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概算経費とは ~クリニックでは実際に支払った金額以外も経費になる?

  • 税務・会計
概算経費とは?

収入が一定金額以下である診療所については、実際に支出した「実額経費」と一定の方法により計算した「概算経費」のうち、いずれか多い方の金額を経費とすることが認められています

この特例は、社会に欠かすことのできない医療サービスを安定的に世の中に提供するため、小規模な診療所の事務処理の軽減や経営の安定化を図ることを目的に創設された制度です。正式には「社会保険診療報酬の所得計算の特例」として規定されています。

今回は、クリニックが使える概算経費について詳しくご紹介します。

適用対象者は医業または歯科医業の個人事業主や法人

概算経費を利用することができる適用対象者は、医業または歯科医業を営む個人事業主や医療法人で、その事業年度の収入が一定金額以下(以下の「収入金額の判定はどのように行われるか」項を参照)である方に限られます。青色申告か白色申告かは問われません。

なお、柔道整復師、あんま、はり業、助産師、介護福祉士などは対象に含まれません。

収入金額の判定はどのように行われるか

適用対象者がこの特例の適用を受けることができるのは、その事業年度において以下の条件に当てはまる場合に限られます。

  • 社会保険診療につき支払いを受けるべき金額が5,000万円以下
  • かつ

  • 総収入金額の合計額が7,000万円以下

総収入金額に含まれない金額

ここでいう「総収入金額」には以下の金額は含まれませんので、除外して判定します。

  • 国庫補助金、償還金、保険金その他これらに準ずるものの収入金額
  • 固定資産または有価証券の譲渡に係る収益の額
  • 受取配当金、受取利子、営業外収益の額
  • 貸与寝具、貸与テレビ、洗濯代等の収入金額
  • 医薬品の仕入れ割戻しの金額
  • 電話使用料、自動販売機等の手数料に係る収入金額
  • マスク、歯ブラシ等の物品販売収入の額

決算書上の総収入金額が7,000万円を超えていても、これらの金額を除くと7,000万円を下回り、適用を受けることができる可能性があります。
また、医療法人が事業者その他の団体等との任意の契約等に基づいて行っている社会保険類似の行為に対して支払いを受ける金額については、上記の社会保険診療報酬の範囲に含まれません。

社会保険診療報酬に係る所得金額の計算方法

収入金額の要件を満たす適用対象者は、次の①と②のうちいずれか少ない金額を、その年分の社会保険診療報酬に係る所得金額とすることができます。

①実額計算による計算(原則)

社会保険診療収入 ― 実額の経費

②概算経費による計算(特例)

社会保険診療収入 ― 社会保険診療収入 × 概算経費率

概算経費の速算表
社会保険診療報酬 概査経費率の速算表
2,500万円以下 × 72%
2,500万円超3,000万円以下 × 70% + 50万円
3,000万円超4,000万円以下 × 62% + 290万円
4,000万円超5,000万円以下 × 57% + 490万円

概算経費の適用を受ける際の注意点

青色申告特別控除額の計算

青色申告者が概算経費の適用を受ける場合は、65万円控除(複式簿記かつ電子申告の場合)は社会保険診療報酬に係る所得金額を除外したところから控除を行います。
自由診療に係る所得金額が仮に50万円であれば、青色申告特別控除額は50万円が限度額になります。

概算経費の選択時期

概算経費と実額経費のどちらを適用するかについて、事前届出の必要はなく、申告の際に選択することができます

概算経費での申告を選択する場合には、個人事業主では、「所得税青色申告決算書(一般用)付表(医師及び歯科医師用)」を作成して確定申告書に添付する必要があり、法人については、「社会保険診療報酬に係る損金算入に関する明細書」の記載が必要になります。

経費の把握

社会保険診療分の経費と自由診療分の経費を明確に区分することができる場合には、概算経費の金額が多くなります。
例えば以下の費用に関しては、明確に区分することができる経費になります。

  • 事業税
  • 税込経理時の消費税
  • ワクチンや健診の検査費用(自由診療分として区別できる場合のみ)
  • 第三者に委託したレセプト請求費用(社会保険診療分)

上記費用については、最低限区分することができます。さらに、細かく区分することができれば、さらに概算経費額を多くすることができる可能性があります。

おわりに

概算経費を選択することによって費用を多くするメリットを受けることができる可能性があります。実額経費での申告でも申告書の内容に誤りはありませんが、やむを得ない場合を除き、申告後に更正の請求は認められず、選択を誤ると多額の納税が発生するおそれがあります。
その判断には、専門的な知識が不可欠となります。

辻󠄀・本郷 税理士法人では、長年のノウハウと全国的なネットワークを活かし、医療機関の皆さまへの支援を行っています。ぜひ私たちへご相談ください。

執筆担当:新宿ミライナタワー事務所
 ヘルスケア事業部 小幡 匠

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