辻・本郷 税理士法人は、年間4,821件(2022年10月から2023年9月の年間実績)の相続税申告を行っている税理士法人です。国内トップクラス約400名の相続税専門スタッフが、全国のお客様の相続税申告書の作成のお手伝い申告をお手伝いさせていただいております。
本記事は辻・本郷 税理士法人が「相続税の課税状況」について、財務省や国税庁の統計データをもとに検証・分析をして見えてきた9つの実態を解説しています。
本記事によって、みなさんの相続税についての理解が深まれば幸いです。
目次
【実態1】相続税の課税割合は約10人に1人
相続税の課税割合は約10人に1人です。
令和4年分の死亡者数は156万9,050人、相続税の課税があった被相続人は15万858人でしたので、相続税の課税割合は9.6%です。
多いと思うか、少ないと思うかは個人差があると思います。
しかし、基礎控除額が引き下げられる前の平成26年分の相続税の課税割合は4.4%でした。
(※平成26年分の相続税の課税割合は、平成26年分の相続税の申告状況についてをもとに記述)
■令和4年(2022)人口動態統計、国税庁統計情報をもとに辻・本郷 税理士法人が作成
■令和4年(2022)人口動態統計、国税庁統計情報をもとに辻・本郷 税理士法人が作成
【実態2】相続税の課税があった被相続人のうち約6割が課税価格1億円以下
相続税の課税があった被相続人のうち約6割が、課税価格1億円以下です。
国税庁は課税価格階級ごとに相続税の課税があった被相続人の数を公表しています。
相続税の課税があった被相続人の数が150,858人なのに対して、令和4年度の課税価格階級5,000万円以下の方の人数は15,260人、課税価格階級5,000万円超1億円以下の被相続人の数は76,469人です。
この2つの課税価格階級に属する相続税の課税があった被相続人の数を合計すると、91,729人となるので、全体の人数の約61%が課税価格1億円以下だったことが分かります。
■国税庁統計情報をもとに、辻・本郷 税理士法人が作成
■国税庁統計情報をもとに、辻・本郷 税理士法人が作成
【実態3】被相続人1人あたりの相続税額の平均は1,855万円
令和4年度の被相続人1人あたりの相続税額の平均は1,855万円です。
(国税庁統計情報より)
相続税は10-55%の超過累進課税のため、一部の富裕層が納めた高額な税金により平均が引き上げられて、被相続人1人あたりの相続税額が高くなっている傾向はありますが、相続税は納税額が高額になりやすい税金であることがわかります。
また、相続税は10ヶ月以内に現金一括納付が原則ですので、納税資金の準備も計画的に進める必要があるということがわかります。
【実態4】相続税の課税件数は2015年に約2倍に急増している
相続税の課税件数は2015年(平成27年)に約2倍に急増しています。
2015年(平成27年)は相続税の基礎控除額が「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」から、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に引き下げられました。
その結果、相続税が課税される人は約2倍に急増しことがグラフからわかります。
また、基礎控除額が引き下げられた平成27年から国税庁が統計を公表している令和4年までの7年間、相続税の課税件数はゆるやかに上昇を続けていることもグラフから読み取ることができます。
■国税庁統計情報をもとに、辻・本郷 税理士法人が作成
(国税庁が公開しているデータが2022年度(令和4年度)までのため、2022年までの数字を掲載)
【実態5】相続税の課税件数が増加している主な要因は、死亡者数の増加・地価の上昇・株価の上昇
相続税の課税件数が増加している主な要因は、「死亡者数の増加」「地価の上昇」「株価の上昇」の3つと考えることができます。
相続税の課税件数が増加している一番の要因は、死亡者数が増加していることです。
しかし、相続税の課税件数の増加率と、死亡者数の増加率を比較したところ、相続税の課税件数の増加率の方が大きくなっていました。
■国税庁統計情報、人口動態総覧の年次推移をもとに辻・本郷 税理士法人が作成
そこで、路線価(地価の一種)、日経平均株価の推移を調べたところ、新型コロナウィルスの影響で令和3年は路線価が下落しているなど個別な要因はありますが、全体的には2つとも上昇傾向でした。
■日経平均プロフィルをもとに辻・本郷 税理士法人が作成
■路線価の上昇率は公式のデータがないため、各年毎に新聞記事などをもと作成
死亡者数が増加する一方、地価ならびに株価がが上がったことが影響して、相続財産の評価額も上昇したことで、相続税の課税対象になる人が増えたとこのデータから考えることができます。
また、令和元年から令和4年までに相続税の課税があった被相続人のうち、遺産額1億円以下の方の人数を調べてみたところ、年々増加していました。
このデータからも地価・株価が上昇していることにより相続財産の評価額が上がり、相続税の課税対象となる人が増えたと言えるでしょう。
■国税庁統計情報をもとに、辻・本郷 税理士法人が作成
【実態6】相続税の課税割合が高い都道府県ベスト3は東京都・愛知県・神奈川県
相続税の課税割合が高い都道府県ベスト3は「東京都」「愛知県」「神奈川県」です。
国税庁は各都道府県ごとに相続税の課税人数を公表しています。
その数と各都道府県の死亡者数を比較して算出した相続税の課税割合の高い都道府県を見ると、1位は東京都18.7%、2位は愛知県15.1%、3位は神奈川県14.3%となりました。
また、4位から10位までの都道府県は以下の通りです。
■令和4年(2022)人口動態統計、国税庁統計情報をもとに辻・本郷 税理士法人が作成
■令和4年(2022)人口動態統計、国税庁統計情報をもとに辻・本郷 税理士法人が作成
【実態7】各都道府県の相続税課税割合トップ税務署
各都道府県の相続税課税割合トップ税務署を一覧にしました。
全国相続税課税割合トップ税務署の中でも、最も課税割合が高かったのは、東京都千代田区を管轄する麹町・神田税務署です。課税割合は43.8%なので、約2人に1人が相続税の課税対象となっていることがわかります。
また、東京都千代田区に続くのは、神奈川県の鎌倉税務署(鎌倉市、逗子市、三浦郡)22.1%、愛知県の名古屋中税務署(名古屋市中区)21.7%となりました。
■令和4年(2022)人口動態統計、国税庁統計情報をもとに辻・本郷 税理士法人が作成
【実態8】相続財産の約7割は土地と現金
相続財産の約7割は土地と現金です。
国税庁が公表している令和4年分の各相続財産の内訳によると、相続財産の合計が218,663億円に対して、土地は70,688億円、現金は76,304億円です。
土地と現金だけで相続財産の約7割を占めることになります。
■国税庁統計情報をもとに辻・本郷 税理士法人が作成
■国税庁統計情報をもとに辻・本郷 税理士法人が作成
【実態9】相続税申告を税理士に依頼する人の割合は約86%
相続税申告を税理士に依頼する人の割合は約86%です。
財務省は国税庁実績評価書の中で、法人税、所得税及び相続税の税理士関与割合を公表しており、
令和4年度の相続税の税理士関与割合は85.9%です。
■令和4年度 国税庁実績評価書をもとに辻・本郷 税理士法人が作成
まとめ
相続税の課税状況を検証して見えてきた9つの実態を、データをもとに解説してまいりました。
最後に9つの実態をもう一度、ご紹介させていただきます。
本記事によって、みなさんの相続税の課税状況についての理解が深まれば幸いです。