「遺産にかかる相続税とは、どのような税金なのか?」
「相続税は誰に、いくらかかるのだろうか?」
本記事をご覧になられている方は、このようなお悩みを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
相続は人生でそう何度も経験することではないので、相続税はみなさんにとって「未知」の税金でしょう。一方で、テレビや雑誌などで、「相続税は高額!」といった話題がたびたび特集されているので、不安に思われている方が多い税金でもあります。
本記事は年間約5,000件の相続税申告に携わっている辻・本郷 税理士法人が、10の問を立てて、「相続税とは何か?」を解説しています。
相続税についての正しい知識を身につけることにお役立てください。
正しい知識を今のうちに身につけておくことが、将来もう少し相続が現実味を帯びてきたときに、慌てずに行動できる「心のお守り」となるでしょう。
Q.1 どのような税金か? | 亡くなった方から財産を受け取った場合に、その受け取った財産にかかる税金 |
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Q.2 全員が納める必要があるのか? | 相続した財産の額から、借金や債務・葬式費用などを引いた額が、3,600万円を超えた場合のみ |
Q.3 税率は何%か? | 10-55%の超過累進課税 |
Q.4 いくらかかるか知る方法は? | 相続税計算シミュレーションを活用 |
Q.5 納める期限はいつまでか? | 亡くなった日を知った日の翌日から10ヶ月以内 |
Q.6 計算方法は? | 「税率を求めて、税額を求める」の2段階で計算 計算は税理士に依頼することがおすすめ |
Q.7 相続税評価額の計算方法は? | 財産ごとに財産評価基本通達というマニュアルに基づいて計算 |
Q.8 相談はどこにすればいいのか? | 税務のプロである税理士がおすすめ |
Q.9 節税できる制度はあるか? | 小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減など様々な制度がある |
Q.10 時効はあるのか? | 法定申告期限から5年 |
目次
Q.1 相続税とは、どのような税金か?
A.相続税とは、亡くなられた親などから、お金や土地などの財産を受け取った場合に、その受け取った財産にかかる税金です。
相続した財産の一部を税金として国に納め、広く社会のために使うことになるので、相続税には資産を再分配する機能があります。また、相続した財産が大きいほど相続税額も大きくなるので、格差の固定化を防ぐ機能もあります。
詳細は相続とはいったいなに?みんなに知ってほしい20のことの記事に詳しく記載しています。
Q.2 相続税は、全員が納める必要があるのか?
A.相続税は財産を相続した人全員が納める税金ではありません。
相続した財産の額から、借金や債務・葬式費用などを引いた額(正味の遺産総額)が、一定の額(基礎控除額)を上回るときにかかります。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
基礎控除額の最低額は3,600万円なので、相続した財産の額から、借金や債務・葬式費用などを引いた額(正味の遺産総額)が3,600万円を超えた場合に、相続税がかかる可能性があります。
詳細は相続税はいくらからかかる?判断する方法を相続専門税理士が解説をご覧ください。
■基礎控除について詳しく知りたい方はこちら
相続税の基礎控除とは|控除額や計算方法について解説
Q.3 相続税の税率は何%か?
A.相続税の税率は10-55%の超過累進課税です。
超過累進課税とは、課税額が大きくなるほど適用される税率が上がる制度のことです。
相続税は相続した財産が多ければ多いほど、税率も高くなります。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
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1,000万円以下 | 10% | ー |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
税率についての詳細は、相続税の税率・税額の求め方|ある家族を例に9つのステップで解説をご覧ください。
Q.4 相続税がいくらかかるのか、簡単に知る方法は?
A.相続税がいくらかかるのかの目安は、相続税計算シミュレーションで知ることができます。
相続税計算シミュレーションの画面に家族構成と相続財産の金額を入力することで、簡単に目安額を知ることができます。
※このシミュレーション結果は大まかな相続税のご理解をサポートするものです。万一、この目的を超えるご利用をされたなどの場合には、お客さまに生じた不利益や損害などに当社は責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。
【2024最新版】相続税計算シミュレーション15選の記事に、主な相続税計算シミュレーションを一覧で紹介しております。
Q.5 相続税を納める期限はいつまでか?
A.相続税を納める期限(申告期限)は、亡くなった日を知った日の翌日から10ヶ月以内です。
令和5年2月1日に亡くなった場合、相続税を納める期限は令和5年12月1日となります。
また、亡くなったことを知った日とは、一般的には死亡日ですが、疎遠で死亡を知らなかった場合や、失踪により死亡が確定された場合など特殊なケースでは、必ずしも死亡日とはなりません。
相続税の申告期限についての詳細は、税理士が教える!相続税申告の期限とは?初めての人向けに解説しましたで詳しく解説しています。
Q.6 相続税の計算方法は?
A.相続税は「税率を求めて、税額を求める」という2段階で計算していきます。
具体的には以下の図にある通り9つのステップを踏んで求めていきます。
このステップの多さを見ていただければお分かりになると思いますが、相続税の計算はとても複雑です。
亡くなった方の遺産総額を早見表にあてはめて税率を出し、早見表通りに計算すると税額が出るような簡単なものではありません。
相続税を納める必要があり、相続税の計算をする場合は、税理士に依頼することがおすすめです。
なぜ相続税申告の税理士への依頼はコスパが高い選択と言えるのか?の記事に、税理士へ依頼するメリットを詳しく記載しておりますから、適宜ご覧ください。
■計算方法を詳細にお知りになりたい方は、相続税の税率・税額の求め方|ある家族を例に9つのステップで解説をご覧ください。
Q.7 主な財産の相続税評価額の計算方法は?
A.主な財産の相続税評価額の計算方法は、以下の表の通りです。
それぞれの財産名をクリックいただけると、各財産の相続税評価額の計算方法の詳細が記載されたページをご覧いただけます。
宅地 | 路線価方式:路線価×補正率・加算率×地積 倍率方式:固定資産税評価額×倍率 |
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農地 | 固定資産税評価額×倍率など |
借地権 | 路線価方式または倍率方式の評価額✕借地権割合 |
貸宅地 | 路線価方式または倍率方式の評価額✕(1-借地権割合) |
自用家屋 | 固定資産税評価額✕1.0 |
貸家 | 自用家屋の価額✕(1-30%✕賃貸割合) |
預貯金 | 元金 + 既経過利息の手取額 |
上場株式 | 次の4項目のうち、最も低い金額 ・相続開始日の最終価格 ・相続開始月の最終価格の月平均額 ・相続開始月の前月の最終価格の月平均額 ・相続開始月の前々月の最終価格の月平均額 |
投資信託 | 1口当たりの基準価額×口数-源泉徴収税額-信託財産留保額および解約手数料 など |
公社債 | 券面額100円当たりの評価額 + 既経過利息の手取額 |
死亡保険金 | 受取金額-生命保険金非課税金額(500万円✕法定相続人の数) ※相続人が死亡保険金を受け取った場合 |
死亡退職金 | 受取金額-退職手当金非課税金額(500万円✕法定相続人の数) ※相続人が死亡退職金を受け取った場合 |
生命保険契約に関する権利 | 相続開始時の解約返戻金相当額 |
自家用車 | 売買実例価格(中古市場の相場) |
骨董品・美術品など | 専門家による鑑定価額等 |
ゴルフ会員権 | 取引相場 × 0.7(取引相場があり預託金がない場合) |
ただし、相続税評価額の計算は税理士に依頼することがおすすめです。
相続税評価額の計算方法は、財産評価基本通達というマニュアルに掲載されておりますが、一般の方が内容を読み解き、ご自身のケースに当てはめるには、かなりハードルが高い内容となっています。
また、全体の約86%の人が、相続税評価額の計算を含む相続税申告を税理士に依頼しています。
■相続税評価額について詳しくお知りになりたい方はこちら
相続税評価額とは?他の価額との違い、主な相続財産の計算方法を解説
Q.8 相続税の相談はどこにすればいいのか?
A.相続税に関する相談は、税務のプロである税理士にすることをおすすめします。
税理士は名前の通り税金の専門家です。
相続税という「税金」に関するお悩みは、税金の専門家である税理士に相談することが、解決への近道です。
また、所轄の税務署、国税庁電話相談センター、税理士会の納税者支援センターなどでは、無料で相続税についての相談にのってくれますが、相談できることは「基本的なこと」に限られています。
ご自身についての個別具体的な相談をしたい場合は、税理士に相談することをおすすめします。
相談先についての詳細は、相続税の相談はどこにするのが良いのか?の記事に詳しく記載してあります。適宜、ご確認ください。
Q.9 相続税を節税できる制度にはどんなものがある?
A.相続税には特例・税額控除という節税に活用ができる制度があります。
中でも小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減は、節税効果が高く、利用できる人が比較的多い制度です。
小規模宅地等の特例の詳細は、家を相続したら相続税額が安くなる?~「小規模宅地等の特例」基礎編に詳しく記載しております。また、配偶者の税額軽減の詳細は、相続税の配偶者控除とは?活用するポイントを税理士が解説をご覧ください。
小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減以外の主な特例・税額控除を一覧にまとめました。
それぞれの特例・税額控除名をクリックいただければ、詳細が書かれた記事をご覧いただけるようになっています。
農地等の納税猶予の特例 | 農業を営んでいた人から農地等を相続し、跡を継いで農業を営む場合、取得した農地等の価額のうち「農業投資価格」による価額を超える部分における相続税額の納税が猶予される制度 |
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贈与税額控除 | 贈与時に支払っていた贈与税を相続税額から控除すること |
未成年者控除 | 相続人が未成年者(18歳未満)のときに、相続税の額から一定の金額を差し引くこと |
障害者控除 | 相続人が85歳未満の障害者のときに、相続税の額から一定の金額を差し引くこと |
相次相続控除 | 今回の相続開始前10年以内に、被相続人が相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得し、相続税が課されていた場合、財産を取得した人の相続税額から、一定の金額を控除する |
Q.10 相続税に時効はあるのか
A.相続税には時効があります。
相続税の時効は、法定申告期限から5年です。
法定申告期限とは、亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内なので、相続税の時効は原則、亡くなったことを知った日から5年10ヶ月となります。
時効が成立すれば、申告・納税義務はなくなりますが、現実問題、税務署にバレないまま、時効を迎えるのは難しいでしょう。
無申告・申告漏れに気が付いたら、速やかに期限後申告・修正申告を行うことをおすすめします。
相続税の時効についての詳細は、相続税申告の時効は原則5年|申告漏れに気が付いたら、申告すべき?に記載しておりますので、適宜ご覧ください。
まとめ
「遺産にかかる相続税とは、どのような税金なのか?」「相続税は誰に、いくらかかるのだろうか?」とお悩みの方を対象に、年間約5,000件の相続税申告に携わっている辻・本郷 税理士法人が、10の問を立てて、「相続税とは何か?」を解説してまいりました。
最後に10の問いとその答えを要約した一覧表を、もう一度ご紹介させていただきます。
Q.1 どのような税金か? | 亡くなった方から財産を受け取った場合に、その受け取った財産にかかる税金 |
---|---|
Q.2 全員が納める必要があるのか? | 相続した財産の額から、借金や債務・葬式費用などを引いた額が、3,600万円を超えた場合のみ |
Q.3 税率は何%か? | 10-55%の超過累進課税 |
Q.4 いくらかかるか知る方法は? | 相続税計算シミュレーションを活用 |
Q.5 納める期限はいつまでか? | 亡くなった日を知った日の翌日から10ヶ月以内 |
Q.6 計算方法は? | 「税率を求めて、税額を求める」の2段階で計算 計算は税理士に依頼することがおすすめ |
Q.7 相続税評価額の計算方法は? | 財産ごとに財産評価基本通達というマニュアルに基づいて計算 |
Q.8 相談はどこにすればいいのか? | 税務のプロである税理士がおすすめ |
Q.9 節税できる制度はあるか? | 小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減など様々な制度がある |
Q.10 時効はあるのか? | 法定申告期限から5年 |
本記事を読むことでみなさんが相続税の正しい知識を身につけることにお役に立てれば幸いです。