長男の嫁に遺産相続をする権利はある?遺産を渡す方法も解説

「日頃からお世話になっている長男の嫁にも遺産を遺したい…。」
みなさんはこのような想いをお持ちではありませんか。

長男の嫁が日頃から介護をしてくれていたり、実の娘のように親しくしてもらっている場合、長男の嫁にも遺産を遺したいという想いを持つ方は多くいらっしゃいます。

しかし、残念ながら、長男の嫁には遺産を相続する権利はありません
そのため、長男の嫁に遺産を遺す場合、何らかの生前対策を行う必要があります

本記事は相続専門税理士監修のもと、長男の嫁の持つ権利、長男の嫁に遺産を遺す生前対策を解説しています。
ご覧いただければ、長男の嫁に遺産を遺す方法を知ることができるでしょう。


1.原則、長男の嫁には遺産を相続する権利はない

原則、長男の嫁には遺産を相続する権利はありません

なぜなら、長男の嫁は、遺産を相続する権利を有する法定相続人ではないからです。
法定相続人とは民法で定められた、遺産を相続する権利を持つ人のことです。

同居をしていて実の娘同然の関係であっても、実の子供に代わって長年献身的に介護をしてもらっていても、長男の嫁は法定相続人ではないため、原則、遺産を相続する権利がありません。

※特別寄与料を請求することができる可能性はあります

長男の嫁が献身的にあなたの介護を無償で行っていた場合などに、特別寄与料を請求することであなたの遺産の一部を取得できる可能性があります。

ただし特別寄与料は相続人と交渉して金額を決めたり、家庭裁判所に申し立てたりと請求するのに手間がかかります。


2.長男の嫁に遺産を渡すための4つの対策

長男の嫁に遺産を渡すための4つの対策を紹介します。

1章で紹介した通り、長男の嫁には遺産を相続する権利はありません。
そのため、長男の嫁に遺産を渡したいと思った場合は、生前に以下のような対策を取る必要があります。

2-1.【対策1】遺言書を作成する

遺言書を作成することで、長男の嫁に遺産を渡すことができます。

遺言書は法定相続分よりも優先されるので、遺言書を作成すれば、法定相続人以外の人に自分の財産を渡すことが可能となります。

ただし、遺言書を作成する際は遺留分に注意してください。
遺留分とは法定相続人に与えられた最低限の遺産相続割合です。

「長男の嫁に全財産を相続させる」といった遺言書を作成してしまうと、遺産をもらえないことになってしまった実の子供などが不満に思って、遺留分侵害額請求を行い、遺産相続トラブルに発展する恐れがあります。

また、長男の嫁が遺産を相続した場合は、相続税額が2割加算されるので注意が必要です。

■遺言書と遺留分の関係についての詳細はこちら
遺言があっても遺留分は貰える?ケース別まとめ

■相続税額の2割加算の詳細についてはこちら
No.4157 相続税額の2割加算

2-2.【対策2】養子にする

長男の嫁を養子にすることで、長男の嫁に遺産を渡すことができます。

養子は実子と同じく第1順位の法定相続人なので、遺産を相続する権利があります。
また、法定相続分も実子と変わりません。

ただし、長男の嫁を養子にすると、他の法定相続人の法定相続分が減る​ため​、相続トラブルに発展する可能性があります。

以下の例を参考に解説します。

上記のケースの場合、養子縁組をする前と後で法定相続分は以下の通りに変化します。

次男の立場に立ってこの養子縁組を考えてみると、1/2あった法定相続分が1/3に減ります。次男が養子縁組にマイナスの感情を抱いたとしても不思議ではありません。

養子縁組前養子縁組後
長男1/21/3
次男1/21/3
長男の嫁(養子)01/3

相続トラブルを回避するためにも、養子縁組をする際は他の法定相続人に事前に自分の想いを話し、了承を得ることをおすすめします。

2-3.【対策3】生命保険の受取人にする

長男の嫁を生命保険の受取人にすることで、長男の嫁に遺産を渡すことができます。

生命保険は受取人固有の財産であり、遺産分割協議の対象とはなりません。
そのため、死亡保険金の受取人を長男の嫁にすれば、長男の嫁に遺産を渡すことができます。

ただし、長男の嫁が遺産を相続した場合は、相続税額が2割加算されるので注意が必要です。

■相続税額の2割加算の詳細についてはこちら
No.4157 相続税額の2割加算

2-4.【対策4】生前贈与を行う

長男の嫁に生前贈与を行うことで、長男の嫁に財産を渡すことができます。

生前贈与を行えば、あなた自身が生きている間に、長男の嫁に財産を確実に渡すことができます。

ただし、生前贈与をすると贈与税(税率は10-55%)がかかることに注意が必要です。
直系血族間の贈与にはさまざまな控除の特例が適用されますが、長男の嫁にはそういった特例が適用されません。

■参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)


3.まとめ

長男の嫁に遺産相続をする権利があるかどうか、長男の嫁に遺産を遺す方法について解説してきました。

最後に本記事の大切なポイントを振り返ります。

  • 長男の嫁には、原則遺産を相続する権利はない
  • 長男の嫁は特別寄与料を請求することで、遺産の一部を取得することができる。
  • 長男の嫁に財産を渡すには生前対策をする必要がある
    【対策1】遺言書を作成する
    【対策2】養子にする
    【対策3】生命保険の受取人にする
    【対策4】生前贈与を行う

本記事が長男の嫁への遺産相続を検討している人の一助となれば幸いです。

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