相続で兄弟間の不公平を感じた場合の対処法

本記事は相続が起きた際、兄弟から不公平な分割提案をされてしまったという方を対象に、まずすべき2つのこと、その後の話し合いの際に主張すべきポイント、典型的な3つのパターン別に解説しています。

本記事をお読みになった皆さんが、問題を最小限のコストで解決し、納得のいく遺産分割を行えるよう、心からお祈りしております。


1.兄弟から不公平な提案をされた時にまずすべき2つのこと

相続時、兄弟から不公平な提案を受けた際、まずすべきこと2つ紹介します。

1-1.遺言書がある場合、有効かどうか調べる

遺言書に、兄弟間で納得のいかない遺産分割方法が記載されていた場合 、まずは、その遺言書が有効なものなのかを調べましょう。遺言書の形式は民法で明確に定められており、その定めに沿ってない形式で作成された遺言書は無効です。下記リンクに掲載されているチェック項目の中で、一つでも不備があれば、その遺言書は無効となりますので、確認してみましょう。

■辻・本郷相続ガイド 「全財産を長男に遺す」と書かれた遺言書は無効か?

1-2.相続人全員で話し合う

相続人全員で話し合いをしましょう。仮に有効な遺言書であったとしても、相続人全員の合意があれば、遺言書と異なる遺産分割をすることが可能です。

話し合いの際は、感情的にならず、法的な根拠に基づいて話し合うことが大事です。2章では、パターン別に、民法に基づく主張のポイントをまとめていますので、ぜひご活用ください。

また、自分たちだけでは冷静に話し合いが進められないと思ったら、3章に記載のとおり、弁護士に相談する、家庭裁判所に調停を申し立てることも視野にいれましょう。

※注意が必要な場合

ただし、有効な遺言書であり、相続人以外の受遺者、遺言執行者がいる場合は、その人たちの同意も必要となります。また、遺言書で、産分割協議が禁止されている場合は、話し合い自体ができませんので注意しましょう。


2.パターン別|話し合いの際の主張のポイント

下の表は、兄弟間で起こる不公平な分割案の典型的な3つのパターンと、それぞれについて、法的根拠に基づく話し合いの際の主張のポイントです。

不公平な分割のパターン
具体例
主張のポイント
遺言書に不公平な内容が記載されていた遺言書に「全財産を長男に残す」と記載されていた遺留分の侵害
(民法第1412条)
遺贈や生前贈与によって特別の利益を受けた相続人がいる長男にだけ高額な生前贈与があった特別受益があること
(民法903条)
被相続人の財産の維持・増加に特別な貢献をした人がいる長女だけが長年の介護をしていた寄与分があること
(民法第904条の2)

以下で、パターンごとに解説をしていきます。

2-1.遺言書に不公平な内容が記載されていた場合は、遺留分の侵害を主張する

「長男に全財産を残す」など、不公平な内容の遺言書であった場合、多く財産を受け取った人に対し遺留分の侵害を主張することで、遺産の一定割合を受け取れる可能性があります。

遺留分とは、法定相続人(兄弟姉妹以外)に最低限保証された遺産取得分です。遺言に全財産を特定の人へ取得させると書かれていても、遺留分を侵害することはできません。

■辻・本郷相続税コラム 法定相続分と遺留分 ~相続人の優先順位って?~

2-2.遺贈や生前贈与によって、特別の利益を受けた相続人がいる場合は、特別受益があることを主張する

「長男にだけ高額な生前贈与があった」など、特定の相続人だけが、遺贈や生前贈与によって、特別な利益を受けていた場合、特別受益を主張することで、特別な利益を受けていた相続人の法定相続分を減額できる可能性があります。

特別受益とは、お亡くなりになった方から、相続人への遺贈や生前贈与により、特別な利益を受けたことをいいます。相続時の財産のみで遺産分割を行うと、特別な利益を受けていた相続人と、何も受け取っていない相続人との間に不公平が生まれてしまいます。その不公平を解消するため、特別な利益を受けていた相続人の法定相続分を減額する制度です。

■辻・本郷相続税コラム「特別受益」「寄与分」の期限は10年まで

2-3.被相続人の財産の維持・増加に特別な貢献をした人がいる場合は、寄与分があることを主張する

「長女だけが長年の介護をしていた」など、相続人が、お亡くなりになった方の財産の維持・増加に特別な貢献をしたと認められる場合に、寄与分があることを主張することで、その相続人の法定相続分を増額できる可能性があります。

寄与分とは、お亡くなりになった方の財産の形成に貢献をしたと認められる場合に、他の相続人よりも相続分を増額する制度です。

お亡くなりになった方の子どもであれば本来は均等に財産を分けることになりますが、子どもの間で貢献度に差がある場合、全員が同額の相続財産を得るのは公平とは言えません。寄与分は、こうした不公平感を解消するものです。

※寄与分を請求できるのは、相続人に限定されていますが、特別寄与分については、被相続人の親族も対象となります。

■辻・本郷相続税コラム 特別寄与料とはどんなもの? ~制度のポイント~

■辻・本郷相続税コラム 「特別受益」「寄与分」の期限は10年まで


3.話し合いで解決できなかった場合は、家庭裁判所に調停を申し立てる

上記主張のもとで話し合いを行っても解決しない場合、または、そもそも話し合いにならない場合には、家庭裁判所に調停を申立てることができます。下の表に、パターン別に、行うべき手続きを記載しています。

なお、調停を申し立てる場合には弁護士への依頼も検討されることをおすすめします。手続きの代行や、代理人としての出席、的確な主張をしてくれるなど、メリットが大きいからです。

【リンク】遺産分割調停とは?図解を用いてわかりやすく解説

パターン
手続名
遺留分を侵害されている場合遺留分侵害額の請求調停
特別受益がある場合遺産分割調停
寄与分・特別寄与分がある場合寄与分を定める処分調停
特別の寄与に関する処分調停
その他、「長男だから全部相続する!」など単純に不平等な提案をされるなど、話し合いで解決できない場合遺産分割調停

■裁判所 相続に関する調停


4.まとめ

相続が起きた際、兄弟から不公平な提案をされてしまったという方を対象に、対処法を解説してきました。最後に大切なポイントをもう一度振り返ります。

  • 遺言書がある場合には、有効かどうか調べる
  • 関係者全員で話し合う
  • 話し合いの際、遺留分、特別受益、寄与分に該当する場合には、それらを主張する
  • 話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てる

最後に、遺産分割や相続税申告について、疑問がある場合は、辻・本郷 税理士法人にお気軽にご連絡ください。

辻・本郷 税理士法人の相続税申告サービス
一律66万円(税込)の相続コミコミプラン

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