本記事は、遺産分割協議書を作成する際の必要書類一覧表を掲載しています。
2章から4章では、
・必ず必要なもの
・相続する財産によって必要なもの
・特別な場合に必要なもの
に分けて、それぞれの書類の入手方法や注意事項について記載していますので、書類集めを無駄なくスムーズに行うことができるでしょう。
遺産分割協議書には、明確な作成期限は設けられていませんが、被相続人が死亡してから10ヵ月以内に相続税の申告が必要なため、それまでに作成するのが望ましいです。
書類を集めるのにかかる時間には個人差があります。
遺産の種類が多いと必要書類も増えて手間がかかります。例えば、残高証明書の発行は、銀行によっては2週間以上かかります。そのため仕事が忙しくて時間が取りにくい人は、書類をそろえるだけで2ヶ月以上かかってしまうこともあるようです。できるだけ早めに書類の準備にとりかかりましょう。
遺産分割協議書の雛形付きの作成方法や提出先は下記のリンクをご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド 遺産分割協議書とは?雛形付き作成方法も徹底解説!
1.遺産分割協議書を作成する際の必要書類一覧表
下の表は、遺産分割協議書を作成する際に必要となる書類の一覧表です。「必ず必要なもの」「相続する財産によって必要なもの」「特別な場合に必要なもの」の3つに分けて記載しています。
必ず必要なもの | ①被相続人が出生してから亡くなるまでの戸籍 (除籍・改製原戸籍・現戸籍) | |
---|---|---|
②相続人全員の戸籍謄本 | ||
③被相続人の住民票の除票、または戸籍の附票 | ||
④相続人全員の印鑑証明書と実印 | ||
⑤財産目録 ※あると便利 | ||
相続する財産によって必要なもの | 預貯金・証券 | 残高証明書、預貯金通帳など |
不動産 | 登記簿謄本 (全部事項証明書) | |
自動車 | 車検証のコピーなど | |
ゴルフ会員権 リゾート会員権 | 預託金証書または証券のコピー | |
貴金属、書画、骨董など | 鑑定書など | |
特別な場合に必要なもの (相続放棄者がいる場合) | 相続放棄申述受理証明書 または 相続放棄申述受理通知書 |
次章からは、分類ごとに、それぞれの書類について、解説や入手方法、注意事項を記載していますので、確認していきましょう。
2.必ず必要な書類
本章では、遺産分割協議書を作る際に「必ず必要な書類」について解説します。
「必ず必要な書類」一覧表
書類名 | 目的 |
---|---|
①被相続人が出生してから亡くなるまでの戸籍(除籍・改製原戸籍・現戸籍) | 相続人を確定するため |
②相続人全員の戸籍謄本 | 法定相続人の生存を確認するため |
③被相続人の住民票の除票 または、戸籍の附票 | 最後の住所を確認するため |
④相続人全員の印鑑証明書と実印 | 遺産分割協議書に 相続人全員が実印を押印するため |
⑤財産目録 ※あると便利 | 財産を把握するため |
①被相続人が出生してから亡くなるまでの戸籍(除籍・改製原戸籍・現戸籍)
取得場所 | 最寄りの役場※1 |
---|---|
取得できる人 | ・戸籍に記載されている人 ・戸籍に記載されている人の配偶者・直系血族 ・委任状があれば、専門家などその他の人も可 ※2 |
手数料 | 戸籍謄本 1通450円程度 除籍・改製原戸籍謄本 1通750円程度 |
必要書類 | 【窓口で手続きする場合】 ・交付請求書 ・本人確認書類 ・(印鑑) 【郵送で請求する場合】 ・交付請求書 ・本人確認書類のコピー ・手数料に相当する定額小為替 ・返信用封筒と切手 |
※1 2024年3月1日から戸籍証明書等の広域交付が始まり、最寄りの市区町村役場で取得できるようになりました。
※2 兄弟姉妹の戸籍謄本を取得する場合のほか、代理人が取得する場合、郵送で取得する場合は、本籍地の市区町村役場で手続きをする必要があります。また、配偶者や血族でない方からの請求は、委任状や、請求理由を証明する書類の写しが必要になります。
相続人を確定するため、被相続人の出生から死亡までの連続した「戸籍謄本」、「除籍謄本」、「改製原戸籍謄本」が必要となります。
また、被相続人に配偶者、子、孫、父母などがおらず、兄弟姉妹や甥姪(第三順位の相続人)が相続人となる場合には、これに加えて被相続人の両親それぞれの出生から死亡までの連続した「戸籍謄本」、「除籍謄本」、「改製原戸籍謄本」も必要となります。
なお、親族関係の状況などによってはこれら以外の戸籍謄本等が必要となる場合もあります。親族関係が複雑な場合などは、弁護士、司法書士などの専門家へ相談したほうがよいでしょう。
戸籍謄本については、下記で詳しく解説しています。
■辻・本郷相続ガイド 相続手続きに必要な戸籍謄本とは?種類や取得方法を徹底解説
②相続人全員の戸籍謄本
法定相続人の生存を確認するため、相続人全員の現在の戸籍謄本が必要です。ただし、亡くなった人の死亡が記載された戸籍謄本に載っている相続人については、改めて取り寄せる必要はありません。
取得方法等は、「①被相続人が出生してから亡くなるまでの戸籍」と同様です。
③被相続人の住民票の除票、または戸籍の附票
遺産分割協議書には被相続人の最後の住所を記載します。そのため、被相続人の最後の住所を確認できる書類として、「住民票の除票」または「戸籍の附票」のどちらかが必要です。
被相続人の住民票の除票
取得場所 | 被相続人の最後の住所地のある役場 |
---|---|
取得できる人 | ・相続人等 ・利害関係者 ・委任状があれば、専門家などその他の人も可※ |
手数料 | 1通200円から400円程度 |
必要書類 | 【窓口で手続きする場合】 ・交付請求書 ・本人確認書類 ・利害関係や請求理由を裏付ける資料(戸籍謄本など) 【郵送で請求する場合】 ・交付請求書 ・本人確認書類のコピー ・利害関係や請求理由を裏付ける資料(戸籍謄本など)のコピー ・手数料に相当する定額小為替 ・返信用封筒と切手 |
※配偶者や血族でない方からの請求は、委任状や、請求理由を証明する書類の写しが必要になります。
戸籍の附票
取得場所 | 被相続人の本籍地のある役場 |
---|---|
取得できる人 | ・戸籍に記載されている人 ・戸籍に記載されている人の配偶者・直系血族 ・委任状があれば、専門家などその他の人も可※ |
手数料 | 1通200円から400円程度 |
必要書類 | 【窓口で手続きする場合】 ・交付請求書 ・本人確認書類 ・戸籍に記載のある方と直系親族であることが確認できる資料(戸籍謄本など) 【郵送で請求する場合】 ・交付請求書 ・本人確認書類のコピー ・戸籍に記載のある方と直系親族であることが確認できる資料(戸籍謄本など)のコピー ・手数料に相当する定額小為替 ・返信用封筒と切手 |
※配偶者や血族でない方からの請求は、委任状や、請求理由を証明する書類の写しが必要になります。
戸籍の附票は、その戸籍内に入っているときの住所の履歴が掲載されています。
④相続人全員の印鑑証明書(実印)
取得場所 | 住民登録地の役場窓口(コンビニ交付に対応している市区町村で、マイナンバーカードに利用者証明用電子証明書を搭載している場合は、コンビニでも取得可能) |
---|---|
取得できる人 | ・印鑑登録証をお持ちの方 ・本人から印鑑登録証を預かった代理人(印鑑登録証があれば代理人届等は不要) |
手数料 | 1通200円から400円程度 |
必要書類 | ・印鑑登録証明書交付申請書 ・請求したい方の印鑑登録証 |
遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印を押印する必要があります。
それが実印であることを証明するため、相続人全員の印鑑登録証明書が必要です。印鑑登録していない相続人がいる場合には、先に印鑑登録をしなければなりません。
⑤財産目録
財産目録とは、相続財産の内容が一覧でわかるようにまとめたものです。財産目録の作成は義務ではありませんが、お亡くなりになった方が作成していた場合には、遺産分割や協議書の作成がスムーズになりますので、用意しておきましょう。また、作成されていなくても、すべての財産を一覧表で把握しておくことで、各種手続きにおける間違いを防ぐ効果もありますので、作成をおすすめします。
遺産分割を行うにあたり、相続財産をもれなく把握することは不可欠です。相続財産調査については、下記の記事をご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド 相続財産調査とは?自分で漏れなく行う方法・専門家に依頼する基準も紹介
3.相続する財産によって必要な書類
本章では、「相続する財産によって必要な書類」について解説します。取得の際に必要な書類は、請求先により異なりますので、事前に請求先にご確認されることをおすすめします。
「相続する財産によって必要な書類」一覧表
取得する財産 | 書類名 | 取得場所 | 金額 |
---|---|---|---|
預貯金・証券 | 残高証明書 | お取引の金融機関 | 一通あたり1,000円前後 ※金融機関によって2週間程度かかることもある |
預貯金通帳など | お手元のもの | – | |
不動産 | 登記簿謄本 (全部事項証明書) | ・最寄りの法務局窓口 ・オンライン | ・窓口:600円 ・オンライン 郵送で受け取る場合:500円 最寄りの登記所や法務局証明サービスセンターで受け取る場合:480円 |
自動車 | 車検証のコピーなど | お手元のもの | – |
ゴルフ会員権 リゾート会員権 | 預託金証書または証券のコピー | お手元のもの | – |
貴金属、書画、骨董など | 金銭的価値があるもの、著名な作品などをお持ちの場合は鑑定書などを用意 | お手元のもの | – |
4.特別な場合に必要な書類
本章では、特別な場合として、相続放棄者がいる場合に必要な書類について、解説します。
ケース | 書類名 |
---|---|
相続放棄者がいる場合 | 相続放棄申述受理証明書 または 相続放棄申述受理通知書 |
相続放棄者がいる場合には、「相続放棄申述受理証明書」または「相続放棄申述受理通知書」を用意しておきましょう。
これらの書類は、遺産分割協議書を作成するにあたって必須となる書類ではありません。しかし、相続放棄をする相続人がいる場合には、家庭裁判所で相続放棄の申立てが認められていることを証明するために、把握しておいたほうがよいでしょう。
相続放棄申述受理証明書
取得場所 | 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所 |
---|---|
取得できる人 | 相続放棄をした人、利害関係人(相続人など) |
手数料 | 150円の収入印紙代金 |
必要書類 | 【郵送で請求する場合】 ・150円の収入印紙を貼った申請書 ・本人確認書類のコピー ・利害関係人であることの証明書のコピー ・返信用封筒と切手 |
相続放棄した事実を第三者に証明するための書類です。
相続放棄申述受理通知書
取得場所 | 手続きが完了すると自動的に申述人に送られてくる |
---|---|
取得できる人 | 相続放棄申述人 |
手数料 | なし |
必要書類 | なし |
相続放棄の手続きが受理された際に、家庭裁判所から送付される書類です。別途取得する必要はありません。
5.まとめ
遺産分割協議書を作成する際の必要書類について解説してきました。
遺産分割協議の必要書類集めは非常に労力のかかる作業です。司法書士や弁護士、行政書士などに依頼すれば、書類集めをサポートしてくれますが、追加料金が発生したり、委任状を用意したりしなくてはいけません。さらに代行を依頼できない書類は、自分で取得する必要があります。たとえば戸籍謄本や住民票は代行できても印鑑証明書は代行を依頼できない場合が多いため、結局役所へは行くことになります。
このように、費用がかかるのに手間があまり減らないことを考えると、自分で取得したほうがよいかもしれません。
本記事を参考に、早めに準備を行いましょう。
協議書の作成方法や、提出先については下記リンクをご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド 遺産分割協議書とは?雛形付き作成方法も徹底解説!