相続手続きに必要な戸籍謄本とは?種類や取得方法を徹底解説

相続手続きに必要な戸籍謄本とは、そもそも何か?
戸籍謄本って、どうやって取得すればいいの?

本記事をご覧の方はこのようなお悩みを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。

相続が発生し、相続手続きを行おうと金融機関や家庭裁判所などを訪れると、必ず戸籍謄本の提出を求められます。しかし、戸籍謄本は日常生活で馴染みのある書類ではありません。
「戸籍とは何か?」「どうやって取得すれば良いのか?」と疑問に思うのは当然のことです。

本記事は相続手続きにおける戸籍謄本について、網羅的に解説しています。
本記事をご覧いただければ、相続手続きにおける戸籍謄本についての疑問点は解消され、すぐに戸籍謄本を取得するための手続きに移ることができるでしょう。

【戸籍謄本のイメージ図】

大切な人が亡くなったら行う24の相続手続きの流れ


1.相続における戸籍謄本の役割

相続における戸籍謄本には、以下の2つの役割があります。

  • 被相続人の死亡を確認する
  • 法定相続人が誰かを確認する

2つとも相続手続きを進めるにあたって必ず確認が必要となる事項です。
戸籍謄本はこの2つの事項について確認できる公的な書類なので、相続手続きにおいて戸籍謄本は必要不可欠な書類と言えるでしょう。


2.相続手続きに必要な戸籍謄本の種類

相続手続きに必要な戸籍謄本の種類は以下の2種類です。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本

2-1.被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)

相続手続きに必要な戸籍謄本の1つ目は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)です。

「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」には、被相続人の死亡日が記載されているので、「被相続人が亡くなっていること」を公的な書類で確認することができます。

また、被相続人の両親、兄弟姉妹、結婚歴、子どもなどの情報が記載されているので、法定相続人を確認することが可能です。

※除籍謄本・改製原戸籍謄本について

除籍謄本・改製原戸籍謄本の取得方法や役割は戸籍謄本と基本的に同じです。

■除籍謄本・改製原戸籍謄本の概要が知りたいかたはこちら
戸籍謄本と除籍謄本・改製原戸籍謄本・戸籍抄本の違いが分かりません

2-2.相続人全員の現在の戸籍謄本

相続手続きに必要な戸籍謄本の2つ目は、相続人全員の現在の戸籍謄本です。

相続人全員の現在の戸籍謄本は、「法定相続人が生きていること」を確認するために必要です。

なお、被相続人の配偶者や未婚の子供などの現在の戸籍謄本は、2-1で解説した被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本と同一のものとなる場合があります。この場合は改めて取り寄せる必要はありません。

また、以下の2つの場合は追加で戸籍謄本が必要になります。

  • 相続人が既に亡くなっている場合(代襲相続)
  • 兄弟姉妹が相続人になる場合

2-2-1.代襲相続(被相続人の亡くなる前に、相続人が亡くなっている)の場合

代襲相続(被相続人が亡くなる前に、相続人が亡くなっている)の場合は、代襲相続人を確定するために以下の戸籍謄本が追加で必要になります。

  • 被代襲者(相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 代襲相続人(相続人の子供など)全員の現在の戸籍謄本

2-2-2.兄弟姉妹が相続人になる場合

兄弟姉妹が相続人になる場合は、被相続人の親や祖父母(直系尊属)の死亡を確認し、異父兄弟・異母兄弟の存在も確認する必要があるため、以下の戸籍謄本が追加で必要になります。

  • 被相続人の両親それぞれの出生から死亡までの戸籍謄本

3.戸籍謄本が必要となる相続手続き

戸籍謄本が必要となる相続手続きは、主に以下の6種類があります。
各項目をクリックすると、各手続きの詳細が確認できます。

遺言書の検認家庭裁判所で相続人などの立ち会いのもと、遺言書を開封して、その内容を確認する手続き
相続人調査故人の戸籍謄本を使用し、法定相続人は誰なのかを確定する手続き
相続放棄、限定承認の申立故人に多額の借金があった場合などに行う手続き
預貯金・有価証券の名義変更故人から受け継いだ金融資産を、相続人の名義にする手続き
相続税申告相続税に関する手続き
不動産の相続登記故人から受け継いだ不動産を、相続人の名義にする手続き

また、特別代理人選任、遺産分割調停、遺言執行者の選任などを、家庭裁判所へ申立を行う際にも相続人の戸籍謄本が必要になります。

■相続手続きに関する詳細はこちら
大切な人が亡くなったら行う24の相続手続き


4.戸籍謄本の取得方法

戸籍謄本の取得方法を解説します。

2024年3月1日に広域交付制度がはじまり、戸籍謄本の取得がかなり容易になりました。

※広域交付制度は、郵送、代理人申請はできません。

取得場所広域交付制度が利用可能な場合は最寄りの市区町村役場
※2024年3月1日から変更になった
取得できる人戸籍に記載されている人
・戸籍に記載されている人の配偶者・直系血族
・委任状があれば、専門家などその他の人も可(広域交付制度の場合は不可)
手数料1通450円~750円程度
必要書類【窓口で手続きする場合】
・戸籍交付申請書
・印鑑
・本人確認書類
【郵送で請求する場合】
・戸籍交付申請書
・本人確認書類のコピー
・手数料に相当する定額小為替
・返信用封筒と切手
取得枚数名義変更を行う金融機関の数+3枚 程度

4-1.取得場所は最寄りの市区町村役場

戸籍謄本の取得場所は最寄りの市区町村役場の窓口です。

2024年3月1日以前は戸籍謄本を取得するためには、本籍地の市区町村役場で申請する必要がありました。そのため、被相続人が生前、本籍地を変更している場合、複数の市区町村役場へ戸籍謄本の取得を申請する必要があり、とても手間暇がかかりました。

しかし、2024年3月1日に広域交付制度が導入されたことで、全国の戸籍情報を最寄りの市区町村役場で請求できるようになりました。

その結果、被相続人が生前に本籍地を変更している場合であっても、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本すべてを最寄りの市区町村で取得できるようになりました。

ただし、広域交付制度で戸籍謄本等を請求することができる方は、「本人」「配偶者」「父母など直系尊属」「子などの直系卑属」に限られます。兄弟姉妹、委任状を持っている代理人は広域交付制度を利用することはできないのでご注意ください。

法務省 戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)

4-2.取得できる人は原則、戸籍に記載されている人、その配偶者・直系血族

戸籍謄本を取得できる人は原則、戸籍に記載されている人、配偶者や直系血族です。
戸籍に記載されている人自身が取得の手続きをできれば一番良いですが、一緒に住んでいる「家族」であれば、基本的に取得できると考えて大丈夫です。

※委任状があれば、その他の人が請求することも可能

委任状があれば、その他の人が請求することも可能です。
相続税申告を依頼している税理士、相続登記を依頼している司法書士などの専門家に代理で取得してもらうこともできます。(広域交付制度を利用する場合は、委任状があっても代理人が請求することはできません。)

4-3.戸籍謄本の値段は1通450円~750円程度

戸籍謄本の値段は1通450円程度です。

自治体によって多少異なりますので、事前に自治体のHPで値段を確認することをおすすめします。

4-4.戸籍謄本を取得するための必要書類

戸籍謄本を取得するための必要書類は、市区町村役場の窓口で請求するか、郵送で請求するかによって異なります。

4-4-1.市区町村役場の窓口で手続きをする場合

市区町村役場の窓口で手続きをする場合の必要書類は、以下の通りです。

  • 戸籍交付申請書(各市区町村が定める様式に必要事項を記載)
  • 印鑑(朱肉を使う印鑑であれば認印でも可)
  • 本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど。顔写真付きのものなら1点、それがない場合は市区町村役場に確認しましょう。広域交付制度の場合は顔写真つきの身分証明書が必要です。)

4-4-2.郵送で請求する場合

郵送で請求する場合の必要書類は、以下の通りです。
なお、広域交付制度を利用する場合は、郵送で請求することはできません。ご注意ください。

  • 戸籍交付申請書(各市区町村が定める様式に必要事項を記載のうえ、印鑑を押印)
  • 本人確認書類のコピー(運転免許証、マイナンバーカードなどのコピー)
  • 手数料に相当する定額小為替
  • 返信用封筒と切手

4-5.戸籍謄本の取得枚数

相続手続きにおいては、戸籍謄本の原本の提出を求められる機会が多いので、戸籍謄本は複数枚取得する必要があります。必要な枚数は人によって異なりますが、「名義変更を行う金融機関の数+3枚」取得すれば安心でしょう。

預貯金・有価証券の名義変更を行う際は原本の提出を求める金融機関が多いので、名義変更を行う金融機関の数分の戸籍謄本を取得した方が相続手続きをスムーズに行うことができるでしょう。
また、遺言書の検認、不動産の相続登記にも戸籍謄本の原本が必要です。

余裕をみて、「名義変更を行う金融機関の数+3枚」取得すれば、相続手続きの途中で足りなくなり追加で取得することにはならないでしょう。なお、5の法定相続情報証明制度も併せてご覧ください。


5.戸籍謄本は各々1通のみ取得し、法定相続情報証明制度を利用することをおすすめします

戸籍謄本は各々1通のみ取得し、法定相続情報証明制度を利用することをおすすめします。

法定相続情報証明制度は、何通にも及ぶ戸籍謄本を1部にまとめることができる法務局の制度です。
また、法定相続情報証明制度を利用して作成した「法定相続情報一覧図」は無料で交付される上に、コピーで戸籍謄本と同じ役割を果たすことができます。

なお、一覧図の内容が民法に定められた相続関係と合致していることを登記官が確認してくれます。

戸籍謄本は1通450円程度ですが、4-5で説明した通り、各々「名義変更を行う金融機関の数+3枚」程度取得する必要があります。塵も積もれば山となり、取得費用としてトータルで数千円~1万円程度手数料がかかるケースもあります。

法定相続情報証明制度を利用すれば、各々1通の取得で済ませられるので費用を抑えることができます。
また、個人情報の塊である戸籍謄本の束を持ち歩くというリスクも減らすことができます。

相続手続きを行う際は、戸籍謄本は各々1通のみ取得し法定相続情報証明制度を利用することをおすすめします。

■法定相続情報証明制度についての詳細はこちら
法定相続情報証明制度とは?おすすめするケースと利用するメリットを解説


6.相続における戸籍謄本に関するQ&A

相続における戸籍謄本に関するQ&Aを紹介します。

6-1.戸籍謄本に有効期限はあるのですか

戸籍謄本自体には有効期限はありません。

発行年月日の記載はありますが、特定の日付までしか使用できないといった有効期限はありません。

ただし、提出先によっては「取得した日から〇ヶ月以内」といったような期限が設けられている場合もあります。主な金融機関のHPに掲載されていた有効期限は以下の通りです。

銀行名相続手続きに使用する戸籍謄本の期限
みずほ銀行HPに期限の記載なし
三菱UFJ銀行HPに期限の記載なし
三井住友銀行発行より1年以内
りそな銀行HPに期限の記載なし
ゆうちょ銀行HPに期限の記載なし
楽天銀行発行より6か月以内
住信SBIネット銀行発行より6か月以内
七十七銀行発行より6か月以内
群馬銀行発行より3か月以内
武蔵野銀行発行より1年以内
証券会社名相続手続きに使用する戸籍謄本の期限
みずほ証券HPに期限の記載なし
三菱UFJモルガン・スタンレー証券HPに期限の記載なし
SMBC日興証券HPに期限の記載なし
楽天証券HPに期限の記載なし
SBI証券発行より6か月以内
大和証券HPに期限の記載なし
松井証券発行より6か月以内
マネックス証券発行より6か月以内

6-2.戸籍謄本の取得を専門家に依頼できますか

委任状があれば可能です。

相続税申告を依頼している税理士、相続登記を依頼している司法書士などの専門家に、追加料金を支払うことで代理で取得してもらうこともできます。ただし、広域交付制度を利用する場合は、委任状があっても代理人が請求することはできません。

6-3.戸籍謄本はコピーではいけないのですか

相続税申告など一部の手続きはコピーでも手続き可能ですが、遺言書の検認、不動産の相続登記には戸籍謄本の原本が必要です。

また、預貯金・有価証券の名義変更を行う際も原本の提出を求める金融機関が多いです。

ただし、5でご説明いたしました法定相続情報証明制度を利用して作成した「法定相続情報一覧図」は無料で交付される上に、コピーで戸籍謄本と同じ役割を果たすことができます。

6-4.戸籍謄本と除籍謄本・改製原戸籍謄本・戸籍抄本の違いが分かりません

相続手続きを行う上で、戸籍謄本と除籍謄本・改製原戸籍謄本・戸籍抄本の違いを厳密に理解する必要はありません。

あくまでも参考として、以下に違いを説明します。

除籍謄本除籍謄本とは、結婚や離婚、死亡や転籍などにより、その戸籍に誰も属していないことを証明したものです。被相続人が生前属していた戸籍に現在誰も属していない場合に取得する必要があります。
改製原戸籍謄本改製原戸籍謄本とは、古い様式の戸籍情報の写しのことです。戸籍は平成6年に手書き管理からコンピューター管理になったり、昭和22年に戸籍の単位が家から夫婦に変わるなど、今まで何回も形式が変わっています。被相続人が平成6年以前に生まれている場合に必要となります。
戸籍抄本戸籍抄本とは、戸籍に記載されている方のうち一人または複数人の身分事項を証明するものです。相続手続きにおいて戸籍抄本は使用しません。

7.まとめ

「相続手続きに必要な戸籍謄本とは、そもそも何か?」
「戸籍謄本って、どうやって取得すればいいの?」
と疑問をお持ちの方を対象に、相続税専門税理士監修のもと、相続手続きにおける戸籍謄本について、網羅的に解説してきました。

最後に本記事の大切なポイントをもう一度振り返ります。

  • 相続における戸籍謄本の役割は、以下の2つ
    ・被相続人の死亡を確認する
    ・法定相続人が誰かを確認する
  • 相続手続きに必要な戸籍謄本は以下の2種類
    ただし、代襲相続が発生しているケース・兄弟姉妹が相続人であるケースは追加で必要になる
    ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)
    ・相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 戸籍謄本が必要となる相続手続きは、主に以下の6種類
    ・遺言書の検認
    ・相続人調査
    ・相続放棄・限定承認の申立
    ・預貯金・有価証券の名義変更
    ・相続税申告
    ・不動産の相続登記
  • 戸籍謄本の取得は、広域交付制度の導入で便利になった。
    取得方法の詳細は以下の表の通り

    取得場所広域交付制度が利用可能な場合は最寄りの市区町村役場
    ※2024年3月1日から変更になった
    取得できる人戸籍に記載されている人
    ・戸籍に記載されている人の配偶者・直系血族
    ・委任状があれば、専門家などその他の人も可(広域交付制度の場合は不可)
    手数料1通450円~750円程度
    必要書類【窓口で手続きする場合】
    ・戸籍交付申請書
    ・印鑑
    ・本人確認書類
    【郵送で請求する場合】
    ・戸籍交付申請書
    ・本人確認書類のコピー
    ・手数料に相当する定額小為替
    ・返信用封筒と切手
    取得枚数名義変更を行う金融機関の数+3枚 程度
  • 戸籍謄本は各々1通のみ取得し、法定相続情報証明制度を利用することがおすすめ

本記事が相続手続きを行うみなさんの一助となれば幸いです。

辻・本郷 税理士法人の相続税申告サービス
一律66万円(税込)の相続コミコミプラン

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