相続税の税率・税額の求め方|ある家族を例に9つのステップで解説

我が家にかかる相続税の税率はいくらなのだろうか…?
本記事をご覧になられている方は、相続対策などを行う中で、相続税の税率、税額を知りたいと思っていらっしゃるのではないでしょうか。

相続税の税率は10-55%の超過累進課税です。
また、相続税の税額の出し方はとても複雑で、相続財産に税率をかけて求めるといった簡単なものではありません。

そこで本記事では、相続税の税率・税額の出し方を、ある家族を例に9つのステップに分けて解説しました。

本記事をご覧いただければ、あなたのご家族に課せられる相続税の税率、あなたのご家族が支払うことになる相続税の総額を知ることができるでしょう。

相続対策をお考えの皆様のお役に立てれば幸いです。


1.相続税の税率は10-55%の超過累進課税

相続税の税率は10-55%の超過累進課税です。

超過累進課税とは、課税額が大きくなるほど適用される税率が上がる制度のことですので、相続税は相続した財産が多ければ多いほど、税率も高くなります。


2.相続税は「税率を求めて、税額を求める」の2段階で計算する

相続税は大きくわけて、「税率を求めて、税額を求める」の2段階で計算します。

具体的には以下の方法で求めていきます。

まず、遺産総額から基礎控除額を引いた金額を、法定相続分どおりに遺産を分けたと仮定した場合の各相続人の取得金額を出すことによって、税率を算出します。

そして、税率を用いて、各相続人の相続税額を出し、足し合わせることで相続税の総額を出し、各人の実際の相続割合をもとに再度按分して、各人の納税額を求めます。

言葉で説明しても、イメージが沸かないと思いますので、図解を用意しました。


3.相続税の税率・税額の求め方

相続税の税率・税額の求め方を、以下の家族を例にみていきます。

【注】
厳密な相続税額を計算するためには、様々な控除・特例を考慮する必要がありますが、本記事では小規模宅地等の特例(特定居住用)、配偶者の税額軽減の2つのみを適用しました。

すべての控除・特例の適用可否を判断して出した厳密な税額を試算したい方は、相続専門税理士に依頼することをおすすめします。

また、控除・特例の概要を知りたい方は、こちらのページをご覧ください。

3-1.【ステップ1】正味の遺産額を計算する

まず正味の遺産額を計算しましょう。

正味の遺産額は土地や預貯金等の財産から、借入金や未払い金などの債務を引いたものです。
なお、生命保険金や死亡退職金は、それぞれ非課税限度額を超えた分が加算されます。

被相続人Aさんの遺産の財産から負債を引くと、1億4,800万円になります。

(9,000万円+2,000万円+1,300万円+3,500万円)ー(700万円+300万円)=1億4,800万円

3-2.【ステップ2】基礎控除額を計算する

次に基礎控除額を計算します。

基礎控除額とは相続税の計算で用いられる非課税枠のことで、相続税は正味の遺産額が、基礎控除額を上回っている場合にかかる税金です。
なお、基礎控除額を求める計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。

被相続人Aさんの法定相続人は配偶者・長男・長女の3人なので、基礎控除額は4,800万円になります。

3,000万円+600万円×3人=4,800万円

相続税の基礎控除とは|控除額や計算方法について解説

3-3.【ステップ3】課税遺産総額を計算する

次に課税遺産総額を計算します。
課税遺産総額は①で求めた正味の遺産額から②で求めた基礎控除額を引くことで求められます。

被相続人Aさんの課税遺産総額は、1億円となります。

1億4,800万円-4,800万円=1億円

3-4.【ステップ4】法定相続分を確認する

次に法定相続分を確認します。

法定相続分とは、民法に定められた遺産分割の目安となる割合です。
同順位の法定相続人が複数いる場合は、その数人でその法定相続分を均等に按分します。

被相続人Aさんの家族の場合、法定相続分は、以下の通りになります。

配偶者:1/2
長男   :1/2×1/2=1/4
長女   :1/2×1/2=1/4

3-5.【ステップ5】課税遺産総額を法定相続分で分割したと仮定した各相続人の取得金額を計算する

次にステップ3で求めた課税遺産総額を、ステップ4で求めた法定相続分で分割したと仮定して、各相続人の取得金額を計算します。

被相続人Aさん家族の場合、以下のようになります。

配偶者:1億円×1/2=5,000万円
長男 :1億円×1/4=2,500万円
長女 :1億円×1/4=2,500万円

3-6.【ステップ6】法定相続分で分割したと仮定した各相続人の取得金額をもとに税率を求める

法定相続分で分割したと仮定した各相続人の取得金額を、以下の速算表に当てはめて税率を求めましょう。

被相続人Aさん家族の場合、配偶者は税率20%、長男と長女は税率15%になります。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円以上55%7,200万円

3-7.【ステップ7】各相続人の相続税額を計算する

ステップ5で求めた法定相続分で分割したと仮定した各相続人の取得金額を、速算表に当てはめて、各相続人の相続税額を計算します。

被相続人Aさんの家族の場合、以下のようになります。

配偶者:5,000万円×税率20%-控除額200万円=800万円
長男 :2,500万円×税率15%-控除額50万円=325万円
長女 :2,500万円×税率15%-控除額50万円=325万円

3-8.【ステップ8】相続税の総額を計算する

次に相続税の総額を計算します。
相続税の総額はステップ7で求めた各相続人の相続税額を合計することで計算できます。

被相続人Aさんの家族の場合、相続税の総額は1,450万円になります。

配偶者800万円+長男325万円+長女325万円=1,450万円

3-9.【ステップ9】各人の実際の相続割合をもとに各人の納税額を計算する

最後に各人の実際の相続割合をもとに、各人の納税額を計算します。

被相続人Aさん家族の実際の相続割合が、配偶者50%・長男30%・長女20%であった場合、各人の負担する相続税額は以下のようになります。

配偶者:1,450万円×50%=725万円 ※配偶者の税額軽減を適用することにより納税額は0円になる
長男 :1,450万円×30%=435万円 
長女 :1,450万円×20%=290万円


4.相続税の税率に関する豆知識

補足として、相続税の税率に関する豆知識を紹介します。

4-1.【豆知識1】日本の相続税の税率は世界各国に比べて高い

日本の相続税の税率は世界各国に比べて高いと言えるでしょう。

財務省による調査によると、課税対象となる財産が10億円を超えると、アメリカ・イギリス・ドイツ・フランスといった主要国の中で税率が一番高くなります。

■出典:財務省資料 主要国における相続税負担率の比較(配偶者+子2人)

4-2.【豆知識2】贈与税の税率は相続税よりも高いが、一概にお得とは言えない

贈与税の税率は相続税より高く設定されています。

しかし、贈与には毎年110万円の非課税枠や、特例がありますので、一概に「贈与よりも相続で財産を渡す方がお得です。」とは言えません

相続対策として贈与を検討している方は、相続専門税理士にシュミレーションを依頼することをおすすめします。

■国税庁HP:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)


5.まとめ

相続対策などを行う中で、相続税の税率、税額を知りたいと思っていらっしゃる方を対象に、相続税の税率・税額の求め方を解説してまいりました。

最後に本記事の一番大切なポイントである。相続税は「税率を求めて、税額を求める」の2段階で計算することを現した図をもう一度紹介します。

本記事が相続対策をお考えのみなさんの一助となれば幸いです。

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