いよいよ改正電子帳簿保存法がスタート!重要なポイントをご紹介
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令和5(2023)年10月にインボイス制度が始まり、はや2ヶ月が経ちました。
法対応に慌ただしいなかでようやく一息、と思いきや、令和6(2024)年1月からは電子帳簿保存法の電子保存義務化が始まります。
今回は、法対応をするうえで特に重要となるポイントをご紹介いたします。
電子帳簿保存法ってどんな法律?
そもそも、電子帳簿保存法とはどのような法律なのでしょう。
電子帳簿保存法とは、その名の通りデータ保存について定めた法律になります。
正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といい、法律の制定は平成10(1998)年と意外にも古いものとなります。
また、第一条には
「この法律は、情報化社会に対応し、国税の納税義務の適正な履行を確保しつつ納税者等の国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減する等のため ~…」
と書かれており、本来紙ベースでしか認められなかった国税関係帳簿・書類に対して、一定の要件のもとに電子データでの保存を認めるといった法律になっています。
なお、制定当初は求められる要件がかなり厳しく、導入企業は多くありませんでした。
このため、積極的に活用できるよう、複数回の要件緩和がおこなわれてきました。
昨今では、テレビCMや記事などで取り上げられることの多いこの法律ですが、本来は近年の情報化社会に対応するべく制定されたものなのです。
では、なぜ最近になってこの電子帳簿保存法が騒がれているのでしょう。
はじめての「義務化」、どんなことが義務になった?
それは、データ保存を容認する法律のなかで、2021(令和3)年度の税制改正にて、はじめて義務化された内容があったからです。
今回の改正で「電子取引」に該当するものは、かならず「電子データ」で保存することが必要となりました。
ここでいう電子取引とは、たとえばホームページやクラウドサービスからダウンロードした請求書データや、電子メールに添付される形で受領した領収書データなどが対象となります。
そのほか、メール自体にはデータ添付されていないものの、メールの本文に直接取引情報(請求額や取引内容)が記載されている場合には、そのメール自体をデータ保存する必要があります。
真実性・可視性…2つの保存要件がある
また、これらの保存要件も定められており、おもに真実性の要件(保存されたデータが改ざんされていないこと)と、可視性の要件(保存されたデータを容易に検索・表示できること)を満たす必要があります。
なお、本来は2022(令和4)年1月から施行されているため、すでに対応していなければなりませんが、2023年いっぱいは宥恕措置が設けられています。
法対応に関してやむを得ない事情があると認められる場合には、従来どおりの取り扱い(紙保存)でよいこととされています。
電子取引に関する詳細な内容は、当法人Webサイト内の特集ページ「電子帳簿保存法の対応準備」をご確認ください。
義務化に対応しないと、追徴課税や青色申告の承認が取り消しになることも
電子帳簿保存法に関する税務上の罰則は、おもに以下の2つが想定されます。
- 追徴課税(重加算税)
- 青色申告の承認取り消しおよび推計課税
1. 追徴課税(重加算税)
電子取引の保存に関して、隠蔽または仮装された事実があった場合、その事実に関して発生した申告漏れ等に課される重加算税(35%)が、さらに10%加重されることとなります。
2. 青色申告の承認取り消しおよび推計課税
承認を受けることでさまざまな特典を受けることができる青色申告制度について、電子取引の保存がされていない場合は、その承認の取り消しが行われる可能性があります。
なお、国税庁より公表されている「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」には、特段の事由がなければ直ちに承認取り消しとはならない旨の記載があります。
しかし、可能性がまったく無くなったわけではないため、引き続き注意が必要です。
また、推計課税といって、直接の資料によらず、取引量や事業規模などのさまざまな状況を鑑みて所得を認定する方法があります。
納税者があまりにも非協力的で、税務署が実額の把握ができない場合は、青色申告の承認取り消しのうえ※、このような処置が講じられる可能性もあります。
※青色申告者に対しては推計課税は認められていません
紙でのファイリングは違法ではない?令和6年からの猶予措置も
要件に沿って電子取引をデータ保存したとしても、実際の現場では紙で印刷した書類をファイリングすることが想定されます。
この場合、紙でファイリングした書類自体は保存要件に該当していないものの、その印刷を禁止しているものではないため、以前と同様に社内保管が可能です。
また、2024(令和6)年1月からはあらたに猶予措置が設けられています。
以下のイ・ロを満たした際には、改ざん防止や検索機能などの保存要件が不要となり、単に電子取引データを保存しておくだけでよいこととされます。
そのため、年明けの対応が間に合わないような場合には、要件を確認のうえ、対応を検討しましょう。
イ. 保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合(事前申請不要)
ロ. 税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合
おわりに
今回は電子帳簿保存法についてご紹介しました。
辻・本郷税理士法人では基本業務である税務顧問のほか、電子帳簿保存法に関するシステム提案やコンサルティングなども行っております。
ぜひ、お気軽にご相談ください。
- 【国税庁】電子帳簿等保存制度特設サイト
- 【同上】電子帳簿保存法一問一答
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