インボイス制度下での免税事業者からの仕入に係る消費税の影響
- 消費税
今回は、免税事業者からの仕入が多い課税事業者がインボイス制度導入により受ける影響を考察します。
納める消費税への影響
まずは、納める消費税への影響を確認しましょう。消費税は以下の算式で求められます。
納める消費税=売上に係る消費税(仮受消費税)― 仕入に係る消費税(仮払消費税)
インボイス制度導入前は免税事業者への支払いについて仕入に係る消費税が認められていました。
導入後は上記の仕入に係る消費税を、売上に係る消費税から引けなくなりますので、納める消費税が増加することになります※。
※免税事業者からの仕入れに係る消費税については経過措置があり、段階的に引ける金額が減少します。
参考:【国税庁】「適格請求書等保存方式の概要」
損益計算書への影響
インボイス制度の導入によって損益計算書の当期純利益に及ぼす影響を確認します。
下記の通り、納める消費税が増加した分だけ当期純利益が減少します。
①インボイス制度導入前
売上(税込) 1,100,000 | 仮受消費税 100,000 | 売上(税抜) 1,000,000 |
仕入(税込) 550,000 | 仮払消費税 50,000 | 仕入(税抜) 500,000 |
納める消費税 50,000 | 当期純利益 500,000 |
②導入後
売上(税込) 1,100,000 | 仮受消費税 100,000 | 売上(税抜) 1,000,000 |
仕入(税込) 550,000 | 仮払消費税 0 | 仕入(税抜) 550,000 |
納める消費税 100,000 | 当期純利益 450,000 |
免税事業者との値下げ交渉は慎重に
納める消費税は増加し、当期純利益が減少するとなれば、会社としては取引先である免税事業者と仕入価格の値下げ交渉を行うことが想定されます。
両者で協議して合意のうえでの値下げであれば問題ありませんが、一方的な通告による値下げは違法とされるおそれがあります。
すでに公正取引委員会から注意を受けた事例も存在しますので、ご留意いただければと存じます。
参考:【公正取引委員会】「インボイス制度の実施に関連した注意事例」
おわりに
実際に値下げ交渉を行う場合には、交渉担当は経理部門以外(営業部門など)になるケースがほとんどかと思います。
そうしますと、いつものように税金=経理部門で完結とはなりません。
インボイス制度については、部門を超えた連携が必要になるかと存じますので、全社的に情報共有して対応いただくのが望ましいと勘案します。
辻󠄀・本郷 税理士法人はインボイス制度対応のサポートを行っています
辻󠄀・本郷 税理士法人では2023年10月から施行されるインボイス制度について、グループ会社との連携によりインボイス制度対応のサポートを行っております。
また、関連セミナーを開催するなど制度の理解と普及に努めています。お困りの際には、ぜひお問い合わせください。
法人ソリューショングループ 田端 幸治
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