暗号資産取引しているなら知っておきたい、確定申告のこと
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今年も確定申告の時期になりました。
最近では、暗号資産(仮想通貨) による取引を行っている方が少なくありません。暗号資産取引によって利益が生じたら、確定申告が必要となるケースがあります。
暗号資産と、FX取引・株式売却等とでは税務上の取り扱いが異なる
暗号資産取引をしている方のなかには、並行してFXや株式による取引を行っている方も多いかと思いますが、前者と後者では税務上の扱いが異なります。
FX・株は「分離課税」、暗号資産は「総合課税」
FX取引や株取引の売却等で生じた利益は、他の所得と分離して課税する「分離課税」という方式で20.315%(所得税、復興特別所得税、及び住民税)の税率で税金が計算されます。
一方、暗号資産取引で生じた利益は「総合課税」という方式で課税されます。暗号資産以外で得たほかの所得との総額に対して課税されます。
総合課税方式の税率は、所得が多くなるほど税率が上がる累進課税方式なので所得全体の大きさに応じた税率で税金が計算されることになります。
確定申告の必要があるかは自分で判断?
証券会社で源泉徴収ありの特定口座に預けている株式等については、譲渡の際に所得税等がすでに差し引かれているため、利益が出ていても必ずしも確定申告を行う必要はなく、税金を納め忘れてしまうということはありません。
一方、暗号資産取引で生じた利益には源泉徴収の制度はなく、自ら確定申告を行う必要があるのかどうかを判断しなければなりません。
以下に、どんな場合に確定申告が必要になるかをご紹介します。
こんな場合は確定申告の必要あり
例年は年末調整で完了しているサラリーマンの方であっても、会社からの給料以外で20万円を超える利益が生じた場合には確定申告を行う必要があります。
さらに、医療費控除、ふるさと納税、住宅ローン控除などで確定申告を行う方については、暗号資産取引で得た利益が20万円以下であっても、その確定申告に含めて申告する必要があります。
専業主婦(夫)等で暗号資産取引のみによって所得を得ている方については、利益が基礎控除額の48万円を超える場合に、確定申告を行う必要が生じます。
暗号資産取引の所得税の取扱いは?
暗号資産取引で生じた利益は、原則として売却等の引渡しが発生した年分の雑所得に該当します。
雑所得の計算は、収入金額から必要経費を差し引いた利益の部分に税金が課税されます。
この際、ほかの所得と合算して適用される累進税率が決まります。
必要経費にできるもの
必要経費にできるものとして、暗号資産の譲渡原価や売却時に支払った手数料があげられます。
そのほか、取引のために使用した通信料、パソコン等の購入費用(1台あたり10万円未満)も必要経費として算入できます。
ただし、売却のために必要な支出であると認められる部分に限られます。とくに家事費との混同などには注意が必要です。
譲渡原価評価方法の求め方
必要経費として挙げた譲渡原価とは、売却した暗号資産の購入にかかった金額を一定の方法で評価したものをさします。この評価方法が少し複雑です。
たとえば、複数の暗号資産を複数回にわたって購入している場合には、暗号資産の種類ごとに売却があった年の、
①「年初に所有していた暗号資産の評価額(A)」と
②「その年中に取得した暗号資産の取得価額(B)」の合計から
③「年末時点に保有している暗号資産の評価額(C)」を差し引くことで、
④当年中に売却した暗号資産の譲渡原価((A)+(B)-(C))を求めます。
さらに、年末時点の評価額については、総平均法または移動平均法のいずれかの方法によって1単位あたりの取得価額を計算し、これに数量を乗じる方法で計算します。年初の評価額は前年に同様の方法で評価したものを繰り越します。
総平均法とは、1年間に購入した暗号資産の金額合計を、1年間に購入した数量の合計で割って取得価額(単価)を算出し、平均単価を所得の計算に使用する方法です。
移動平均法は、暗号資産を購入するたびに取得価額を算出する方法です。
購入した金額の合計÷数量=取得価格(単価)を購入するたびに計算します。
これらの方法で計算した結果、損失が生じた場合には、同じ雑所得内での通算は可能です。ただし、他の所得からこの損失を差し引くことはできませんので、ご留意ください。
暗号資産取引をはじめたら、税務署に届出る書類がある?
総平均法または移動平均法のいずれを選択するかについては、税務署への届出が必要です。
はじめて暗号資産を取得した方は、その年分の確定申告期限(通常は翌年の3月15日)までに「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」の提出が必要です。
なお、この届出書の提出がない場合には、総平均法が原則的な評価方法となります。
所得金額が2千万円を超えたら財産債務調書の提出を
その年の所得金額が2千万円を超え、かつ年末時点で3億円以上の財産(または1億円以上の有価証券等)を所有する方には、「財産債務調書」の提出が義務づけられており、暗号資産も記載の対象となります。
なお、令和4年度税制改正により、提出義務者の対象範囲が見直される予定です。適用は令和5年分以後の見込みです。
具体的な内容は当法人発行の『令和4年度税制改正のポイント』をご確認ください。
また、暗号資産の記載額については、活発な市場が存在する場合には交換業者が公表する時価を記載する必要があります。
逆に、活発な市場が存在しない場合には、一定の合理的な方法で算定した見積額の記載が認められます。
暗号資産の場合、国外財産調書は記載対象外
国外財産調書は、日本国内の居住者で年末時点に5千万円を超える国外財産を所有する人にその提出が義務付けられています。
また、暗号資産の所在については、暗号資産取引所の所在が国内か国外かに関わらず、所有している方の住所(または居所)となります。
したがって、暗号資産は国外財産調書の記載の対象となりません。
おわりに
今後、暗号資産での取引がより活発になると、確定申告を行う必要がある方が増えるかもしれません。
確定申告義務があるのに申告を失念してしまうと、あとで無申告加算税や延滞税、ときには重加算税が課される可能性があり、本来であれば支払う必要のない税金を支払わなくてはならなくなります。
いままで年末調整で済んでいた方にとっては、確定申告が非常に面倒なものと思われるかもしれません。
しかしながら、以前よりも確定申告の手段は増えており、より簡単に行うことができるようになってきています。
最近では、スマートフォンからも確定申告ができます。暗号資産の計算書の作成から確定申告書の作成まで行えますので、国税庁のWebサイトを参考にしてください。
ご自身の所得をもう一度見直し、忘れずに確定申告を行いましょう。
<参考サイト>
【国税庁】暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)(令和3年12月)税制改正について
【国税庁】スマホで確定申告(暗号資産編)
【国税庁】国外財産調書制度(FAQ)(令和3年12月)
【税務研究会】『税務通信』3684号
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