親子間でも贈与税はかかる?かからない方法と注意点を徹底解説

「相続税対策のために、子供にまとまったお金を渡したいが、親子の間でも贈与税はかかるのだろうか」

「子供の住宅購入や、孫の学費を援助してあげたいけど、贈与税がかからない方法はあるのだろうか」

この記事をお読みの皆様はそんな疑問を持たれているのではないでしょうか。

結論から申し上げますと、親子間でも原則贈与税はかかりますが、生活費や教育費であれば贈与税はかからないケースもあります。本記事では、贈与税の簡単な計算方法や、生活費や教育費以外でも、親子間で非課税で贈与する方法2つのほか、親子間で意図せず課税されてしまうよくあるケースについて、分かりやすく解説しています。

本記事が、税金を抑えつつ、お子様に効率的に贈与する最善の方法を知りたいとお考えの方の一助となれば幸いです。


1.親子間でも原則贈与税はかかる

たとえ親子間であっても、原則贈与税はかかります。しかし、親子間で行われる生活費や教育費の贈与は非課税です。

1-1.扶養義務者相互間の必要金額内での生活費・教育費の贈与はそもそも非課税

扶養義務者である親から子供、もしくは、子から親、祖父母から孫などへ贈与する場合、通常必要と認められる生活費や教育費については、非課税で申告も不要です。

※配偶者、直系血族(祖父母・父母・子・孫)や兄弟姉妹、家庭裁判所の判断によって扶養義務者となった三親等内の親族、三親等内の親族で同一生計の者

(贈与税の非課税財産
二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)

生活費や教育費とは、金額に上限は定められていませんが、日常生活を送るために通常必要と思われる範囲内で最低限必要な費用とされており、主に下記のようなものがあります。

・家賃、食費、医療費
・養育費、教育費(塾、留学、通学費)
・親から子への生活費や学費の仕送り、子から親への生活費の仕送り

贈与する際には、税務調査対策のため、できれば手渡しではなく金融機関に振り込むことで、贈与額や贈与日を明確にし、使途を明確にするため、使用した際の領収書を保管しておくといいでしょう。

1-2.「通常必要な生活費・教育費」とみなされず、贈与税がかかってしまう場合

扶養義務がない場合や、「生活費」と称して必要な金額を超えて贈与をおこなった場合には、当然贈与税の課税対象となります。

また、生活費や教育費が必要なタイミングでその「都度」すれば、非課税と認められますが、仮に、今後必要になる教育資金だからと言って、事前に一括でまとめて1,000万円渡してしまうと、贈与税の特例などを使わない限りは贈与税が課税されてしまうので注意しましょう。

ほかにも、生活費や教育費として受け取ったにもかかわらず、貯蓄や金融資産、不動産投資など、別の用途に使っていた場合も、贈与税の課税対象になりますので、受け取る人がそれをしっかり認識しておくことが重要です。


2.贈与税の計算方法

本章では、贈与税(暦年課税)の計算方法について解説します。

贈与税の税率は①特例税率と②一般税率の2種類があります。18歳以上※の子が親等(直系尊属)からもらった場合には、特例税率が適用され、その他の場合より税率が低く設定されています。下にそれぞれの速算表を掲載していますので、実際に計算してみましょう。

税率
①18歳以上の子が親等(直系尊属)からもらった場合特例税率(低く設定されている) 
②その他の場合一般税率

※贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の人。「18歳」とあるのは、令和4年3月31日以前の贈与については「20歳」となります。

贈与税の計算式

贈与税は、贈与された金額から、基礎控除(110万円)を引いた額に、税率をかけ、控除額を引いて計算します。(暦年贈与制度の場合)

贈与税額 = (贈与を受けた財産 - 110万円) × 税率 - 控除額

税率と控除額は下の速算表で確認することができます。
「①18歳以上※の子が親(直系尊属)からもらった場合」「②その他の場合」がありますので、該当する速算表をご参照ください。

速算表

①18歳以上の子が親等(直系尊属)からもらった場合(特例税率)

例:父から18歳以上の子への贈与、祖父から18歳以上の孫への贈与など

基礎控除後の課税価格
(贈与額から110万円を差し引いた金額)
税率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1000万円以下30%90万円
1500万円以下40%190万円
3000万円以下45%265万円
4500万円以下50%415万円
4500万円超55%640万円

■国税庁HP No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税) をもとに辻・本郷 税理士法人が作成

計算例
 父が18歳以上の子に500万円贈与した場合
  基礎控除後の課税価格:500万円 - 110万円 = 390万円
  贈与税額の計算:390万円 × 15%(税率)10万円(控除額) = 48.5万円

②その他の場合(一般税率)

例:兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合など

基礎控除後の課税価格
(贈与額から110万円を差し引いた金額)
税率控除額
200万円以下10%
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1000万円以下40%125万円
1500万円以下45%175万円
3000万円以下50%250万円
3000万円超55%400万円

■国税庁HP No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税) をもとに辻・本郷 税理士法人が作成

計算例
 祖父から孫(5歳)へ500万円贈与した場合
  基礎控除後の課税価格:500万円 - 110万円 = 390万円
  贈与税額の計算:390万円 × 20% (税率)25万円(控除額)53万円


3.親子間で非課税で贈与する方法2つ

贈与税は、生活費・教育費に該当しない場合には、原則親子間であってもかかることについて述べましたが、本章では、非課税でできる親子間贈与の方法を2つご紹介します。

3-1.年間110万円以下にする

概要もらう人ごとに、年間110万円までは、贈与税は非課税(暦年贈与)
非課税枠110万円/年間
おすすめのケース毎年少しずつ贈与を進めたい場合
注意点・毎年贈与契約書を作ること

もらう人ごとに、年間110万円までは、贈与税は非課税となり、申告も不要です。この制度を使って長年にわたり贈与をすれば、かなりの財産を無税で次の世代に移すことが出来ます。

まとまった金額を一度に渡すよりは、毎年少しずつ渡していきたいという方にもお勧めの方法です。

注意すべきポイントは、贈与を行うごとに契約書を作っておくことです。例えば、毎年贈与契約書を作成するのがめんどうだからと言って、「今後10年にわたり、毎年100万円を贈与する」という契約書を作成してしまうと、10年にわたり100万円ずつの給付をするという定期金給付契約に基づく定期金の贈与とみなされて、一括で課税されてしまうことがあります。面倒でも、毎年契約書を作成することをおすすめします。

■辻・本郷相続ガイド 生前贈与の正しいやり方|相続専門税理士監修

3-2.特例を使う

下の表は、親子間で贈与する際に使える贈与税の非課税枠がある制度をまとめたものです。上で説明した2つの方法のように、必要なタイミングで、あるいは、毎年少しずつ贈与するのではなく、一括で大きな金額を贈与したい場合にお勧めの方法です。

それぞれ、適用にはさまざまな要件を見たす必要があります。タイトルにリンクを貼っていますので、ご確認の上で適用をご検討ください。

非課税枠概要期限
相続時精算課税制度2,500万円・相続発生時に相続税に加算される
令和6年分以降の贈与より年110万の基礎控除が新設。
教育資金の贈与の特例1,500万円・専用の信託口座での管理が必要

・30歳までに使い切れなかった残金に贈与税がかかる

2026年3月31日
住宅取得等資金の贈与の特例1,000万円・住宅資金に充てる必要あり
・取得や居住に期限あり
2026年12月31日
結婚・子育て資金の贈与の特例1,000万円・専用の信託口座での管理が必要
・契約中に贈与者が亡くなると未使用残金に相続税がかかる
2025年3月31日

4.親子間で意図せず課税されてしまうよくあるケース

本章では、親子間において意図せず贈与税や相続税が課税されてしまうよくあるケースについて紹介します。どれも、日常で何気なく行われてしまいがちなケースです。「想定外の税金が課税されてしまった!」という事態にならないよう注意しましょう。
※本章で紹介するケースは、暦年課税制度を適用しており、特例等はいずれも適用していなものとしています。

4-1.生活費や教育費の仕送りを別の用途で使ってしまった

1章でも記載した通り、生活費や授業料として受け取ったお金を、貯蓄や投資などに使ってしまった場合には、贈与税がかかります。親から子供への仕送りだけではなく、子供から親への仕送りも同様です。もらった人はそれをしっかり認識しておくようにしましょう。

4-2.年間110万円を超える贈与を受けた

3-1.年間110万円以下にするで記載した通り、年間110万円以下であれば贈与税はかかりません。しかし、それを超えた場合には、贈与税申告を行い、贈与税をおさめる必要があります。現金の場合はわかりやすいですが、例えば下記のような場合も、該当の金額が110万円を超えている場合には贈与税がかかりますので、注意しましょう。

  • ローンを支払ってもらった
  • 車を買ってもらった
  • リフォーム資金を出してもらった
  • 借金を返済してもらった(子どもが生活に困窮していて、明らかに返済が不可能な状態の場合にはかかららない。)

4-3.市場価格とかけ離れた低い値段で売ってもらった

高額な美術品や宝飾品を親から格安で譲ってもった場合にも贈与税がかかることがあります。課税されるのは譲ってもらった時点での財産の評価額と、支払った金額の差額部分が110万円を超える場合です。ここでいう評価額とは相続財産のように相続税評価額で評価した金額をいいます。

■辻・本郷相続ガイド 相続税評価額とは?他の価額との違い、主な相続財産の計算方法を解説

4-4.土地の名義を子供に変えた

土地の名義を親から子供に変更するということは、親が土地を子供に無償で譲渡するということですから、その評価額が110万円を超えた場合には贈与税がかかります。

また、著しく安い価格で譲り受けた時も同様に、土地の時価と実際に譲り受けた価格の差額が110万円を超えた場合には贈与とみなされて贈与税がかかりますので注意しましょう。「著しく低い価額」に一義的な定義があるわけではないので、税理士や専門業者へご相談されることをおすすめします。

■辻・本郷相続ガイド 不動産は生前贈与すべき?おすすめケース・生前贈与のやり方を解説

4-5.親の車をもらった

親が使っている車をもらった場合、中古車販売業者などが出すその車の査定価額が110万円を超える場合には贈与税がかかります。ただし、「もらった」というのは、親から子に車の名義を変更した場合です。親の名義のまま、子供が借りて使う場合には贈与にあたりませんので贈与税はかかりません。その場合には、親が亡くなった時に、その車を引き継ぐ相続人に相続税がかかることになります。

4-6.名義預金とみなされてしまった

名義預金とは、実際のお金の所有者と名義が異なる預金のことを言います。 例えば、「子どもの名義で口座を作って、一方的に親がお金を振り込む」などがそれにあたります。一見贈与にも見えますが、贈与はあげる人ともらった人双方の合意が必要ですから、預金の存在を子供が知らない場合には、贈与にはなりません。ですから、贈与税はかかりませんが、実質親の財産としてみなされ、親が亡くなった際相続税の課税対象になります。

4-7.親子間で返済予定のない、または多額の貸し借りを行った

子供が住宅を購入する時、あるいは起業する時などに、子供が親からお金を借りることはよくあることかと思います。借金という物は本来「贈与」ではありませんので通常税金はかかりません。しかし下記のような場合には贈与税の課税対象となりますので注意しましょう。

「出世払いでいいよ」など、実質返済予定のない貸し借りをしていた場合
・借入に対する利息相当額が110万円を超えている場合で、利息なしで返済した場合

また、親子間であっても契約書を作成し、やり取りは足跡が残るよう口座振り込みで行うようにするなど、税務調査で、貸し借りであることを証明できるように対策しておくことをおすすめします。


5.まとめ

ここまで、親子間でも贈与税がかかること、生活費や教育費で非課税であること、贈与税の計算方法、親子間で非課税で贈与する方法2つのほか、親子間で意図せず課税されてしまうよくあるケースについて、解説してきました。

ご自身がどの方法で贈与するのが良いか、ご判断いただけましたでしょうか。

なお、贈与税申告が必要な場合には、それが親子間であっても、現金など足がつかない方法であっても、必ず税務署にばれますので、必ず申告をしましょう。脱税が発覚した場合には、追徴税の支払いが課せられ、悪意がなくとも、追加で納付すべき金額に対して10%を乗じた金額が課せられますし、悪質なケースでは、40%の重加算税が課税されます。

■辻・本郷相続ガイド 生前贈与は現金手渡しでもOK?税務署にばれる?契約書の雛形も掲載

本記事をお読みになった皆さまが、税金を抑えつつ、最善の方法で親子間の贈与をすることによって、ご家族のみなさまが、豊かな環境で安心して生活を楽しまれることを心からお祈りしております。

辻・本郷 税理士法人の相続税申告サービス
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