相続税申告書は連名で提出すべきか?それとも個人で提出すべきか?

相続税申告が必要になった!多くの人が、初めての経験で、不安になると思います。申告をしなければいけないことは分かったが、相続人全員連名で申告するのだろうか。それとも、一人ずつ申告するのだろうか。相続人同士であまり仲が良くないが、一緒に申告しなければいけないのだろうか。様々な状況でお悩みだと思います。この記事では、相続税申告は連名か、一人ずつが良いのか、リスクはあるのか等、様々なケースを交えて解説していきたいと思います。最後までお付き合いください。


1.相続税申告書は、連名で提出することをおすすめします

相続人が複数いる場合は「共同相続」となり、基本的に相続人全員が1つの申告書に連名を記して提出します。
法律等で「連名」で提出しなければいけないという決まりはありませんが、8割以上のお客様が一つの申告書に「連名」で提出しています。


2.連名での提出がふさわしくない4つのケース

1章では、通常は連名で提出する事をお話ししましたが、一人ずつ提出する事も珍しくはありません。
では、どのような場合に一人ずつ提出するのでしょうか。

2-1.相続人の一人が遺産を隠している可能性が高く、遺産の内容が不明なケース

父や母の遺産を相続した場合、兄弟が相続人となります。親と同居していた長男などが親の預貯金などの遺産隠しをするケースがあります。いざ、相続税申告をする際に長男へどのような遺産があるか確認すると、「親の遺産はこれしかない」と言って一部の預貯金のみ開示し、異常に少ない場合があります。このような場合は、申告の内容を不服として、兄弟で一緒に申告しないこともあります。
実際に起きた事例として、「2023/01/08(水)15:00配信 FRIDAYデジタル」で取り上げられているように同居していた長男が、父からもらったお金を兄弟に黙っていたケース合があります。最終的には税務調査が入り、追徴課税を支払うことになってしまったのです。あまり多くはないですが、こういうケースもあることを覚えておきましょう。(引用:FRIDAYデジタルより)

2-2.遺産の分け方がなかなか決まらず、仲違いし連名で提出するのも嫌になったケース

資料収集までは、相続人同士仲良くしていたが遺産分割協議の際に揉めてしまい、仲違いしてしまう場合があります。お金にまつわる話になるので、一度揉めてしまうと一緒に申告するのも嫌になってしまう場合もあります。例えば、遺産の多くが自宅等の不動産を占めている場合、分け方で揉めてしまう事が多いです。現金が少なく、自宅を売却して現金化するわけにもいかず話がこじれてしまうケースがあります。実際にある事例となりますので、気を付けましょう。

2-3.相続税申告に協力的でないケース

相続税申告は相続人全員の関与が必要となります。普段付き合いのない相続人とも連絡を取らなければいけなくなり、疎遠な相続人だと連絡を無視される場合もあります。相続税申告の内容をよく理解できなったり、必要書類を準備するのが面倒等、このように理由は様々ですが、相続人の中に協力的でない人がいる場合もあります。私が実際に体験した事例としては、いくら連絡しても、書類をお送りしても受取期間が過ぎてしまい書類が帰ってきてしまう事がありました。申告期限も迫っていたこともあり、仕方なく連絡が取れない方以外で申告書を提出したケースもあります。非常に珍しいケースですが、実際に起こりうるので覚えておきましょう。

2-4.ほかの相続人が依頼している税理士に依頼したくないケース

他の相続人が依頼した税理士が、信頼できなかったり、合わない等で、その税理士に頼みたくない場合には別の税理士に依頼する場合もあります。このケースもあまり多くはないですが、元々相続人同士で揉めている場合で、もう一人の相続人のする事全てが信用できない等の理由で別々で依頼が来ることもあります。
非常にレアケースとなりますので、頭の片隅に置いておきましょう。


3.一人ずつ提出する場合の注意点

2章では一人ずつ提出するケースを紹介しましたが、この場合は、「共同申告」するよりも、リスクが多いため注意が必要です。3章では、どのような注意点があるのか解説していきたいと思います。

3-1.税務調査の対象になりやすい

相続人ごとに相続税の申告書を提出するということは、同じ被相続人の申告書が2種類税務署へ提出されることになります。それぞれ遺産の種類を把握し、申告書を作成するため内容が異なってしまう可能性があります。計算する人がどう解釈するかによって財産の評価額が変わるため、納税額にも大きな違いが出てしまいます。1つの相続につき、内容の異なる複数の申告書が税務署に届くことになれば、当然税務署の職員の目に留まり、税務調査の対象になる可能性が高いです。

3-2.税務調査が入り、追加の税金が発生する

相続税申告書は、提出後、税務署で不備がないかチェックされます。それぞれの相続人が相続税申告書を別々に申告した場合、前述のように申告内容が異なることがあります。例えば、自分の申告書では納税額が50万であるのに対して、他の相続人が作成した申告書では自分の納税額が100万だったというように、相続人全員の申告書を照らし合わせ不備や矛盾がないかチェックされています。税務調査が入った場合、相続税を多めに収めていたことがわかれば、更正の請求によって返還される可能性もあります。一方で、申告漏れや納税額に間違いが発見され、足りない納税額を収める場合には、過少申告加算税が課税される可能性があります。このように、手間もお金もかかってしまう事がありますので注意しましょう。

3-3.税理士報酬が高くなる

相続人それぞれが、税理士へ相続税申告を依頼する場合、当然一人ずつ税理士報酬が発生します。

税理士報酬は、遺産の総額で金額が決めれれていることが多いです。例えば、相続人が複数人いようが、連名で提出する場合は1つの申告書となりますので60万円となります。しかし、一人ずつ申告するとなると、相続人が2人いた場合、60万円×2=120万円となってしまいます。余分な費用がかかってしまいますので注意が必要です。


4.連名で提出する時の書き方

国税庁のHPによると、「2人以上の相続人等がいる場合には、申告書の提出意思の有無を明らかにするため、申告書第1表及び第1表(続)(以下「第1表等」といいます。)には共同して提出する方のみを記載して提出してください。なお、共同して申告書を提出しない相続人等の方は、別途申告書を作成・提出していただく必要があります。」と記載されていました。​引用:国税庁HPより​​​

要するに、連名で提出する場合は、連名で提出する相続人のみ「1表」に「氏名・住所・マイナンバー」を記載するという事です。特に難しいことは無いと思います。


5.相続税申告書を提出する際のQ&A

5-1.Q.相続人が3人いるのですが、それぞれ申告書を作成しないといけないのでしょうか?

A.申告書については、通常1つの相続税申告書に複数の相続人が連名で共同で申告を行うことが多いです。特に仲が悪くないのであれば、1つの申告書で共同で提出しましょう。

5-2.Q.姉と仲が悪く、会いたくないし、どうしても一緒に申告したくないのですが、一人ずつ申告書を提出できますか?

A.相続人ごとに別々の税理士を付けて申告することになります。申告内容が異なると税務調査が入るリスクがありますので、注意が必要です。

5-3.Q.相続税申告の税理士報酬は一人ずつかかるのでしょうか?

A.大体の事務所さんが、相続人が複数名いてもいなくても、一つの申告書で数十万円(遺産総額の1%が相場)となります。別々の税理士ににお願いする場合はそれぞれ報酬が発生しますのでお気を付けください。


さいごに

相続税申告書は、基本的に「連名」で提出しましょう。相続人の皆さんで協力し合い、思いやりを持って申告していただければ、自ずと税務調査のリスクが減ると思います。また、自分たちだけで申告書を提出する事は、大きな負担となるかと思います。相続税申告をスムーズに完了させるには相続専門の税理士への依頼も1つの手段となりますので、ご検討いただけましたら幸いです。リスクのない相続税申告を目指しましょう。

辻・本郷 税理士法人の相続税申告サービス
一律66万円(税込)の相続コミコミプラン

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