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カンボジアに進出するなら「現地法人」と「支店」どちらを選ぶ?

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カンボジアに進出するなら「現地法人」と「支店」どちらを選ぶ?

カンボジアへの進出を検討する企業にとって、現地法人(現地子会社)と支店のどちらを設立するかは非常に重要な意思決定となります。

各々にメリット・デメリットが存在し、事業活動の範囲、設立実務、法務対応、税務会計など、多くの面で違いが生じます。本稿では主要な項目ごとに現地法人と支店の特徴を比較し、整理しました。

いま、カンボジアが注目される理由

近年、カンボジアは東南アジアの新たな成長市場として注目されており、2023年のカンボジアGDP成長率は5.0%とされています。

人口の70%が30歳未満と若く、活力ある人材が豊富で、ASEANの中心に位置することからタイとベトナムを結ぶ拠点として物流の効率化とコスト削減が期待できます。
また、経済特区(SEZ)による税制優遇や100%外資出資が可能で、ビジネスに有利な環境が整備されています。

2050年に高所得国入りすることを目指しており、タイ・ベトナム・シンガポールに次ぐポジションを目指しています。

日本への信頼度が高いカンボジア

かつて日本がODAを繰り返したこともあり、カンボジアと日本の間には友好の歴史があり、強い信頼関係が築かれています。

現地の人々は日本人に対して親しみや敬意を持って接しており、日本企業や日本人にとって隠れたオアシスと言われるほど住みやすい国となっています。

各フェーズの比較:現地法人と支店のメリット・デメリット

項目・フェーズ 現地法人 支店
活動範囲 カンボジア内国法人と同様
(法令で禁止される行為を除き)
カンボジア内国法人と同様だが、
本店の事業範囲に限定される。
設立実務 ・定款の作成、認証が必要
・資本金の振込、銀行残高証明書の提出が必要
・定款作成不要
・資本金の振込が不要
会社法務 ・株主総会の開催
・取締役会の開催
・株式譲渡や取締役交代時届け出
(法的に定められている報告事務などによる事務負担が大きい)
・取締役会などの実施義務なし
・代表者の変更時は届け出が必要
QIPの適用 適用可能 適用不可
債権債務 ・有限責任であり、株主の責任は各自出資した資本金の範囲に限定
・現地法人は、親会社とは異なる別の法人格を有するため、親会社は債務の弁済責任に関し、リスクが軽減できる
独立した法人格を有しておらず、債権債務は本店へ直接帰属する。
資金移動 貸付、借入、寄付、贈与、配当、出資などの方法により、税務上の事項を検討する必要がある 本支店間で資金を自由に移転することが可能
税務会計 ・月次・年次申告義務及び年次決算報告義務あり
・2国間の2国間のどちらかが欠損、そちらかが所得(利益)が生じた場合に、欠損金の相殺ができない
・同右
2国間のどちらかが欠損、そちらかが所得(利益)が生じた場合に、欠損金の相殺が可能
・カンボジアで納めた法人税について、本店所在国で外国税額控除が可能

※本店所在地国の税法要確認

労務 労務省への申請や届け出が必要 同右
拠点展開 国内支店の設立が可能 支店の設立が不可能
撤退 税務調査が長期にわたる可能性があり、撤退は重い事務負担となる。 同右

現地法人と支店、それぞれの特徴と留意点

1. 活動範囲

現地法人

カンボジア内国法人として、基本的には現地の法律にのっとった広範な事業活動が可能です。

支店

本店の事業範囲に限定されるため、事業の拡大を考える場合には本店との連携や戦略の整合性が重要となります。

2. 設立実務

現地法人

定款の作成や認証、資本金の振込など、設立時の実務手続きが煩雑ですが、独立した法人格を有するため、事業活動における自由度が高まります。

支店

定款の作成や資本金の振込が不要なため、設立手続きは比較的簡素です。ただし、本店の業務範囲に縛られる点には注意が必要です。

3. 会社法務

現地法人

株主総会や取締役会の開催、株式譲渡時の届け出など、法定手続きが多数求められ、事務負担が大きい面があります。

支店

取締役会の実施義務がなく、法務手続きの負担は軽減されるものの、代表者の変更時などは届け出が必要となります。

4. QIPの適用

現地法人はQIP(Qualified Investment Project)という投資優遇税制の適用が可能ですが、支店では適用されません。投資優遇措置などの活用を検討する際は、現地法人設立が有利となります。

5. 債権債務とリスク管理

現地法人

独立した法人格により、株主の責任は出資額に限定され、親会社のリスク軽減が図れます。

支店

本店の延長線上に位置するため、債権債務は本店へ直接帰属します。債権の貸し倒れが起こった場合などリスク管理の面では注意が必要です。

6. 資金移動

現地法人では、各種資金移動に伴う税務上の検討事項が多く発生しますが、支店の場合は、本支店間での自由な資金移動が可能であり、柔軟な運用が期待できます。

7. 税務会計

現地法人

両国間で欠損と利益が生じた場合、欠損金の相殺ができません。

支店

本店支店の2国間のどちらかが欠損し、どちらかに所得が生じた場合は、その相殺が可能な点や、カンボジアで納めた法人税に対して本店所在国で外国税額控除が認められる場合があるため、税務メリットが期待できます。
詳細は本店所在地国の税法をご確認ください。

8. 労務・拠点展開・撤退

労務関連の申請や届け出は、現地法人・支店どちらの場合でも必要です。

  • 拠点展開では、現地法人の場合は国内支店の設立が可能であるのに対し、支店の場合は新たな支店の設立ができません。
  • 撤退に関しては、どちらも税務調査が長期化する可能性があり、撤退時の事務負担が大きい点は共通の留意事項となります。

現地法人か支店か、違いを知って目的に合った組織形態を慎重に判断しましょう

プノンペン市街地

現地法人と支店には、それぞれ設立の手続きや運用面、税務面で異なるメリット・デメリットがあります。

  • 現地法人は、独立した法人格を有するため、リスク分散や投資優遇措置の活用が可能ですが、設立や法務の負担が大きくなる傾向にあります
  • 支店は、設立手続きが簡素で、資金移動や税務面で柔軟性がある一方、本店の事業範囲に制約され、リスク管理の面で注意が必要です

最適な組織形態は、企業の事業戦略やリスク許容度、現地での事業展開の規模などにより異なります。
各ポイントを十分に検討し、慎重に判断することがカンボジア進出への成功への鍵となるでしょう。

辻・本郷 税理士法人ではカンボジア進出への支援を行っています

辻・本郷 税理士法人では、カンボジア進出を目指す企業様に向けて、税務・会計・法務の専門知識を活かした総合サポートを提供しております。法人設立支援から税務アドバイス、移転価格対応、現地規制へのコンプライアンス支援まで、現地拠点の安定した運営を全面的にサポートいたします。

カンボジア市場での成功を目指すパートナーとして、ビジネスの成長とリスク管理を両立した最適な戦略をご提案いたします。お気軽にご相談ください。

執筆担当:カンボジア会計事務所 仲村 泉
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