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社会福祉法人の経理規程を見直してみませんか? 契約関係に焦点をあてて解説

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社会福祉法人の経理規程を見直してみませんか? 契約関係に焦点をあてて解説

社会福祉法人は公金を使用して事業を行っており、内部統制が強く求められます。そのため、経理規程の作成は必須とされています。

多くの社会福祉法人は、汎用版のモデル経理規程をアレンジして作成されていると思いますが、現在の法令や自法人の運営状況と照らし、内容を見返してみてください。
もしかすると、見直しが必要な箇所があるかもしれません。

経理規程とは?

社会福祉法人の会計担当者が準拠すべき直接のルールが経理規程で、その基礎となっているのが社会福祉法や社会福祉法人会計基準、そして会計に関連する行政指導通知です。

つまり、経理規程は法令・通知と実務をつなぐ架け橋としての役割を果たしているのです。
そのため法令の改正や新たな通知の発出があった際には、これに合わせて経理規程も見直さなければなりません。

しかし、多くの社会福祉法人ではモデルをもとに経理規程を作成したまま必要な見直しを行っていなかったり、あるいは法令や通知の定めに反したアレンジを施している可能性もあります。

契約方法の基準が誤っていませんか?

今回は一例として、契約に関する事項を取り上げます。

モデル経理規程では契約に関する章があり、「一般競争契約」「指名競争契約」「随意契約」や「契約書」などについて定められています。
これらの基礎となる通知が「社会福祉法人における入札契約等の取り扱いについて」(平成29年3月29日)です。

参考:厚生労働省「社会福祉法人における入札契約等の取扱いについて

例えば、モデル経理規程では契約の際は入札が原則とされ、一定の場合には入札によらない随意契約が認められています。
その具体的な判断基準については、本通知でより詳細に規定されています。

そして、注意しなければならないのが、見積もり業者数の価格判断基準です。
随意契約を行う場合でも、複数の業者からの見積もりが必要となりますが、モデル経理規程のひとつでは下記のような記載があります。

合理的な理由による随意契約は、3社以上の業者から見積もりを徴し比較するなど適正な価格を客観的に判断しなければならない。ただし、予定価格が下表に掲げられた契約の種類に応じ定められた額を超えない場合には、2社の業者からの見積もりを徴し比較するものとする。

契約の種類 金額
1 工事又は製造の請負 250万円
2 食料品・物品等の買入れ 160万円
3 前各号に掲げるもの以外 100万円

参考:厚生労働省「小規模社会福祉法人向け経理規定例

こちらに記載の金額を法人側でより大きな額に書き換えていることが見受けられることがあります。
大きく変更したほうが見積もりを徴する対象が減るからです。

しかし、この金額基準自体が通知で明確に定められたものであるため、恣意的に金額を大きくすることは通知違反となってしまいますので、注意しましょう。
一方、上記金額を小さく変更することは認められています。

民法改正により見直しが必要な場合も

民法改正により見直しが必要な場合も

また、モデル経理規程では契約書の作成に関しても定められており、契約書に記載すべき事項として次の事項が列挙されています。

  • (1)契約履行の場所
  • (2)契約代金の支払いまたは受領の時期および方法
  • (3)監査および検査
  • (4)履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
  • (5)危険負担
  • (6)瑕疵担保責任
  • (7)契約に関する紛争の解決方法
  • (8)その他必要な事項

ここで注意すべきは、「瑕疵担保責任」という文言です。

令和2年4月の民法改正により、「瑕疵担保責任」という文言は「契約不適合責任」に変更されました。
これは単なる文言の変更にとどまらず、買主側の請求可能な権利の範囲や要件も変更されています。

多くの社会福祉法人が参考にしているモデル経理規程は、平成29年の社会福祉法人会計基準の改正時に策定されたものが多いため、少なくともこの文言の変更は必要です。

また、民法改正の影響で「危険負担」に関する考え方も変更されていますので、経理規程の見直しに加え、今後契約書を締結する際にも内容を再確認した方がよいでしょう。

おわりに

今回は社会福祉法人の経理規程と法令・通知の関係について、契約に焦点をあててご説明しました。
経理規程を見直すと、法令と異なる点や、採用している会計処理と乖離がある点が見つかるかもしれません。

実務を行う上で経理規程はルールブックであり、これが適切でなければ正しい運営はできません。

今回ご紹介した通知や改正は数年前のものですが、経理規程は法人運営や内部統制にとって必須なもののひとつです。ぜひ再確認するきっかけにしていただければ幸いです。

私たち辻・本郷 税理士法人では社会福祉法人専門の部署を設けています。規程の作成や見直しに関するご相談することもできますので、お気軽にお問い合わせください。

執筆担当:新宿ミライナタワー事務所
 社会福祉法人部 藤江 高寛
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