【データで解説】相続税の課税状況を調査して見えてきた9つの実態

辻・本郷 税理士法人は、年間4,821件(2024年4月時点の実績)の相続税申告を行っている税理士法人です。国内トップクラス約400名の相続税専門スタッフが、全国のお客様の相続税申告をお手伝いさせていただいております。

本記事は辻・本郷 税理士法人が「相続税の課税状況」について、財務省や国税庁の統計データをもとに調査・分析をして見えてきた9つの実態を解説しています。

実態1相続税の課税割合は約10人に1人
実態2相続税を課税された人のうち約6割が、遺産額1億円以下
実態3被相続人1人あたりの相続税額は1,855万円
実態4相続税の課税件数は2015年に約2倍に急増している
実態5相続税の課税件数が増加している主な要因は、死亡者数の増加・地価の上昇・株価の上昇
実態6相続税を納める人の割合が高い都道府県ベスト3は東京都・愛知県・神奈川県
実態7各都道府県の相続税課税割合トップ税務署
実態8相続財産の約7割は土地と現金
実態9相続税申告を税理士に依頼する人の割合は約86%

調査・分析を行ってみて改めて実感したことは、「相続税は意外と身近な税金である」ということです。
平成27年に基礎控除額が改正されてから、相続税は「一部の資産家の話」ではなくなりました。

本記事によって、みなさんの相続税についての理解が深まれば幸いです。


【実態1】相続税の課税割合は約10人に1人

相続税の課税割合(相続税を支払った人の割合)は約10人に1人です。

令和4年の死亡者数は156万9,050人、相続税を課税された人は15万858人でしたので、相続税の課税割合(相続税を課税された人の割合)は9.6%です。

多いと思うか、少ないと思うかは個人差があると思います。
しかし、基礎控除額が引き下げられる前の平成26年分の相続税の課税割合は4.4%だったので、一昔前に比べると、私たちに身近な税金となったと言えるでしょう。
(※平成26年分の相続税の課税割合は、平成26年分の相続税の申告状況についてをもとに記述。)

令和4年(2022)人口動態統計国税庁報道発表資料 令和4年分 相続税の申告実績の概要をもとに辻・本郷 税理士法人が作成

令和4年(2022)人口動態統計国税庁報道発表資料 令和4年分 相続税の申告実績の概要をもとに辻・本郷 税理士法人が作成


【実態2】相続税を課税された人のうち約6割が遺産額1億円以下

相続税を課税された人のうち約6割が、遺産額1億円以下です。

国税庁は課税価格階級ごとの被相続人の数を公表しています。
相続税が課税された被相続人の数が150,858人なのに対して、令和4年度の課税価格階級5,000万円以下の方の人数は15,260人、課税価格階級5,000万円超1億円以下の被相続人の数は76,469人です。

この2つの課税価格階級に属する被相続人の数を足し合わせると、91,729人になるので、相続税を課税された被相続人の約61%にあたります。

国税庁 統計資料 相続税 令和4年をもとに、辻・本郷 税理士法人が作成

国税庁 統計資料 相続税 令和4年をもとに、辻・本郷 税理士法人が作成


【実態3】被相続人1人あたりの相続税額は1,855万円

令和4年度の被相続人(亡くなった方)1人あたりの相続税額は1,855万円です。

相続税は10-55%の超過累進課税なので、一部の富裕層が納めた高額な税金により平均が引き上げられて、人変更一部の富裕層が納めた高額な税額に引っ張られて、被相続人1人あたりの相続税額が高くなっている可能性はありますが、相続税は納税額が高額になりやすい税金であることがわかります。

また、相続税は10ヶ月以内に現金一括納付が原則でありますので、納税資金の準備も計画的に進める必要があることがわかります。


【実態4】相続税の課税件数は2015年に約2倍に急増している

相続税の課税件数は2015年(平成27年)に約2倍に急増しています。

2015年(平成27年)は相続税の基礎控除額が「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」から、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に引き下げられました。
その結果、相続税が課税される人は約2倍に急増しました。

その後、現在までの7年間、相続税の課税件数はゆるやかに上昇を続けています。
この緩やかな上昇は死亡者数が年々増えていることが要因として考えられます。

国税庁 統計資料 相続税(平成25年~令和4年)をもとに、辻・本郷 税理士法人が作成
(国税庁が公開しているデータが2022年(令和4年)までのため、2022年までの数字を掲載)


【実態5】相続税の課税件数が増加している主な要因は、死亡者数の増加・地価の上昇・株価の上昇

相続税の課税件数が増加している主な要因は、「死亡者数の増加」「地価の上昇」「株価の上昇」の3つと考えることができます。

相続税の課税件数がゆるやかに上昇している平成28年以降の、死亡者数・路線価、日経平均株価とを調べて、まとめました。
新型コロナウィルスの影響で令和3年は路線価が下落しているなど、個別な要因はありますが、全体的には3つとも上昇傾向です。

国税庁 統計資料 相続税厚生労働省 人口動態統計月報年計(概数)の概況日経平均プロフィルをもとに辻・本郷 税理士法人が作成

■路線価の上昇率は公式のデータがなく、各年毎に新聞記事などをもとにデータを収集しているため、別の表とさせていただきます。

お亡くなりになる方がそもそも増えている中で、地価・株価が上昇していることで、相続財産の評価額が上がり、相続税の課税対象になる人が増えたとこのデータから考えることができます。

また、令和元年から令和4年までの相続税を課税された人のうち、遺産額1億円以下の方の人数を調べてみたところ、年々増加していました。
このデータからも地価・株価が上昇していることにより相続財産の評価額が上がり、相続税の課税対象になる人が増えたと言えるでしょう。

国税庁 統計年報(令和元年~令和4年)をもとに、辻・本郷 税理士法人が作成


【実態6】相続税を納める人の割合が高い都道府県ベスト3は東京都・愛知県・神奈川県

相続税を納める人の割合が高い都道府県のベスト3は「東京都」「愛知県」「神奈川県」です。

国税庁は各都道府県ごとの相続税が課税された人の人数を公表しています。
その数と各都道府県の死亡者数を使って出した相続税の課税割合の高い都道府県は、1位は東京都18.7%、2位は愛知県15.1%、3位は神奈川県14.3%でした。

また、4位から10位までの都道府県は以下の通りです。

東京に住んでいるのであれば、5人に1人の割合で、相続税が課税されることになります。

令和4年(2022)人口動態統計国税庁報道発表資料 令和4年分 相続税の申告実績の概要、各国税庁の統計をもとに辻・本郷 税理士法人が作成

令和4年(2022)人口動態統計国税庁報道発表資料 令和4年分 相続税の申告実績の概要、各国税庁の統計をもとに辻・本郷 税理士法人が作成


【実態7】各都道府県の相続税課税割合トップ税務署

各都道府県の相続税課税割合トップ税務署を一覧にしました。

国税庁は各税務署ごとの相続税の課税件数を公表しています。
この相続税の課税件数を、その税務署管内の被相続人数で割ると、各税務署管内の課税割合を出すことができます。

全国47都道府県にある税務署ごとの課税割合を出し、その都道府県内で一番課税割合の高い税務署管内をまとめたのが以下の表です。

関東地方を例に見てみると、宇都宮市・前橋市などの県庁所在地、市川市や浦安市などのベットタウンが課税割合が高い傾向があります。

令和4年(2022)人口動態統計国税庁報道発表資料 令和4年分 相続税の申告実績の概要、各国税庁の統計をもとに辻・本郷 税理士法人が作成


【実態8】相続財産の約7割は土地と現金

相続財産の約7割は土地と現金です。

国税庁が公表している令和4年分の各相続財産の内訳によると、相続財産の合計は218,663億円なのに対して、土地は70,688億円、現金は76,304億円です。
土地と現金だけで相続財産の約7割を占めることになります。

近年、相続時精算課税制度が改正されるなどして、若い世代への贈与が盛んに取りざたされていますが、令和4年分の相続財産では未だ現金の占める割合が大きいのが現状のようです。

国税庁報道発表資料 令和4年分 相続税の申告実績の概要をもとに辻・本郷 税理士法人が作成

国税庁報道発表資料 令和4年分 相続税の申告実績の概要をもとに辻・本郷 税理士法人が作成


【実態9】相続税申告を税理士に依頼する人の割合は約86%

相続税申告を税理士に依頼する人の割合は約86%です。

財務省は国税庁実績評価書の中で、所得税・相続税・法人税の税理士関与割合を公表しており、
令和4年度の相続税の税理士関与割合は85.9%です。

確定申告でおなじみの所得税は20.4%ですので、相続税の税理士関与割合は他の税に比べて高いことが分かります。

令和4年度 国税庁実績評価書をもとに辻・本郷 税理士法人が作成


まとめ

相続税の課税状況を徹底調査して見えてきた9つの実態を、データをもとに解説してまいりました。

最後に9つの実態をもう一度、ご紹介させていただきます。

実態1相続税の課税割合は約10人に1人
実態2相続税を課税された人のうち約6割が、遺産額1億円以下
実態3被相続人1人あたりの相続税額は1,855万円
実態4相続税の課税件数は2015年に約2倍に急増している
実態5相続税の課税件数が増加している主な要因は、死亡者数の増加・地価の上昇・株価の上昇
実態6相続税を納める人の割合が高い都道府県ベスト3は「東京」「愛知」「神奈川」
実態7各都道府県の相続税課税割合トップ税務署
実態8相続財産の約7割は土地と現金
実態9相続税申告を税理士に依頼する人の割合は約86%

本記事によって、みなさんの相続税の課税状況についての理解が深まれば幸いです。

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