副業収入がある方へ!令和4年分の確定申告、準備していますか?
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令和2年(2020年)度の税制改正以降、確定申告書に記載されている雑所得が「公的年金等」「業務」「その他」の3つの区分に分かれていることにお気づきの方も多いのではないでしょうか。
シェアリングエコノミーによる副業収入のある方も増えており、多様な経済活動が増えている昨今の状況を見据えて、雑所得はこれまでのような「他の9種類の所得に該当しない所得が雑所得」という単なるバスケット・カテゴリーとしての役割から形を変えつつあります。
今回は副業で収入がある方や、これから副業で収入を得たいと考えている方向けに令和4年(2022年)以降の確定申告について確認しておきたい内容をお伝えします。
副業の確定申告、必要な場合があります
会社員は通常、年末調整のみで確定申告をする必要がありませんが※、副業収入がある方は確定申告が必要になる場合があります。以下に挙げる2つのケースを参考にしてください。
※年間収入金額が2千万円を超える場合や、2か所以上から給与の支払いを受けている場合を除きます。
- 副業で得た利益(収入 - 経費)が年間で20万円を超える場合
- 副業で得た利益は年間20万円未満であるが、医療費控除・ふるさと納税などの控除を受けるために確定申告をする場合
副業で得た利益が年間20万円未満であり、他の控除を受けるための確定申告をしない場合はどうなる?
この場合には所得税の確定申告は不要です。ただし、住民税の申告が必要になります。副業で得た利益をご自身が住んでいる市区町村に対して申告する必要があります。
副業収入は雑所得?それとも事業所得?
副業に係る収入を確定申告をする際、「事業所得(事業)」に該当するのか、それとも「雑所得(業務)」に該当するのか、判断に迷う方もいらっしゃると思います。
不動産賃貸業の場合なら、そこから生じる収入が「事業」に該当するか否かについては、いわゆる「5棟10室」といったある程度明確な判断基準があります。
しかし、それ以外の商売については所得税法においても「事業」の定義が定められておらず、明確な判断基準がありません。
そのため、事業所得に該当するのか雑所得に該当するかの判断は難しく、裁判で争われる場面も少なくありません。
過去の裁判例で示された事業所得の判断基準とは
事業所得か否かについての判断基準の一例が、過去の裁判例で以下のように示されています。
事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、①営利性・有償性の有無、②継続性・反復性の有無、③自己の危険と計算における事業遂行性の有無、④その取引に費やした精神的・肉体的労力の程度、⑤人的・物的設備の有無、⑥その取引の目的、⑦その者の職歴・社会的地位・生活状況などの諸点を総合して、社会通念上事業といい得るか否かによって判断する
(昭和56年4月24日最高裁判所第二小法廷判決、など)
つまり、本業として行う営利を目的とした商売が「事業」であり、他に主たる仕事を持っている人が行う副業は、ほとんどの場合「事業」でなく「業務」に該当すると考えられます。
そのため、副業に係る収入は「事業所得」でなく「雑所得」に区分されることが一般的です。
雑所得の3つの区分の具体例と、所得の計算方法
雑所得は下記の3つの種類に区分されます。それぞれの具体例と所得の計算方法は以下のとおりです。
1.公的年金等
具体的に、国民年金、厚生年金のほか、恩給、確定給付企業年金、確定拠出年金などが該当します。
所得の計算方法は、下記のとおりです。
収入金額 - 公的年金等控除額 = 公的年金等の雑所得
2.雑所得を生ずべき業務に係る雑所得
はっきりとした定義が規定されていませんが、いわゆる副業や兼業による収入はこちらに該当します。本業とは別の「業務」による収入のうち、営利を目的とした継続的なものを指します。
具体的には、原稿料や講演料、最近ではメルカリなどのシェアリングエコノミーによる副業収入などです。
所得の計算方法は、下記のとおりです。
総収入金額 - 必要経費 = 業務に係る雑所得
3.その他の雑所得
1、2以外のものが、「その他雑所得」に該当します。
具体的には、個人年金保険、暗号資産取引などがこちらに含まれます。
所得の計算方法は、下記のとおりです。
総収入金額 - 必要経費 = その他の雑所得
2と3の区分にも注意が必要です。前者は、一定の継続的な副業収入などがこの「業務」に該当することに対し、後者は、利子所得や配当所得など雑所得以外の所得に区分することのできない収入で、業務にも該当しないものが該当します。
令和4年(2022年)分の申告から要対応!雑所得に関する手続き等が見直されました
令和2年(2020年)度の税制改正により、令和4年(2022年)分以後の所得税について、表1に示す手続き等が見直されました。
なかでも特に注意したいのは、請求書や領収書等の保存義務です。対象となる方は令和4年(2022年)分の収入に係るものから保存しなければなりませんので、ご注意ください。
【対象者の判定】 前々年分の業務の収入金額 | 【見直された内容】 |
---|---|
300万円以下 | 現金主義による計算の特例適用が認められた |
300万円超 | 現金預金取引等関係書類(請求書や領収書等)の保存義務(5年間) |
1,000万円超 | 業務の収支内訳書を作成し、確定申告書へ添付する義務 |
所得税に関する今後の動向
国税庁が所得税基本通達の一部改正案について令和4年8月に意見公募を行い、10月7日にその結果が公表されました。
シェアリングエコノミーや副業等の新しい収入の形態を念頭に、国税庁では雑所得の範囲の明確化を図るため、当初は以下の2について「主たる所得でなく、かつ、収入金額が300万を超えない経済活動による所得は雑所得」という、金額での基準を設ける案とされていました。
しかし、この案に対する反響は大きく、以下のような改正案に修正されました。改正後の所得税法基本通達の取扱いは、令和4年分以後の所得税について適用されます。
1. 「その他の雑所得」の範囲を明確化(所基通35-1 修正後改正案)
その他の雑所得の範囲に、暗号資産取引による所得等が含まれることが明確化されます。
2. 「業務に係る雑所得」の範囲を明確化(所基通35-2 修正後改正案)
事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上、事業といえる程度で行っているかどうかで判定されます。
なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合には、業務に係る雑所得に該当すると判断されます。ただし、その所得に係る収入金額が300万円超であり、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除きます。
おわりに
最近では、いろいろな種類の副業が増え、税金の計算上どのように取り扱われるのか判断が難しいものもあります。
すでに副業収入のある方だけでなく、これから検討している方も、副業収入にも税務の申告が必要となる場合があることや、申告の際の必要な手続きがあることを、申告期間が始まるまでの時間に余裕があるうちに確認することをおすすめします。
なお、上記通達の改正案は令和4年分以後の所得税について適用されますので、すでに行っている経済活動についても見直しが必要です。
この改正により、帳簿等の保存がない経済活動による所得については、一定の場合をのぞき、雑所得に該当すると明文規定されます。
従来、事業所得については白色申告者であっても記帳制度と記録保存制度が設けられています。そのため、事業所得としての申告を検討する納税者の方はすでに記帳等の対応をされているかと思いますが、今一度ご留意ください。
お困りの際には税理士にご相談を
税金や申告について、わかりにくい点もあるかと思います。お困りの際には税理士にご相談いただくことをお勧めします。
私たち辻・本郷 税理士法人では個人の方からのご相談も承っておりますので、お気軽にご連絡ください。
[最終更新:2022年10月12日]
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<参考サイト>
【国税庁】タックスアンサー No. 1500 雑所得
【同上】「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募の結果について」
<参考文献>
【税務研究会】税務通信 3697号、3711号、3715号
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