相続人不存在とは?手続きから財産の行方まで丁寧に解説

あなたに相続人はいますか?
もし、誰もいない場合は「相続人不存在」となり、大切な財産が国のものになってしまいます。

そんな方へ、「相続人不存在」とは、どんなことなのかを丁寧に解説しました。ぜひ参考にしてみてください。


1.相続人不存在とは

相続人不存在とは、遺産を相続する人が誰もいないことをいいます。

例えば、亡くなった人に親族がおらず法定相続人が存在しない場合や、法定相続人全員が相続放棄をした場合等です。

また、法定相続人と連絡が取れない場合や、行方不明の場合は「相続人不存在」とはなりませんので気を付けましょう。

連絡の取れない相続人がいた場合の対処方法6選


2.相続人不存在になってしまう3つのケース

相続人不存在となるケースを一つずつ、確認していきましょう。

2-1.法定相続人がいないケース

法定相続人とは、下記の図の様な人です。
亡くなった人に、配偶者、子ども、父母祖父母(直系尊属)及び兄弟姉妹がいない場合は相続人不存在となります。

この図にはありませんが、代襲相続で孫や、姪甥がいる場合は「相続人不存在」とはなりませんので注意が必要です。

法定相続人に関して詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
法定相続人とは誰なのか?迷いやすい10の事例つき

2-2.全員相続放棄したケース

法定相続人がいたとしても、法定相続人全員が相続放棄をすると「相続人不存在」となります。

相続放棄とは、相続が開始したことを知ってから3か月以内に、亡くなった人の住所地を管轄する家庭裁判所に書類を提出し、受理されることによって認められます。

相続放棄に関して詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
相続放棄の期間は3ヶ月!期限を過ぎた時の対処法や期間伸長の申立を解説!

2-3.相続欠格・相続廃除で相続人がいないケース

法定相続人がいたとしても、相続欠格・相続廃除になっている場合は「相続人不存在」となります。

相続欠格とは、法律に抵触する重大な事象を起こしたため、亡くなった人の意思とは無関係に相続する権利が失われることです。
相続廃除とは、亡くなった人の意思に基づいて、相続する権利を剝奪することです。


3.相続人不存在の場合の財産はどうなるのか

大きく分けて、3パターンあります。

・特別縁故者に財産分与される
・遺言書がある場合は、遺言で指定された人に渡る
・国庫に帰属

一つずつ確認していきましょう。

・特別縁故者に財産分与

相続人不存在の場合には、特別縁故者が財産を貰える可能性があります。

特別縁故者とは、亡くなった人と縁の深い人のことを指します。
例えば、下記の様な人です。

【特別縁故者】
・亡くなった人と生計を同じくしていた者
内縁の配偶者、事実上の養子・養親

・亡くなった人の療養看護をしていた人

・被相続人と特別な縁故があった人
口約束をしていた人、師弟関係等の密接な関係があった人、
亡くなった人が生前に経営者として組織に深く関わっていた公益法人・学校法人・宗教法人

上記の様な人が、申立を行うと、家庭裁判所が亡くなった人と本当に縁があったのか等を調査し、財産分与をするかどうかを決めます。

特別縁故者として、財産分与を受けたい場合は5章に記載した手続きを行う必要がありますので、確認しておきましょう。

・遺言書がある場合は、遺言で指定された人が貰う

遺言書が遺されていた場合は、遺言書で指定された人が財産を貰うことになります。

遺言書で財産を貰うことを遺贈と言い、財産を貰う側は法人や慈善団体等誰でも可能となりますので、特定の相手が決まっていれば遺言書を遺しておきましょう。

・国庫に帰属

特別縁故者もおらず、遺言書もない場合は国庫に帰属し、財産は国のものになってしまいます。
国庫に帰属することは、民法959条に定められており年々この額は増え、何百億円とも言われています。

せっかく、ご自身の努力により築き上げてきた財産ですので、遺したい相手がいる場合は遺言を遺しておきましょう。


4.相続人不存在の場合の手続き

3章で少し触れましたが、もしも、自分が特別縁故者になり得る可能性がある場合は、どの様な手続が必要なのでしょうか。順番に確認していきましょう。

①相続財産清算人の選任

まず、相続財産清算人を選任します。

相続財産清算人とは、亡くなった人の財産を管理・精算できる人のことです。特別縁故者等の利害関係者や、検察官が家庭裁判所に申し立てを行います。その後、本当に相続人がいないのか亡くなった人の死亡を官報で2カ月間公告します。

インターネット版官報

それでもいない場合には、相続財産清算人が選任されます。

通常は、地域の弁護士が家庭裁判所から選任されることになっています。

詳しくは、下記の記事をご覧ください。
相続財産清算人(相続財産管理人)とは|選任が必要な3つのケースと費用・流れ

②債権申立ての広告

相続人がいなかった場合、債権者や財産を貰うことになっていた人がいないか公告します。
期限は2ヶ月以上に設定します。

③相続人捜索の広告

相続人が見つからない場合は、さらに相続人捜索の公告を行います。この期限は6ヶ月以上で設定します。

④相続人不存在の確定

広告を出しても見つからない場合、ようやく「相続人不存在」が確定します。

⑤特別縁故者への財産分与の申立て

相続人不存在の確定後、3ヶ月以内に特別縁故者が家庭裁判所に申立てをし、認められれば財産分与が行われます。

3ヶ月以内に申立てが無い、または、申立てが却下された場合は、亡くなった人の遺産は国庫に帰属となります。


まとめ

相続人不存在の場合は、せっかく築き上げた大切な財産が国のものになってしまうかもしれません。
そうならないためにも、遺言を遺すことをお勧めいたします。

辻・本郷 税理士法人の相続税申告サービス
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