推定相続人とは?定義や特定方法、法定相続人との違いまで解説します

「推定相続人ってどのようなもの?」
「法定相続人とは何が違うの?」

相続について調べていると法定相続人という言葉はよく目にします。
それに比べると、推定相続人はあまり見慣れない言葉のように感じられる方も多いのではないでしょうか。
推定相続人とは何なのか、法定相続人との違いから該当する人の特定方法まで本記事では紹介しています。
推定相続人について知っておき、誰が該当するのかを把握できれば、これから起こりうる財産の相続に対して対策を立てやすくなります。

推定相続人について知りたい方、将来起こる相続をスムーズに完了できるよう備えたい方はぜひ読んでみてください。


1.推定相続人とは現時点で相続権があると推定される人のこと

推定相続人とは、現時点で財産の相続権があると推定される人のことです。
ある人が今亡くなったと仮定したときに、亡くなった人(被相続人)の財産を引き継ぐ権利を持っていると予想される人を指します。

「推定相続人」とよく似た言葉に「法定相続人」がありますが、「法定相続人」は相続発生後に財産の相続権を実際に持った人のことを表すため、「推定相続人」とは少し定義が異なります。
時系列で「推定相続人」と「法定相続人」を見てみると、以下のようになります。

また推定相続人と法定相続人の定義をそれぞれ比較してみると、推定相続人には大きく二つの特徴があることが分かります。

①被相続人が存命している
②相続の権利が発生していない

1-1.推定相続人の特徴①:被相続人が存命している

推定相続人は、被相続人の存命時における相続予定の人を指します。
例えば被相続人の生前、妻と子が財産を引き継ぐと予想される場合は、その妻と子が推定相続人と表現されます。

対する法定相続人は、被相続人の死亡後に実際に相続権が発生した人です。
先ほどの例で推定相続人とされた妻と子は、被相続人の死亡後は法定相続人と呼称される形になります。

1-2.推定相続人の特徴②:相続の権利は発生していない

推定相続人には、財産を相続する権利が発生していません。
相続する権利が発生するのは、被相続人が亡くなった後だからです。

一方、法定相続人は被相続人が亡くなった後に民法の定めによって相続できる人なので、財産を相続する権利が発生しています。

現在推定相続人である人が、必ずしも法定相続人になるとは限りません。
推定相続人はあくまで相続権を持つであろうと推定されている人であり、被相続人が亡くなるまでに以下に挙げるような事例が発生すれば、今現在と顔ぶれが変化するからです。

  • 被相続人と配偶者が離婚してしまう
  • 推定相続人とされていた人が、被相続人より先に亡くなってしまう
  • 推定相続人とされていた人が相続欠格に該当したり、相続廃除を受けてしまう
  • 遺言書がある場合(遺留分との兼合い)

2.推定相続人の順位や範囲は法定相続人と同じ

推定相続人の順位や範囲は法定相続人と同じです。
推定相続人と法定相続人の違いは、あくまでどの時点において財産を引き継ぐ人を呼称するかだけだからです。
したがって推定相続人の順位・範囲は法定相続人と同様、以下のようになります。

推定相続人の範囲および相続順位
第一順位:被相続人の子(養子含む)
子が亡くなっており、孫がいる場合は孫に相続権が移る
第二順位:被相続人の父母
父母が亡くなっており、祖父母が健在の場合は祖父母に相続権が移る
第三順位:被相続人の兄弟姉妹
兄弟姉妹が亡くなっており、甥や姪がいる場合は甥や姪に相続権が移る
※配偶者は必ず推定相続人となる


3.推定相続人とならない2つのケース

1章で述べた死亡や離婚の発生以外で、配偶者や親族が推定相続人とならないケースを2つご紹介します。

3-1.相続欠格者となっている

相続欠格者となっている人は推定相続人とはなりません。
相続欠格とは、民法891条に定められている「相続人の欠格事由」に該当する者で被相続人との身分関係に係わらず、相続権を失うという制度です。
相続欠格事由は以下のようなもので、こうした相続の法秩序を乱すような行為を行った人には相続の権利が発生しないため、推定相続人には当たりません。

第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。
ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

引用:e-Gov法令検索『民法』

3-2.推定相続人の廃除を受けている

推定相続人の廃除を受けている人は推定相続人とはなりません。
推定相続人の廃除とは、被相続人が相続するのにふさわしくないと考える者に、財産が引き継がれないよう家庭裁判所に申し立てを行えるという制度です。
請求が認められれば、申し立てを受けた者には相続の権利が発生しないため、推定相続人には当たりません。
ただしどのような理由でも廃除が認められるわけではなく、民法892条では以下のように定められています。

第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

引用:e-Gov法令検索『民法』

なお兄弟姉妹は廃除の対象外となります。
兄弟姉妹は遺留分(相続人に保障された最低限の遺産取得分)が定められていないため、廃除の手続きを行わなくても遺言書に記載することで財産を引き継がせないようにできるからです。


4.推定相続人を特定するには戸籍謄本を収集する

推定相続人を特定するには、被相続人の戸籍謄本の収集を行います。
出生から現在までの連続した戸籍謄本を収集することで、被相続人のこれまでの婚姻歴や子供の有無などがすべて判明し、推定相続人を的確に把握することができるからです。

戸籍謄本は被相続人の本籍地の市区町村役場で取得できます。
方法としては役場窓口へ直接申請に赴くか、郵送による申請の二通りです。
ただし出生から現在までの間に戸籍の変更があると、変更前の戸籍の謄本を遡って取得する必要があります。
現在の本籍地で取得した戸籍謄本では、現時点での情報しか記載されていないからです。

現在から出生まで遡って戸籍謄本を取得する具体的な方法や、必要なものなどは以下のサイトをご参照ください。
こちらでは相続発生後における被相続人の戸籍謄本の取得方法を紹介していますが、生前に推定相続人を特定する場合でも方法は同じです。

被相続人の戸籍謄本とは?取得方法からよくある疑問まで解説します

法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)

ちなみに実際の相続手続き上でも被相続人の戸籍謄本を使用しますが、このとき求められるのは被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本なので注意が必要です。


5.まとめ

推定相続人について把握しておくと、死後の相続に関してシミュレーションしやすくなり、遺言書の作成など相続対策に役立てられます。
親族間で情報共有しておけばこれから発生する相続に備えられ、相続発生後に親族同士で揉めてしまうリスクを減らせる可能性もあるでしょう。

ただ結婚や離婚、引っ越しによる本籍地の変更などが発生していると、推定相続人にが誰なのかを把握するのはかなりの手間がかかります。
推定相続人の調べ方や判定等でお悩みの方は、専門家に相談することも一つの手です。

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