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魅惑の福利厚生制度!?カフェテリアプランと税金の話

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カフェテリアプランと税金の話

カフェテリアプランをご存知でしょうか?
好みの食べ物や飲み物を自由に注文できる「カフェテリア」に由来する福利厚生制度で、企業があらかじめ用意した福利厚生サービスの中から、従業員が付与されたポイントの範囲内で好きなものを選択できる仕組みです。近年では低金利で魅力が薄れた財産形成貯蓄制度(財形)に代わって、導入する企業が増加しているとのことです。

今回は、いま流行りの福利厚生制度・カフェテリアプランに関する税金の話をご紹介します。

カフェテリアプランのアウトソーシング

カフェテリアプランの導入は、代行企業にアウトソーシングすることが一般的なようです。

人気のアウトソーシングサイトの福利厚生メニューには、旅、レジャー、グルメから育児・介護補助まで、まさに至れり尽くせりの多項目が並んでおり、サービスの活況をうかがえます。

また、2019年の従業員1人あたりのポイント使用額の平均は年額5万5,920円(経団連「第64回 福利厚生費調査結果報告」による)となっています。
企業としても、付与するポイントの総額が決められるので、福利厚生費の予算が見込みやすいというメリットもあるようです。

このように、多様なニーズに対応することにより従業員の満足度を向上させることと、企業側のコストの抑制効果を同時に満たしてくれることこそが、カフェテリアプランのアウトソーシングが人気の理由なのかもしれません。

カフェテリアプランの税金関係

さて、カフェテリアプランに関する税金の取扱いは、どのようになっているのでしょうか?

カフェテリアプランで企業が負担する支出は、福利厚生費として「費用」の扱いとなり、法人税の計算上の損金として税金を減少させる効果があります。
ただし、カフェテリアプランの支出が福利厚生費として認められるには、導入設計時に一定の要件を満たす必要があるため、注意が必要です。(※)

一方で、従業員が受けることのできるカフェテリアプランのサービスについては、「福利厚生費」になる場合と「給与」になる場合があります。

「給与」というと、従業員が労働の対価として受け取る給料や賃金、賞与などのイメージが強いと思いますが、税法ではこれだけに留まらず、企業がギフトカードのような金券を配布したり、従業員に自社製品を安く購入させたり、社宅を安く貸したり、保養施設を無償で利用させたりというような、企業が従業員に便益を図る行為(これを「経済的な利益の供与」といいます。)についても、原則的には「給与」に含めています。

カフェテリアプランと税金の話

ところが、例えば保養所を無償で利用したことに対して、本来の利用料が1万円であるため1万円の給与として課税されても、給料のように実際に手元に1万円の現金が入ってくるわけでもなく、給料からその分の税金が源泉徴収されることになり、手取り額が少なくなってしまいます。

そのような不都合や労働環境の改善のため、従業員の福利厚生施設の運営費(所得税基本通達36-29)や永年勤続記念品(同通達36-21)などの特定の経済的利益については、課税上「給与」にしないという特別の取扱いが定められています。

前置きが長くなりましたが、カフェテリアプランのサービスについても、この考え方が適用されます。つまり、カフェテリアプランで受ける福利厚生サービスは、会社から受ける経済的利益であるため、原則的には給与課税されるべきものですが、特定のものに限って例外的に非課税となります。

(※)カフェテリアプランの導入にあたっては、①ポイント付与額が役員・従業員にとって均等であること、②ポイント付与額が著しく多額でないこと、③付与されるポイントに換金性がないこと等の要件を満たさない場合は、所得税基本通達36-29の非課税福利厚生費の適用を受けないものとして、そのカフェテリアプランのサービスは給与課税される可能性があります。(国税不服審判所 令和2年1月20日裁決(裁決事例集No.118))

具体的なカフェテリアプランのメニューの課税関係は以下のとおりになります。

ポイントを利用することにより、旅行費用、レジャー用品等、映画・観劇チケットやスポーツ観戦チケット、テーマパーク入場券等の提供を受けた場合

いずれも給与として課税対象となります。
ポイントを利用する従業員だけに提供されるサービスであることから、個人の趣味・娯楽など個人が負担すべき費用を補填するものと認められるため、給与になります。

ポイントを利用することにより、自己啓発のための通信教育講座を受講した場合

給与として課税対象となります。(理由は①と同じ)
ただし、自己啓発のためではなく、職務に直接必要な知識の習得や資格を取得するための講座を受講した場合には、非課税になることがあります。(所得税基本通達36-29の2)

ポイントを利用することにより、配偶者とともに人間ドックを受診した場合

従業員本人の分は非課税、配偶者の分は課税対象となります。
従業員の健康管理は雇用主である企業の義務であることから、一般的な人間ドック程度であれば福利厚生費(非課税)として認められています。

カフェテリアプランは魅力的な福利厚生制度か

いかがでしたでしょうか。「意外と課税される」という印象をお持ちになったのではないでしょうか。

現状の日本の福利厚生費に対する税務上の扱いは、原則は給与課税される経済的利益の中から一部の課税に馴染まない性質のものを選択して、例外的に非課税とすることを認めたものです。

あくまでも例外的な取扱いですので、福利厚生サービスが非課税として認められるためには、換金性に欠けるものであることや、従業員側に物品やサービス内容などの選択の余地がないものであることなど、金銭による給料と異なる性質であることが求められます。

このように、従業員に物品やサービスの内容などの選択の余地を認めていないのですから、従業員に選択させることによる満足感の向上を目的とするカフェテリアプランについても、税務上は基本的に非課税であることは認められないことになります。

しかし、福利厚生制度の有用性は、所得税が課税・非課税だけで判断されるものではありません。レジャーを通して新しい体験をしたり、家族との貴重な時間を過ごしたり、また自己啓発や日常生活の充実のために福利厚生制度を活用することは、税金の多寡でははかれない価値を持つでしょう。

また、福利厚生サービスの費用の全額を企業が負担することを考えれば、従業員は税金分を負担するだけでその福利厚生サービスを受けることができるわけですから、それほど大きな負担もなく福利厚生制度によるインセンティブを享受できることになります。
このような点を考慮すれば、税制上のデメリットを含みつつも、やはりカフェテリアプランは魅力的な福利厚生制度といえるでしょう。

おわりに

おそらく日本の福利厚生費税制は、カフェテリアプランの福利厚生制度の普及をまったく想定していなかったものと思われます。
福利厚生費に対する課税制度は、私たちの生活に直結する可能性があるだけに、対応を期待したいです。
はてさて、今後大きな改正はあるのでしょうか?

執筆担当:
新宿ミライナタワー事務所
 法人ソリューショングループ

<参考サイト>
【日本経済新聞】2020年3月7日「福利厚生、スキルアップや子育てに重点 財形は半減」
【一般社団法人日本経済団体連合会】第64回 福利厚生費調査結果報告
【国税庁】質疑応答事例「カフェテリアプランによるポイントの付与を受けた場合」
【国税庁】質疑応答事例「カフェテリアプランによる旅行費用等の補助を受けた場合」
【国税庁】質疑応答事例「カフェテリアプランによる医療費等の補助を受けた場合」

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