クリニックの税務調査とは?基礎知識から対策まで
- 税務・会計
クリニックの経営が軌道に乗り出すと、避けて通れないのが税務調査。
申告が正しく行われていれば、恐れるようなものではありませんが、はじめての税務調査は、何をするのかわからず不安に思われる方も少なくないのではないでしょうか。
もし税務調査がきたときに、焦らず落ち着いて対応できるように、事前に概要を確認しておきましょう。
税務調査の概要
税務調査は、個人医院や医療法人などの納税者が行った税務申告を、所得の申告漏れなどがなく正しく行われているか税務署が確認するものです。
基本的には、税務調査実施予定日の1か月程度、納税者本人もしくは顧問税理士宛に電話で、日時や場所、対象税目などの事前通知があります。
通知された日程に都合がつかない場合は、日程の変更も可能です。一般的には、3月の確定申告後の4~5月、税務署の人事異動が行われる7月以降~11月頃が税務調査が多い時期といわれています。
現地調査の日数 | 2~3日 |
---|---|
調査官の人数 | 1~2名 |
時間 | 10時~16時(12時~13時は昼食) |
場所 | 原則として納税地とされる事務所等の所在地 |
対象期間 | 通常は直近3事業年度 (源泉所得税は、対象期間の初月から調査日までに納期が到来するもの) |
税務調査の対象になりやすいケース
下記に当てはまるような場合は、税務調査の対象となる可能性が高くなります。
医療法人だけでなく、頻度は少なめですが、個人経営のクリニックも税務調査の対象となります。
- 毎年多額の所得が発生している
- 業績が急激に伸びている
- 前期と比較し、売上や経費が大きく増減している
- 他の同規模のクリニックと比べ、利益率が低い場合や、特定の経費が多い場合
- 多額の不動産売買があった
- 多額の消費税の還付があった
税務調査当日の基本的な流れ
当日は、税務署の調査官が直接、帳簿や証拠書類などをチェックし、申告書の内容に矛盾がないかを確認します。
一般的には、過去3年分が調査対象期間となります。
不足している資料の提出を求められたり、調査官が疑問を感じた点について質問されたり、算出の根拠を直接確認されることもあります。
調査官の目にとまりそうな点があらかじめ予測できる場合は、スムーズに対応できるように、資料の準備をしておき、顧問税理士と打合せをして事前に準備をしましょう。
パソコン内のデータの提示を求められることがありますので、ファイルの整理などもしておきましょう。
税務調査期間内は以下の流れで調査が行われます。
初日 | 午前 | 代表者への事業概況のヒアリング 帳簿書類の状況や作成の流れの確認 |
---|---|---|
午後 | 帳簿書類の内容の確認 (売上、在庫、給与、経費、損失、大きな取引 など) | |
夕方 | 資料の追加提出の依頼 | |
2日目以降 | - | 帳簿書類の内容の確認 (前日の続き、その他) |
最終日 | 午前 | 帳簿書類の内容の確認 (前日の続き、その他) |
午後・夕方 | 講評(指摘事項と検討事項) 資料の追加提出の依頼 | |
後日 | 追加資料の提出、説明 検討事項に関する折衝 |
税務調査のために準備しておく資料
準備する資料は、対象となる税目によって多少異なりますが、基本的には以下の資料を用意しておくとよいでしょう。
- 総勘定元帳
- 預金通帳
- 窓口現金出納帳
- 請求書・領収書
- 契約書などの帳簿書類
- 賃金台帳やタイムカード
- 扶養控除申告書などの給与関係書類
医療法人の場合は上記に加え、社員総会議事録や理事会議事録、病院案内、組織図などを準備しておきましょう。
調査対象となる期間は過去3年間となることが一般的ですが、調査の過程で重大な問題が見つかった場合などは、最大7年間までさかのぼって調査となることがあります。
過去7年分の資料の保管は法律で定められていますので、指摘された場合にスムーズに出せるよう準備をしておくと安心です。
調査の結果、申告に誤りが見つかれば「修正申告」を行う
税務調査の過程で調査官から指摘を受けた内容が、納税者として誤りだったと認められるものであれば、指摘に従って修正申告を行います。
追徴税額が出る場合は、過少申告加算税、延滞税が追加でかかりますので注意が必要です。
追徴税額については、過去の税務トピックスに詳しい記事『税金の罰金は意外に重い?追徴課税の基本』がありますので参考になさってください。
クリニックの税務調査のポイントは「保険未収金」・「未収入金」
クリニックの売上は、社保・国保の収入がメインとなる場合が多く、保険給付の支払までに2か月の期間が生じますので、保険未収金の取り扱いには特に注意が必要です。
また、近年では、窓口収入についても、現金ではなくクレジットカードや電子マネー、QRコードなどキャッシュレスによる決済を行っているクリニックも少なくありません。
売上の計上は入金日ではなく、診療日となりますので、入金が決算期をまたぐ売上は忘れずに未収入金として計上しましょう。
診療科によっては、自賠責保険・労災による収入や、予防接種による収入もあるでしょう。
保険会社や医師会などから入金されるまでに相当の時間を要することもありますので、漏れがないように計上しましょう。
おわりに
まだ調査を受けたことがない方にとって、税務調査には恐いイメージがあるかと思いますが、正しく申告していれば必要以上に恐れるものではありません。
申告ミスがあったとしても、意図的で悪質なものでない限りは罰せられることもありませんし、基本的には修正申告のみで済みます。
事前にしっかりと準備をし、当日は調査官に対して正直に対応しましょう。
その場ですぐに答えられないような質問には後日回答するか、もしくは顧問税理士に回答を任せることもできます。調査官に不信感を抱かせないよう曖昧な回答は避け、真摯に対応しましょう。
辻・本郷 税理士法人内には医療法人・クリニック専門の部署があり、税務調査に関するご相談もお受けしています。
お困りの際にはぜひお問い合わせください。
ヘルスケア事業部 小幡 匠
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