本記事は「全財産を長男に遺す」と書かれた遺言書がお手元にあり、その遺言書に納得がいかない方を対象に、1人に全財産を相続させると書かれた遺言書は無効であるのかどうかについて解説します。
※遺言書で全財産を相続するよう指定された人が、「長男」でなく他の相続人であっても、見解は同じです。本記事では説明の関係上、「長男」と統一して記載しています。
目次
1.遺言書に「全財産を長男に遺す」と書かれていても、即無効とはならない
遺言書に「全財産を長男に遺す」と書かれていても、その遺言書が即無効にはなりません。
遺言書に記載する遺産分割の内容は、遺言者が自由に決めることができます。
しかし、遺言書に形式的な不備があった場合、遺言書が無効となることがあります。
また、あなたが遺留分を持つ法定相続人であるならば、遺言書に「全財産を長男に遺す」と書かれていたとしても、遺産の一部を遺留分として受け取ることが可能です。
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遺言があっても遺留分は貰える?ケース別まとめ
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遺言書が有効か無効か判定できる14のチェック項目
2.遺言書に形式的な不備があれば、無効になる場合がある
遺言書に「全財産を長男に遺す」と書かれていても、その遺言書が即無効になることはありませんが、形式的な不備がある場合は無効になります。
遺言書の形式は民法で明確に定められており、その定めに沿ってない形式で作成された遺言書は無効です。
お手元にある遺言書に不備がないか、以下のチェック項目で確認してください。
一つでも不備があれば、その遺言書は無効となります。
また、各チェック項目をクリックいただくと、詳細をご覧いただくことができます。
3.遺言書に形式的な不備がない場合は、遺留分の請求を検討する
遺言書に形式的な不備がない場合は、遺留分の請求を検討しましょう。
遺留分を請求する権利は、基本的に相続の開始・遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内しかありません。請求する場合は早めに手続きを進める必要があります。
遺留分の請求は以下の3ステップで行います。
ステップ1 | 自分には遺留分を請求する権利があるか確認する |
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ステップ2 | 家庭裁判所に遺留分侵害額の請求調停を申し出る |
ステップ3 | 家庭裁判所に遺留分侵害額の請求訴訟を提起する |
ステップ1:自分には遺留分を請求する権利があるか確認する
まず、自分には遺留分を請求する権利があるのか確認しましょう。
遺留分を請求する権利があるのは、配偶者、子(代襲相続人も含む)、直系尊属(父母、祖父母)です。
兄弟姉妹には遺留分はありません。
ステップ2:家庭裁判所に遺留分侵害額の請求調停を申し出る
家庭裁判所に遺留分侵害額の請求調停を申し出ましょう。
具体的な手続き方法は、以下のHPに記載されています。
■裁判所HP 遺留分侵害額の請求調停
ステップ3:家庭裁判所に遺留分侵害額の請求訴訟を提起する
遺留分侵害額の請求調停が不成立となった場合、あらためて裁判所に訴訟を提起します。
訴状という書面を作成して、被相続人がお亡くなりになったときの住所地を管轄する裁判所に対してこの訴状を提出することで提起することができます。
また、訴訟の際は、事実関係を法律的に主張したり、遺留分が侵害されていることを証明する証拠を集める必要があるので、弁護士に依頼することをおすすめします。
4.まとめ
「全財産を長男に遺す」と書かれた遺言書がお手元にあり、その遺言書に納得がいかない方を対象に、1人に全財産を相続させると書かれた遺言書は無効であるのかどうか解説してまいりました。
最後に本記事の大切なポイントをもう一度振り返ります。
- 遺言書に「全財産を長男の遺す」と書かれていても、即無効とはならない
- ただし、遺言書に形式的な不備があれば、無効になる場合がある
- 遺言書に形式的な不備がない場合は、遺留分の請求を検討するべき
本記事がみなさんの相続手続きの一助になれば幸いです。