嫁に行ったんだから、あなたには遺産を相続する権利はないのよ!
この記事をご覧になられている方は、遺産相続の場で、実の親や実家の跡をとった兄弟から、このような心無い言葉をかけられたのではないでしょうか。
でも、安心してください。
嫁に行っても、遺産を相続する権利はあります。
あなたが父親・母親の子供であるということには、何ら変わりません。
本記事は以下の3点について解説しています。
本記事を通して、正しい現在の相続制度を知ることで、あなたが「嫁に行っても娘であることに変わりはないんだ」と思え、心穏やかになることを願ってやみません。
目次
1.嫁に行った娘にも、遺産を相続する権利はある
嫁に行った娘には、遺産を相続する権利があります。
嫁に行って名字や住む場所が変わったとしても、実の両親と親子であることに変わりはありません。
嫁に行った娘は、現在の相続制度を定める民法において「第一順位の法定相続人」としての権利を持ちます。
※注意
実家の跡をとった息子(娘)と、嫁に行った娘の相続人としての権利は全く同じです。
嫁に行ったからといって、もらえる遺産の割合が少なくなるということは、民法のどこにも記載されていません。
2.「嫁に行った娘には遺産を相続させない」という風潮は、旧来の家督相続制度が影響している
では、なぜ「嫁に行った娘には遺産を相続させない」という風潮があるのでしょうか。
それは、旧来の家督相続制度が影響しています。
家督相続制度とは、明治31年から昭和22年まで施行されていた旧民法における遺産相続の制度です。
戸主(家長)が隠居や死亡した際、長男がすべての財産・権利を相続するというものです。
この家督相続制度は昭和22年に廃止されています。
しかし、現在の民法で定める相続制度を理解していないがために、頭の中にあった既に廃止されている家督相続制度のイメージが膨らみ、「嫁に行った娘には相続させない!」という発言をしてしまう方が、令和の現在においても一定数いるようです。
3.「嫁に行った娘には、遺産を相続させない」と言われた時の対処法
「嫁に行った娘には遺産を相続させない」と言われた時の対処法をご紹介します。
既にお話しした通り、現在の相続制度を定める民法において、嫁に行った娘にも遺産を相続する権利があります。遺産を相続したい場合は、嘆いてばかりではなく、行動を起こしましょう。
- 方法1:現在の相続制度を伝える
- 方法2:弁護士に相談した上で、もう一度話し合う
- 方法3:遺産分割調停を行う
3-1.現在の相続制度を伝える
まずは親や跡をとった兄弟に、現在の相続制度を伝えましょう。
相続税専門税理士が監修しているこの記事を見せながら説明することも効果的です。
現在の民法で定める相続制度を理解していないがために、頭の中にある既に廃止されている家督相続のイメージが膨らみ、「嫁に行った娘には相続させない!」という発言をしていると思われます。
現在の相続制度を理解させることで、考えが改まる可能性が十分にあります。
3-2.弁護士に相談した上で、もう一度話し合う
ご自身だけで親や跡をとった兄弟を説得することが出来なかった場合には、弁護士に相談しましょう。
たとえ、話す内容が同じであったとしても、弁護士という専門家から言われると、納得するケースが多いです。
※TH弁護士法人 / TH総合法律事務所
私の所属する辻・本郷グループにもTH弁護士法人 / TH総合法律事務所という弁護士法人があります。
相続や遺産分割に関するお悩み相談を日常的に承っているプロ集団です。
お困りの際はお気軽にご相談ください。
3-3.遺産分割調停を行う
弁護士が説明してもなお、「嫁に行った娘には相続させない!」と言われた場合は、家庭裁判所に申し出て遺産分割調停を行いましょう。
遺産分割調停とは、遺産の分け方について、家庭裁判所の裁判官と調停委員が、相続人それぞれの主張を聞き取り、相続人全員による合意を目指す手続きです。
ただし、これはあくまでも最後の手段です。
遺産がもらえたとしても、家族の仲に禍根が残ります。
なるべくではありますが、家族間の話し合いで解決することをおすすめします。
■遺産分割調停の詳細は以下のページに記載されているので、参考にしてください。
裁判所HP 遺産分割調停
4.まとめ
「嫁に行ったんだから、あなたには遺産を相続する権利はないのよ!」と言われた方を対象に、嫁に行った娘の相続権について説明してまいりました。
最後に本記事の大切なポイントをもう一度振り返ります。
本記事を通して、正しい現在の相続制度を知ることで、あなたが「嫁に行っても娘であることに変わりはないんだ」と思え、心穏やかになることを願ってやみません。