「私は独身者だ。
私が万が一亡くなったら、法定相続人は誰になるのだろうか?」
本記事はこのようなお悩みを抱えている、独身者の相続について解説しています。
近年はライフスタイルが多様化し、独身の人が増えています。
一方で、相続の例として本や雑誌・ネットにある情報は、配偶者や子供がいる事例ばかり…。
独身の方にとって、分かりにくいものが大半です。
そんな声にお応えして、独身者の相続に特化した記事を作成いたしました。
この記事をご覧いただければ、独身者の相続について、網羅的に理解することができます。
【この記事を読むとわかること】
本記事が独身者の方がご自身の相続を考える第一歩となれば幸いです。
目次
1.独身者が亡くなっても、法定相続人の考え方に大きな違いはない
独身者が亡くなっても、法定相続人の考え方に大きな違いはありません。
配偶者がいないだけで、その他の法定相続人の考え方は配偶者や子供がいる人と同じです。
■法定相続人についての詳細はこちら
法定相続人とは誰なのか?迷いやすい10の事例つき
2.独身者が亡くなった場合における、3つの法定相続人のパターン
独身者が亡くなった場合における、3つの法定相続人のパターンを紹介します。
2-1.第1順位:子供
独身者が過去に結婚しており、その元配偶者との間に子供がいた場合は、たとえ子供の親権が元配偶者であったしても、子供が法定相続人になります。
また、結婚していない女性との間に子供が生まれており、その子供を認知していた場合も、その子供は法定相続人です。
2-2.第2順位:親などの直系尊属
独身者に子供がいない場合は、第二順位の法定相続人である親などの直系尊属が法定相続人になります。
親が両方とも存命である場合の法定相続分は1/2ずつとなります。
2-3.第3順位:兄弟姉妹
独身者に子供がおらず、親などの直系尊属も既に他界している場合は、第三順位の法定相続人である兄弟姉妹が法定相続人になります。
兄弟姉妹が複数人いる場合、原則として均等に分けます。
また、被相続人である独身者が亡くなる前に、兄弟姉妹が亡くなっていた場合、兄弟姉妹の子供(甥・姪)がいる場合は、その甥・姪が独身者の遺産を代襲相続します。
ただし、代襲相続は甥・姪の一代のみで、大甥・大姪には代襲相続する権利はありません。
3.法定相続人が誰もいない場合、独身者の相続財産はどうなるのか
では、独身者が亡くなった際、2章で紹介した法定相続人が誰もいない場合、相続財産はどうるのでしょうか。
具体的なシチュエーションとしては、子供のいない独身者が、一人っ子であり、両親も既に他界している場合などです。
3-1.相続財産清算人によって、遺産の精算が行われる
まず、相続財産清算人によって遺産の清算が行われます。
相続財産清算人は、被相続人の利害関係者や検察官などが家庭裁判所により申し立てることによって選任されます。
なお、申し出る利害関係者とは、以下のような「法定相続人ではないが、被相続人の遺産を欲している人」です。
- 債権者(被相続人に金銭や住居などを貸していた人)
- 特定受遺者(遺言によって遺産を取得する人)
- 特別縁故者(事実上の妻や夫または被相続人を献身的に看護していた人など)
相続財産清算人が家庭裁判所で選任されると、官報で公告されます。
そこから一定期間を過ぎても相続人が名乗り出ない場合は、相続財産清算人によって、債権者や特定受遺者に財産が分配されます。
※相続財産清算人は、以前は相続財産管理人という名称でしたが、民法の改正により令和5年4月1日から名称が変更されました。
3-2.特別縁故者へ財産分与される
相続財産清算人によって債権者や特定受遺者に財産が分配されたのち、残った財産があれば特別縁故者に与えられます。
特別縁故者とは、法定相続人ではないものの、被相続人と特別の縁故があった人のことです。
特別縁故者として認められるには、家庭裁判所の承認が必要であり、その条件は以下の通りです。
- 被相続人を療養看護していた
- 被相続人と同一生計にあった(内縁の妻や夫、事実上の養子・養親など)
- 上記の関係に準じて特別の縁故があった
なお、特別縁故者になるための手続きの詳細については、以下の裁判所のHPに詳しく掲載されています。
■裁判所HP:特別縁故者に対する相続財産分与
特別縁故者に対する相続財産分与
3-3.国庫へ帰属する
債権者、特定受遺者、特別縁故者がいない場合や、これらの人に財産が分配されてもなお余った場合は、財産は相続財産清算人によって国庫に納められます。
4.独身者が行うべき生前対策
独身者が行うべき2つの生前対策を紹介します。
独身者は概ね一人で生活している場合が多く、相続財産や被相続人の想いを適切に把握している人がおらず、相続手続きが難航するケースがよくあります。
きちんと生前対策を行うことで、あなた自身の「想いと財産」を次の世代へ繋げましょう。
4-1.公正証書遺言書を作成する
財産を残したい人がいる場合は、公正証書遺言を作成しましょう。。
遺言書の種類には自筆証書遺言と公正証書遺言の2つがありますが、自筆証書遺言は無効となるリスクが高いのでおすすめできません。さらに、独身者の場合、自筆証書遺言を作成しても死後発見されにくいというデメリットがあります。
遺言書を作成するのであれば、公正証書遺言がおすすめです。
公正証書遺言を作成すると、財産を誰に渡し、どのように使って欲しいのかという意思を、法的な拘束力のある文章にすることができます。
また、法定相続人以外の友人や知人、同性の恋人などに財産を渡すことも可能ですし、自治体や学校・団体などに寄付をすることもできます。
■公正証書遺言についての詳細はこちら
日本公証人連合会HP:公正証書遺言とは、どのようなものですか?
4-2.エンディングノートの作成する
エンディングノートを作成しましょう。
エンディングノートには
- 財産の一覧
- 家族構成・連絡先
- 葬儀の規模や種類
- 埋葬方法の希望
など、相続手続きを行う人に伝えておきたいことを漏れなく書き込むことができます。
エンディングノートを作成することで、相続手続きを行ってくれる人の負担を軽減することができます。
4-3.生命保険を活用する
特定の財産を渡したい相手がいる場合は、生命保険を活用しましょう。
生命保険の死亡保険金は受取人固有の財産であるため、遺産分割の対象とはなりません。
生命保険に加入し、受取人を財産を渡したい相手にすれば、その保険金は必ずその人のものとなります。
以前は配偶者や親族ではない「他人」が受取人となることは、保険が不適切に利用される可能性があるため、原則できませんでした。
しかし、近年ライフスタイルの多様化を背景に、戸籍上は他人であっても、事実上は「家族」と呼べる関係性を持つ人であれば、受取人に指定することができる保険会社が増えています。
戸籍上は他人であっても、事実上は「家族」と呼べる関係性を持つ人の例
- 事実婚のパートナー
- 内縁のパートナー
- 同性のパートナー
4-4.非営利団体等に寄付をする
非営利団体等に寄付をする独身者の方も多くいらっしゃいます。
非営利団体とは、日本赤十字や(公財)国連ユニセフ協会のような団体です。
国庫に帰属するのであれば、活動の趣旨に賛同できる非営利団体等に寄付をした方がよいと考え、遺産を寄付するようです。
5.まとめ
独身者の方を対象に、独身者の相続について解説してきました。
最後に本記事の重要なポイント4点をもう一度振り返ります。
本記事が独身者の方がご自身の相続を考える第一歩となれば幸いです。