物】
- 建物は医療法人の所有であるか、賃貸借契約等に基づき使用権限を有している必要があります。
- 医療法人の事務所は、法人の主たる事務所として登記簿上に登記されている必要があります。
- 医療施設の構造設備は、医療法施行規則に規定する基準を満たすものである必要があります。
【医療機器等】
- 医療法人が開設する病院や診療所には、その診療科名に応じた医療機器等の備品を具備する必要があります。
- 具体的な医療機器の基準は、各都道府県医療機器等基準によって定められています。
【施設管理】
- 医療法人が開設する医療施設は、適切な管理体制のもと、安全かつ衛生的に管理運営される必要があります。
- 施設の保守点検、医療機器の保守点検及び医薬品等の管理を適切に行う必要があります。
- 医療法人の事務所には、帳簿等の法人関係書類や財務諸表等を備え置き、適切に管理する必要があります。
以上のように、医療法人として認可を受けるためには、適切な施設・設備を具備し、適切に管理運営していく必要があります。
例えば、東京都では、医療施設の具体的な構造設備基準については、医療法施行規則や東京都の条例等で細かく規定されています。
- – 病院の施設基準(東京都医療法施行条例)
- – 診療所の構造設備基準(東京都医療法施行規則)
- – 医療機器の基準(東京都医療機器等基準)
など、法令を確認しながら、クリアすべき要件を整理していくことが重要です。
開設しようとする診療科によって必要な施設・設備は異なりますし、既存の施設を使うのか新設するのかによっても対応は変わってきます。東京都福祉保健局の医療法人担当部署に相談したり、医療法人の設立支援に詳しい専門家に依頼したりしながら、十分な準備期間を設けて取り組むことをおすすめします。
3. 資産要件
資産要件は以下となります。
- 年間支出予算の2か月分の運転資金があること
- 個人時代の設備を買い取る場合は別途そのための資金があること
開業医の時に使用していた設備などは、設立した医療法人が買い上げる形になります。
また、個人で契約していた土地建物の賃貸借契約や医療機器のリース契約なども、法人名義に変更します。
おわりに
医療法人化のスケジュールとしては仮申請から認可まで4~6ヶ月、開設までにさらに1~2ヶ月かかるのが一般的です。申請書類の不備で認可が下りず、スケジュールが遅れるケースもあります。
余裕をもって計画を立て、事前の入念な準備が必要となるため、会計事務所等の専門家にサポートを依頼されることをおすすめします。
医療法人化は辻・本郷 税理士法人へご相談ください
私たち辻・本郷 税理士法人には医療法人化の手続きに特化した部署があり、ご相談を随時お受けしております。
医療法人設立支援は、グループ会社である「本郷メディカルソリューションズ株式会社」と連携し、全国1,000以上の顧問先様をはじめとして毎年20~30件の案件実績があります。
お困りの際にはぜひお問い合わせください。
ヘルスケア事業部 齋藤 陽太
【東京都保健医療局】「医療法人設立の手引」
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