業績連動給与によるメリットと要件
- 法人税
2023年も残りわずかとなってきました。
年末を迎え、多くの方が気にかけていることといえば年末のボーナスではないでしょうか。
厚生労働省の調査によると、一般に夏と冬の2回にボーナスが支給されるケースの多くが、夏より冬のボーナスのほうが多い傾向にあるとのことです。
また近年、企業によっては固定額ではなく業績に応じてボーナスを決定できるような柔軟な報酬設計を導入したいというニーズもあり、より一層の関心事となっていると考えられます。
今回はそんなボーナスに関連する制度のひとつとして、業績連動給与を紹介します。
業績連動給与とは?その2つのメリット
業績連動給与とは、役員報酬を企業の業績と連動させて支給する制度のことです。
業績連動給与を導入することで、経営者に対して中長期の企業価値を生み出すインセンティブを与えることができます。
それと同時に、柔軟な報酬設計が可能になり優秀な人材を企業内外から確保しやすくするメリットなどもあります。
また業績連動給与の他に役員報酬に関する制度として、事前確定届出給与や定期同額給与もあります。
それぞれの違いを下の表にまとめました。
定期同額給与 | 一定期間(1か月以内)ごとに同額で支給するもの |
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事前確定届出給与 | 事前の税務届出により、所定の時期に確定額を支給するもの |
業績連動給与 | 一定の要件のもとで業績に連動して支給するもの(後述の要件を満たす必要あり) |
業績連動給与を導入するための要件(金銭報酬を前提として)
業績連動給与を導入するためには、まず算定指標を定め、算定方法を有価証券報告書等により開示する必要があります。具体的には以下の要件が求められます。
対象企業 | 内国法人(同族会社については、非同族会社による完全支配関係がある法人に限る) |
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算定指標 | ・利益の状況を示す指標 ・株式の市場価格の状況を示す指標 ・売上高の状況を示す指標(他の指標を同時に用いる場合のみ利用可能) |
算定方法 | 確定額を限度として算定指標に基づく客観的なものであり、かつ他の算定方法と同様であることなど |
その他要件 | ・適正な決議を経ていること ・算定方法が有価証券報告書等により開示されていること(同族会社の場合には完全支配関係のある会社の有価証券報告書等に記載されていること) ・損金経理されていること ・金額が確定した日の翌日から一月を経過する日までに支給すること、など |
2017年度税制改正で拡充された業績指標の範囲
以前は「利益連動給与」として使用できる指標が、「利益の状況示す指標」に限定されていましたが、2017年度税制改正により「業績連動給与」と名称を変え「株式の市場価格の状況を示す指標」や「売上の状況を示す指標」が追加されました。
これによって柔軟な報酬設計が行えるようになり、具体的には以下の例示にあるような指標も用いることができます。
利益の状況を示す指標 | 営業利益、経常利益、EPSといった財務指標やROA、ROE、EBITDAなどの経営分析指標 |
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株式の市場価格の状況を示す指標 | 所定の期間又は所定の期間における株価やTOPIX、日経平均株価等といった株価インデックスと対比した騰落率など |
売上の状況を示す指標 | セグメント売上高、売上高増減額など(ただし、上記の利益や株価の状況を示す指標と同時に用いる場合に限ります) |
【経済産業省】『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-(2023年3月時点版)』より抜粋
おわりに
今回は業績連動給与をご紹介しました。
このように業績指標の範囲が拡充されたとはいえ、現状は有価証券報告書を提出しているような大企業しか適用することができず、導入している企業はごく一部に留まっています。
そのため柔軟な報酬設計の実現を通じた優秀な人材の確保、ひいては国際的な企業競争力を向上させる観点からも、役員報酬は今後の改正が期待される分野となるでしょう。
なお、業績連動給与を導入する場合には、適用対象企業に該当するかどうか、使用する業績指標は問題ないかどうかなど、あらかじめ顧問税理士に相談するようにしましょう。
今後の動向も含め、業績連動給与に興味のある法人様は、私たち辻・本郷 税理士法人でもご相談を承っています。ぜひお問い合わせください。
法人ソリューショングループ 仁平 和宏
【経済産業省】『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-(2023年3月時点版)』
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