貸金庫の中身は相続税申告の対象です。お亡くなりになった方の財産は基本的にすべてが相続税申告の対象となりますので、貸金庫の中の財産についても同様となります。それが現金や貴金属のように、足がつきにくそうな財産であっても、必ず申告しなければなりません。
また、遺言書が入っている可能性がある場合や、認識していない財産が入っている可能性がある場合、相続放棄の可能性がある場合には、できるだけ速やかに手続きを行う必要があります。
本記事をお読みになった皆さんが、貸金庫の相続税申告に関わる疑問を解消し、最小限のコストで正確な相続税申告を終えることを、心からお祈りしております。
目次
1.貸金庫の中身は相続税申告の対象
貸金庫の中身は相続税申告の対象です。お亡くなりになった方の財産は基本的にすべてが相続税申告の対象となりますので、貸金庫の中の財産についても同様です。現金や貴金属のように、足がつきにくそうな財産であっても、税務署は被相続人の財産状況を把握することができますし、金融機関等も調査する権限を有していますから、必ず申告しなければなりません。
また、借り入れなどマイナスの財産も同様です。例えば貸金庫の使用料が未納であった場合には、その債務も、相続の対象となります。
2.貸金庫の中身をなるべく早く確認すべき2つの理由
遺言書が入っている可能性がある場合、または、貸金庫の中身について把握していない場合には、できるだけ早く貸金庫の中身を確認しましょう。
2-1. 遺言書が入っている可能性があるから
亡くなった方が遺言書を貸金庫に入れている可能性がある場合には、できるだけ早く中身の確認を行わなければなりません。遺言書がある場合、基本的には、それをもとに遺産分割を進めていく必要があるからです。苦労して遺産分割を進めていたのに、あとになって遺言書が見つかってしまって、一からやり直すという事態にならないように注意しましょう。
2-2. 貸金庫の中に、相続人が認識していない財産があるかもしれないから
相続税申告を行うにあたり、お亡くなりになった方の財産の正確な把握は大変重要です。それにより、そもそも相続税申告が必要なのか、どのような手続きが必要なのかが変わってくるからです。
貸金庫の中には、金や実印など相続人が認識していないものが入っている可能性がありますから、できるだけ早く中身の確認を行いましょう。
特に、マイナスの財産があるなど、相続放棄・限定承認の可能性がある場合、その手続きは3か月以内に行わなければなりません。契約機関によっては金庫を開けるのに時間を要する場合もあるので、できるだけ早く手続きを進めましょう。
3.貸金庫を開ける方法
貸金庫を開けることができるのは、原則として本人のみです。生前に定められていた代理人も、亡くなった後は開けることができません。亡くなった後は、相続人全員の同意のもとで開けるのが基本です。
3-1. 相続人全員の同意を得る
貸金庫の中身は相続財産ですので、それについて遺言書で指定されていない場合、遺産分割協議書で合意形成がされていない場合は、相続人全員が相続する権利を有しています。
ですから、貸金庫を開ける際には、原則的に相続人全員から同意を得ることが必要です。合意形成ができたら、その事実を証明できるように、同意書を作成しておきましょう。契約機関によっては、所定の用紙があるので事前に確認しておきましょう。
3-2. 契約機関で申し込み手続きを行う
必要書類や手続きは、契約機関により異なります。所定の用紙がある場合も多いので、必ず契約機関に事前に連絡をして確認しましょう。下記は求められる書類の一例です。
- 貸金庫の鍵もしくはカード
- 貸金庫開扉申請書、相続に関する依頼書(契約機関所定のもの)
- 遺産分割協議書や同意書
- 貸金庫の契約者が死亡したことが分かる除籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 貸金庫契約時の届出印
- キャッシュカード(銀行の場合)
貸金庫の鍵もしくはカードがない場合には、再発行の手続きが必要となる場合があります。再発行手数料の相場は1万円~3万円ほどで、再発行されるまでは金庫を開けることができません。鍵やカードが見つからない場合は、なるべく早く手続きを進めるようにしましょう。
3-3. 相続人全員、もしくは代表者が開ける
貸金庫を開ける際には、公平性の確保のため、基本的に相続人全員の立ち会いが望ましいです。しかし、相続人が遠方にいる場合や、入院している場合、スケジュールが合わない場合など、全員が立ち会うのは難しいことが多いでしょう。
大手金融機関では、相続人全員の同意があれば、代表者だけで開けられることが多いようです。具体的には、所定の用紙に相続人全員の署名・押印などが求められます。
また、欠席する相続人の委任状があればよい場合、司法書士などの代理人が立ち会えば良い場合など、契約機関によって対応が異なりますので、あらかじめ確認しておきましょう。
また、相続人全員の立ち会いがない中で、中身を持ち帰る場合には、不正が行われていないことを証明するために、公証人の立ち会いを求められることもあります。公証人がいる場合は、貸金庫の中に何が入っていたかを「事実実験公正証書」を作成して証明することができます。
4. 遺言に書かれている指定された者が開ける
上記の通り、基本的には貸金庫は相続人全員の同意のもとで開けるのが原則ですが、遺言書で貸金庫についての指示や権限が明確に指定されていた場合は例外です。具体的には、遺言執行者に、貸金庫の開扉、中身の取り出し、解約の権限を与える旨を記載していれば、当該遺言執行者が一人で貸金庫を開けることができます。この場合も、金融機関によって追加で書類が必要となることがありますので、事前に確認しておきましょう。また、遺言書があっても貸金庫についての明確な記載がないような場合は、あくまでも通常通り、相続人全員の同意のもとで開けることになる可能性がありますので注意しましょう。
5.相続人の連絡先が不明で、同意を得られない場合の対処法
相続人の連絡先が分からない場合は、まず「戸籍の附票」を取り寄せましょう。
戸籍の附票には、今までの住所が記録されています。ただし、転籍等により本籍を他の市町村に変更していると、現在の附票には、現在の本籍にした日以降の住所しか記録されていませんので注意しましょう。
住所を調べて、手紙を送ったが宛名不明で帰ってきてしまったり、訪問してみたが別人が住んでいたり、空き家だった場合については、下記のリンクに対処法をまとめていますので、ご覧ください。
6.まとめ
貸金庫の中身は相続税申告の対象です。期限内に正しい相続税申告を行うためには、貸金庫の中身はできるだけ早く確認する必要があります。
相続人全員の同意書の作成や、鍵を再発行する場合など、時間がかかることもありますので、できるだけ早く契約機関へ手続きについて問い合わせましょう。
最後に、ご自身が遺言書を作成される場合には、すぐに相続人に読んでもらうためにも、遺言書を貸金庫に入れないように注意しましょう。また、相続人が手続きをスムーズに進められるように、遺言書には貸金庫の扱いについても詳細に記述しておきましょう。
貸金庫の相続手続きについて、疑問がある場合は、辻・本郷 税理士法人にお気軽にご連絡ください。
皆さんが、貸金庫の相続税申告に関わる疑問をすべて解消し、最小限のコストで正確な相続税申告を終えることを、心から祈っております。
下記は貸金庫に入っていることが多いものと、その相続方法についてのリンクです。相続税申告の際のご参考にしていただけますと幸いです。